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要約『子育て罰 「親子に冷たい日本」を変えるには』著者 末冨 芳、桜井 啓太

●ベストフレーズ

家族手当は雀の涙ほどで、教育にお金がエグいほどかかる。とどめに子育て世帯をほとんど優遇しない税制度−。このような社会においては、ひとり親は間違いなく危険なリスクであり、子育てすることはまるで罰を受けるようなものになるでしょう。 68ページより

●はじめに

子育て罰の構造

今日の一冊は教育行政学者の末冨芳さんと、社会学者の桜井啓太さんの共著『子育て罰 「親子に冷たい日本」を変えるには』です。

著者の一人である末冨氏は教育行政学者で、自らも子育て経験のある女性であり、政府の有識者会議のメンバーとして、政策と子育ての現場の両方の視点から子育ての現状について語っています。

もう一人の桜井氏は社会学者で、世界各国の貧困対策や教育政策をデータで比較し、日本の置かれている状況をわかりやすく描写してくれています。

本書を読めば、日本では子育て世代は、働けば働くほど損をし、子どもを産んで育てれば、教育にお金がかかる社会であることと、なぜ日本がそのような社会になってしまったのかがわかります。そして、どうしたら日本が子育て世帯にやさしい国になれるのかが分かります。

●本文要約

1.「子育て罰」とは

まず「子育て罰」とは、日本が「子どもと子どもを持つ世帯に冷たく厳しい国」である現状をとらえるための概念です。 22ページより

「子育て罰」とは、政治や社会が子育てをする世帯に対して、まるで罰を与えるかのように冷たく厳しい仕打ちを与えている社会制度、社会文化のことです。

たとえば、以下のようなものが「子育て罰」に当てはまります。
・子育て世帯には不十分な政府の子育て支援政策
・雇用、賃金、昇進等における女性差別
・子育てに参加したくても長時間労働に縛られ参加できない父親の労働環境
・大学卒業までの子どもの教育にかかる費用は親が負担すべきだという「親負担ルール」
・一人親世帯であっても強制される残業
・親の収入によって受け取ることができるかできないかが決まる奨学金制度

こうした制度、文化の結果、日本で子育てをしている30~40代の世代は同時に働き盛りの世代でもありますが、まず彼ら・彼女らがどれだけ働いても、収入のほとんどは社会保障費に吸い取られます。そして、残りの手取りも子どもがいれば教育費に吸いとられてしまいます。それを支えるはずの日本政府の支援政策は、この30年で高齢者向けの支援が手厚く、一方で子育て支援は劣化し、子育て世帯に極めて厳しいものになっています。また、残業の多い企業文化や、いまだに根強い就寝雇用制度は、流動性を低くし、子育て世帯の状況を悪化させています。

2.子どもへの価値感が下がった「価値感不良」社会日本

近代教育の導入以降、日本は子どもに優しくない社会になりました。特に戦後の義務教育の延長と受験の激化は子どもを地域コミュニティから遠ざけ、学校や塾に囲い込みました。その結果、子どもを理解できる大人が減り、子どもの価値を感じにくくなりました。
また、近年の高齢者優遇の政策で、日本社会は子どもに対する古い価値観と新しい価値感が分断されました。
結果、現代は子どもに対する古い価値観と新しい価値感が世代間や生活環境でぶつかり合う「子ども価値感不良社会」になっています。

本書はこの「価値観不良」をなくすことで日本の「子育て罰」をなくすことができるといいます。「価値観不良」をなくすにはやはり政策が重要です。特に以下3つの政治的要因は子育て罰を作っている主要因です。

・政権が変わるごとに、ころころ変わる子どもへの支援政策
・そもそも少ない子どもと家族への政府投資
・親の収入で子どもを差別・分断する制度

結論から言えば、様々な子育て支援を行い、「子育て罰」をなくすためには年間1.5兆円規模の財源を積み増す必要があります。逆を言えば、1.5兆円を確保できれば、子育てが無理なくできて、少子化を解決する社会になれます。

3.こども庁を支援する投票が重要

政策という意味では、あらゆる省庁にまたがる政策の立案と財源の確保が可能なこども庁には期待できます。私たちにできることは、声をあげて投票をすることです。特に子育て世代の普通のパパやママが政治に参加することは、日本の「子育て罰」をなくすことができる直接的な選択肢です。

本書では子育て支援を「貧困世帯」だけに注目していません。
続きは以下リンクからお読みいただけます。(残り6700文字)

4.子育て世帯を苦しめる自民党の「現物給付」政策
5.不十分な子育て支援と子どもを差別分断する政策
6.「子育て罰」という表現に込められた思い
7.社会保障制度における日本の特徴
8.生活保護バッシングで覆い隠される「子育て罰」
9.なぜ日本は子どもに優しくない社会になったのか
10.政治と企業がもたらす絶望的な日本の状況
11.価値観不良が日本社会をダメにする
12.子育て罰をなくすために必要なのは財源の確保と専門省庁の設立

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