アラサーの会社員の「年末年始おすすめ作品 By CORK Advent Calendar 2016」その2

「あなたにおすすめ」ということであれば、
例えば映画の「ラブ・アクチュアリー」はこの季節にぴったり。
ある冬のロンドンで繰り広げられる、クリスマスの奇跡。家族や友人、恋人との愛や温かさが大好きな映画です。もう12月に入ってから観たし、年間ではもう数回観ています。

「私が読みたい」ということであれば
もう宿題になって長い「銀河英雄伝説」を最後まで読むつもりなんです。
半分くらいまでは読んで面白いのですが
これ頭の中で情報を処理しながら読むのめっちゃ時間かかりませんか。
文章の綺麗さも味わいたいと思うと余計に。。。
私が文章を読むときにビジュアライズしながら読む癖があるからかもしれないのですが、登場人物多いし、誰がどっち側でどんな役職で、というのを把握しながら妄想しながら読むのには集中力と時間が必要で、冬休みに、と思っています。(宿題提出先へ)


と、これではなんか短いし
この間
はつい、年末年始におすすめ、という目線で選んだので(もちろんおすすめだしめっちゃ好きなんだけど)

ただ好きなだけでおすすめかどうかは、、、、という作品について今日は書こう。

今年衝撃を受けた本は
「紙の民」
サルバドール・プラセンシア (著) 藤井光(訳)

ライターのむーさま(三田紀房さんのサイトの記事を手伝ってくださっている室谷明津子さんのことを私はこう呼んでいる)が藤井さんのことを教えてくださったので、藤井さんが訳している本を集中して読んだ時期がありそのときに出会った1冊。

なぜおすすめしにくいかというと、入手しにくいという点が心苦しいからです。。。

メキシコからアメリカに移ってきた父娘のお話なのですが、お父さんが急に土星と戦争を始めます。その土星の正体が、なんと! 
私はメタ小説というものがどういうものなのか、これで初めてわかりました。

お話自体も面白いのですが、私が本当にすごいと思ったのが
本というメディアを最大限活かした作品であるということ。

日本語だと、3段にわかれているのですが、
普通、1ページが3段に分かれていても、3段を順番に上から読んでいって、それから次のページに移りますよね?
でも、この本は、1段目が見開きの左右にわたって、ある人称で書かれていて、
2段目は、別の人の目線で、3段目はまた別の人の目線。
例えば1つのシーンを、お父さん、娘、土星がそれぞれ見つめていて
それが本当に文字通り並列に並んでいるのです。

そして、文字が黒く塗りつぶされていたり、読めなくなっている箇所があったりするのですが
それ自体が物語の表現、演出のひとつになっているのです。
頭の中でこれを描きながら物語を書いていたのかと思うと、どんな宇宙が広がっているんだ。。。。とこの作者にすごい興味が湧きます。

あるページでは、登場人物の意識が遠のいていくシーンで、文字の印刷の濃さがグラデーションで薄くなっているところまでありましたよ。
これを作ったデザイナーさん、印刷所さん、製本所さん、すごい。。。

ヘブライ語の見た目がこうなっているのであれば、おそらく原書の英語も同じような組版なのでしょう。欲しいなあ、手に入れたい。

物語の面白さがメディアと相乗効果ですごい高まっている。
機会があればぜひ、手にとって見てみて欲しい、「本」です。



書体を選ぶセンスや面白さ、という点でいうと
私がたぶん今年一番読み返した本も、はっと気付きがありました。

植本一子さんの「かなわない」はたぶん一番読んだ本。

ここまで曝け出してしまっていいのか、とこちらが心配になるくらいの植本さんの日記。

私がこの作品が好きなのは
とても自分に正直に生きていらっしゃるところが羨ましいのと
私自身と、思考の癖など、似ているところがあるから共感するんだと思う。
私は結婚もしていないし子供もいないので、彼女の気持ちが完全にわかるわけではないけれど、同じ環境だったら、同じように物事を考えたり行動するかもれない、と思う。それは少し恐怖でもある。
まあ読んでめっちゃ楽しいとか明るい気持ちになる本ではないので、おすすめ、と押し出すのは迷ったので前回は書かなかったです。

一度読んだあと、別の本を読んで、数日後にまたこの本を開いたときに
フォントの選び方にはっとしたのです。
何を使っているのかまではわからないのですが、
線が細い印象の文字。
それが、本の内容にぴったりだなあと思ったことが印象に残っています。

圧倒的な「かなわない」ものの前で我々はもうただひれ伏すしかない。

日記本というジャンルが元々好きだけど、これも好きな1冊に加わりました。
それで思い出したんだけど、安野モヨコさんの「日記書いてる場合じゃねえよ」は何回も何回も読んでいるけど本当にすごいエネルギーでキラキラしているからまた読み返したい。これと「美人画報」で私は東京と大人の女に憧れたなあ。

もうひとつ、私にとってとっても大切な作品についてはまた別の日に書こう。。。


今年は文字、書体やユニコードと格闘した時間が長かったので
印象に残ったのはそういう、作品の内容や魅力を伝えるのにメディアがすごく重要な役割を果たしている作品になりましたねえ。

そういえばこの間紹介した「レモンケーキの独特なさびしさ」ははなぎれもレモンイエローで可愛かったよ。

お仕事で装丁家さんやブックデザイナーさん、DTPの神様みたいな方とご一緒出来ているから、そういう視点が増えました。楽しみ方が増えてとても嬉しい。

あー本読みたい。






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