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要約 『NATURE FIX 自然が最高の脳をつくる――最新科学でわかった創造性と幸福感の高め方』 著者 フローレンス・ウィリアムズ

●ベストフレーズ

本書は、詩人や哲学者には太古から自明であったこと、つまり「どこにいるか」が幸福度を左右するという事実の背景にある科学を探っていく。〔…〕ロマン派の芸術家たちがとうの昔に見抜いていた真実を、科学はいまようやく立証しようとしているのだ。 14ページより

●はじめに

本日の一冊は、ジャーナリスト、ジョージ・ワシントン大学客員研究員のフローレンス・ウィリアムズ氏の「NATURE FIX 自然が最高の脳をつくる――最新科学でわかった創造性と幸福感の高め方」です。

本書は、一言でいうと、自然が人間にどれだけいい影響を与えているか考察した本です。
世界の様々な場所で行われている研究や取り組みを紹介しながら、著者自身も実験やセラピーに参加しその効果(あるいは効果のなさ)を体感しています。自然が健康に与える影響を測るのはとても難しく、本書も厳密な意味で答えにたどり着いているわけではありません。しかし、自然の中で多くの時間を過ごすことで生じるメリットや効果のありそうなことを積み重ねることで、非常に説得的な議論を展開しています。良訳も手伝って文体も親しみやすく、大変読みやすいです。読了したら外に出かけたくなる、そんな一冊です。

●本文要約

1.「自然の中にいるとリフレッシュする」は本当か?

テレビや雑誌などで「自然の中にいるとリフレッシュする」というフレーズを見聞きしたことはありませんか?これは個々人の感性によるものなのでしょうか。それとも科学的な根拠があるのでしょうか。

このことは、長年暮らしてきた田舎を離れ、都会の喧騒やそれが原因と思われる体調不良に悩まされている著者にとっても重要な問いでした。文献渉猟や研究者へのインタビュー、実験やセラピーへの参加などを経て著者が導き出した答えは、自然の中で多くの時間を過ごした方が、心身に好影響をもたらすというものです。

では、自然の中で過ごすことにはどのような利点があるのでしょうか。著者は、自然が健康にもたらす影響や認知機能に及ぼす効果、五感を通じて自然と触れ合うことがどのような利点をもたらすかに着目した研究や、フィンランドやスウェーデン、韓国やスコットランドの行政府が行う取り組みを取り上げつつ、自身も様々な実験に参加することで、自然をめぐる論争やその実際的な効果を検討していきます。その上で、ストレスの軽減や心身のダメージ回復に確実に効果がみられる基準や方法を示しています。自然が健康に及ぼす影響の直接的な因果関係を明らかにするのは非常に困難な作業なのですが、様々な研究や観点を検討することで、総合的な判断材料を提供することに成功しています。

2.自然は科学的に体に良い理由


一般論として「自然の中で過ごすことは身体に良い」という経験則があります。また、歴史を紐解けば少なくない数の哲学者や芸術家が自然の効用を語っています。しかし、科学的観点からこのような問題を取り扱った研究はあったでしょうか?このような研究は行われているものの、注目を集めるのはもっぱら経済的状況や人間関係が健康にもたらす影響で、自然との関係にはさほど注意が払われていなかったようです。

もちろん、自然が健康にもたらす影響の直接的な因果関係を明らかにすることは難しいのですが、しかし近年では神経科学や脳科学の発展を背景に成果が蓄積されてきました。自然がもたらす様々な効果やそれを証明する研究に着目してみることで、自然が身体によい影響を及ぼすことはわってきました。
例えば、森林の中を歩くことで、ストレスが軽減されたり、免疫力が上がることを示す研究があります。また、自然の中で過ごすことで、創造性や問題解決能力など、認知能力が上がることを示唆する研究もあります。このような背景も相まって、世界には国民が自然の中で過ごすことを後押しする政府さえあります。そこでは、住民が自由に歩きまわれる森林や公園が整備され、健康増進はもちろん、精神疾患の予防や軽減を目的としたプログラムが提供されているのです。また、民間では戦争でのトラウマや学習障害を抱える人びとを対象に、自然の中でのセラピーや教育プログラムを提供する団体もあります。その成果には科学的根拠があり、しかもそれは心身に傷を負った人だけではなく、すべての人に効果があることが分かっています。

3.自然は認知能力にどのような影響を及ぼすか

実際、自然のなかを歩いていると、町中を歩いているときと比べてネガティブにならずにすむことは、いくつもの実験で証明されている。
日常生活で次々と襲ってくるストレスをすべて回避できるわけではないけれど、ストレスを一時的にでも解消する努力はできる。ちょっと自然に触れる、あるいは、長期間自然に身をゆだねれば、脳は回復するのだ。 71ページより

私たちは、メディアや芸術、個人的な経験を通して、自然が私たちにもたらす影響を知っています。しかし、それはどのような影響なのでしょうか。日本の森林浴研究では、

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4.山林セラピーと木々の匂い
5.騒音に慣れることはできない
6.自然はなぜ目にやさしいのか
7.人は自然の中でどのくらいの時間を過ごすべきか
8.政府による公衆衛生の取り組み
9.自然と運動の相乗効果
10.自然に抱く「畏怖」の念がもたらす効果
11.激流下りで「荒療治」
12.自然は子どもの発達にも重要

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