読書日記1/22 イアン・マキューアン「未成年」
イアン・マキューアン「未成年」
とても好きな作品がまた増えました。
主人公のフィオーナは、もうすぐ60歳になるロンドンの高等法院の裁判官。夫から信じられない相談を受け、整理できないまま仕事に向かう。次々と持ち込まれる裁判案件。その中のひとつ、宗教上の理由を根拠に輸血を拒む未成年の少年に対し、病院側から輸血の許可が求められる。彼女が下す判断は。そして少年との関係は。夫との関係は。
いろいろな魅力がある作品です。
宗教と倫理と法という普遍的な問題の物語でもある。遠藤周作の「沈黙」を読みながら思い出していました。
音楽が好きな人にとっても、クラッシックやジャズ、ピアノなどが効果的に使われているのでおすすめです。文章がとても美しいところも音楽的。
私は個人的に、裁判所のシーン、各事案への判決が描かれているところが面白かったですね。職業病かな。
でも一番は、主人公にどっぷり感情移入できたこと。
フィオーナの頭の中、心の動きが、もうまさに自分のそれと同じようで、ページをひらくとすぐに物語の中に入り込めた、なかなかない読書体験でした。このままいくと30年後、いやもしかしたら数年後に、まったく同じような心理状態になるかもしれない。それくらい私たちはなにかを諦めて何かを選択している。働く女性はある程度同じように感じるのではないかしら。
ああ面白かった。マキューアンの作品を久しぶりに読んだけれど、もっともっと読みたいなあ。
今年も年末にベスト作品を思い出すときには思い出したい作品。
あー本読みたい。
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