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口の中が青く光る

2022年9月14日(水)晴れ

下手くそな絵を書き散らす、絵日記もどきを始めてみようと思う。あまりに下手くそで恥ずかしいが、いつか上手になった時に振り返って笑えるように、心を無にして載せる。誰にだって、はじめの一歩はあるんだ。でも今は見る度に悲しい。

国際芸術祭「あいち2022」をまわり始めて3日目。だだっ広い展示エリアとして名を馳せる一宮に乗り込んだ。
朝10時、開館と同時にオリナス一宮へ。記事やSNSで何度も見た奈良美智さんの「Fountain of Life」は、静かに涙を流していた。なで回したくなる質感。

お昼を「麦の道すぐれ」で食べたりしながら、なんだかんだ6時間ほどを要した一宮エリア。印象深かったのは、ツァオフェイの映像作品。あまり時間もないので、少し眺めて出ようかと思ったのに、口に青いライトを含んだ少女たちが合唱する場面に目を奪われ、そのまま最後まで観てしまった。おそらく先生だろうか、指揮をする男が握りしめるのは指揮棒ではなくペンライト。少女たちの歯が、舌が、青く照らされるのを眺めていると、自分を取り巻く普通の世界がつまらなく思えてくる。

豊島記念資料館には、子羊の皮を剥ぐシーンを映した動画があった。子羊の前脚が、我が家の愛犬アポの前脚にオーバーラップして、苦しくなりながらも最後まで観た。私たちは、たくさんの命の結果をわけてもらいながら生きている。耳慣れた言葉ではあるが、実感できる機会は少ない。「サステナビリティ」とかって口にしてみたいのなら、机に向かっているだけでは駄目だ。

あいち2022を経て。何かを経験したら、何かを考えたら、何らかの形で吐き出さずにはいられなかった自分の衝動を思い出した。完全に取り戻すまでは、あと少し。

夜、京都に来た。京都の街は、古さもあるのに新品みたいで、ピカピカと清潔だ。澱んだにおいのする渋谷なんかより、はるかにいい。東京で霧散して枯れ果てたパワーを補給して明日帰る。

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