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2月の華金の過ごし方

これは、昨日の新鮮な出会いを書き留めたいだけのもの。

突然だけど、私の父親は休みになると街に出かけては飲食店を開拓するような人間で、休日に母親が仕事の時もそれは変わらなかった。つまり、就学前から娘は父親がお守り係になる度に父親の行きたい所に連れ回されることになり、娘はそれに甘んじて付いていくということを学習した。長年習慣になっているそれが、緩やかな反抗期ごときに打ち消されるはずもなく。成人を優に超えた今でも、予定が合えば父親と飲みに行くのは自然なことで。父親と飲みに行くなんて珍しいと言ってくる人もいるけど、そこら辺の人より余程良さげなお店を知っている人の誘いを断る理由はないかと。予定が空いてればね。

毎月末は父親が楽しみにしているイベントがあって、今月末例のウイルスにより暇になった私は、結果として4軒ハシゴを楽しませていただいた。こんなイベントそりゃ毎月参加したいよ。大学時代を最後に何とはなしにお酒と疎遠になっているけど、やはりお酒はよい。何が良いって普段無口な自身のセイフティを外して会話しやすくなりストレスを発散させてくれる。大人の嗜み最高。アテとの組み合わせも考えると昨日の優勝は熱燗。

前置きが長くなったけど、書き留めたいのは2点。メインは料理、というか酒と料理の組み合わせについて。おまけで感動の再会。まあ時系列で書くか。なにせ5軒中5軒とも当たりだったもので。なんて素敵なことだろうね。

1軒目。お肉屋さんが店の隅っこに席を用意しているというちょっと面白いお店。赤のサングリアのお供に盛り合わせを頼んだんだけど、その中のポテトサラダが美味しかった。これが肉屋らしさ全開で、潰した芋の上に同量くらいの挽肉が載っているというシロモノ。ポテトサラダ自体は控えめな味付けなんだけど、それと一緒にイカ墨を和えた旨味たっぷりの挽肉を口に運ぶと、第二の人生が開けた。挽肉の全てを詰め込んだ染み出す脂を、ポテトサラダがこれまた全て受け止める。甘さ控えめのサングリアにも合うね。家でもこの奇跡の出会いを追体験したいと思ったけど一瞬で諦めた。また来ます。

2軒目。カジュアルイタリアンと言うのか。受動的な知識しか持ち合わせていないからこういう分類はすごく苦手だなー。ひとつ確かなのは店主さんが気さくで話しやすかった。料理はもちろん美味しかったんだけど、ここで印象に残ったのは白ワインを頼んだ時のこと。店員さんが持ってきてくれた3種類のボトルのうちのひとつが、私が人生で初めて買ったワインと同じだった。5年前に買ったっきりだったけど、生まれて初めて選んだワインが、こうした素敵な雰囲気のお店でも提供されるようなものだった事を知って嬉しくなった。味は軽くて爽やかで、あの頃のフットワークを思い出した。

3軒目。父親の意向で和食へ。これが大正解。鮪のトロのお造りもそりゃ美味しかったよ。でも、その後に頼んだこれが罪な味。その名も、丸大根とあん肝煮。出汁が大根はもちろんあん肝にも優しく、それでいてしっかりと染み込んでる。あん肝を口に入れるとふわっと柔らかく解けていく。これは熱燗と本当に合う。酒が進む進む。でもあん肝もゆっくり余韻を感じて味わいたい。最後の一口をこれ程惜しんだ事はない。月並みだけど、日本人に生まれて良かった。遺伝子レベルでこの味を受け入れてる感じ。というかこの味を求めていつでもすぐ来れるし。

4軒目。ここは最早飲食店ではない。普段は質の良い箒とかこだわりの調味料とかが置いてあるお店。このイベントの時は、長椅子と机を出して寄合のようなアットホームな雰囲気を醸し出す空間へと様変わりしているよう。寄合という言葉が合っているのかは分からない。そこそこ食べたので軽いものを、と思っていたらラインナップにおはぎを発見。普段はそんなに好んで食べないけど、昨日は無性にあのご飯粒の食感が残る餅とあんこの組み合わせが食べたかった。店員さんが言うには、あんこと日本酒は意外にも合うらしい。そんな事を言われたら、小休止に紫蘇サイダーにしようとかいう考えは塵になって。甘めの日本酒を頼むと、おはぎと共にすぐ来た。やや甘くてすっきりしている日本酒。求めていた通りのおはぎ。はい、マリアージュ。これはもう日本酒の無限の可能性を感じざるを得ない。あんこはあんことしてあんこたりえるままに日本酒の風味も取り入れて、日本酒はあんこの引き立て役に回るわけでもなくそれぞれが程良く主張し高尚なハーモニーを奏でると。日本酒が杉下右京で、あんこが相棒って感じ。相棒見た事ないけど。これは家でも出来そう。おはぎか最中の口になった時やろう。

やっぱり外に出ると新しい発見とか自分の過去との思いがけない繋がりがあるから楽しい。良い機会を与えてくれてありがとう父親。これからもよろしく。