選手レベルの測り方

選手のレベルを測る時に何を見るか。

「トラップを正確にコントロール出来ている」
「顔を上げてドリブルしている」
「フリーの味方を見つけてパスが出来ている」
「2トップのプレスを相手に中盤が落ちて数的優位を作れている」
「1対1の守備で絶対に縦に突破されない」
「大きな声で味方を鼓舞している」

こういう”発揮できているスキル”を見てレベルを判断しがち。

けどこれでは不十分だと思う、という話。

結論。

選手レベルを測る時に見るべきは ”どんな問題を解決できるのか” ではないかと。


どんなに上記のようなスキルを発揮していようが、それが「リソース優位または状況的優位でイージーな問題を説いているだけ」なら、レベルの高い選手とは言えないのではないだろうか。

昨今は「判断を評価する」という傾向も強いが、評価するには「その判断は何を解決できているのか」という視点が必要。
”判断”もスキルの一つと捉えると、そのスキルで何も問題を解決出来ないならば無駄なスキルだから。


「問題を解決する」とは、もちろん「チームを勝利に導く」ことであり、「勝つ確率をあげる行為」とも言える。


周りも見ずに強引なドリブル突破しか出来ない選手がいたとする。判断が悪い選手と言われるだろう。
でもその選手はどんな相手でもどんな状況からでもそれを実行出来て、しかもその突破によって何度もゴールが生まれている。
その選手は”問題を解決している”と言えるのではないだろうか。

判断が良いとされる選手がどんなにパス循環をスムーズにしても、それが勝利にもゴールにも繋がらないのであれば、そのパスは”何も問題を解決出来ていない”

「上記それぞれの選手に価格をつける」となれば、前者の強引ドリブル選手の方が値がつくのではないだろうか。


”どんなスキルが出来ているか”ではない。
”どんな問題が解決できるか”が重要だから。


「問題を解決できるかどうか」が大事なのであれば、「問題に気づけるかどうか」も重要になる。
間違った問題を解決しても意味がないから。

例えば冒頭のスキルの例で出した「2トップのプレスを相手に中盤が落ちて数的優位を作れている」というスキル。
これはどんな問題を解決しようとしている行為だろうか?

ここで問題を間違えるとこうなる。
「問題:どうやったら相手プレスに対して数的優位を作れるか」
これは間違い。
問題文を間違えているから、数的優位を作ることに力を注いでしまう。
実際は数的優位を作るという問題を解決しても意味がない。
なぜなら本当の問題文は
「問題:どうやったら相手プレスを置き去りにして前線に優位を届けるか」
だから。
極端な例だと、ドリブル突破力が高いCBが相手プレスに対して毎回突破が可能なら、数的同数や数滴不利から突破させたほうが、前線はより優位になる。
相手プレスが来るより早く正確で超速いパスを前線に届けられるキックがある場合も、わざわざ後ろに数的優位を作らない方がいい。

勘違いを生まないためにも、正しい問題文に気づくことはとても大事なこと。



私が指導している選手も「正しい問題文を抽出できない」ことにいつしか気がついた。

その数的優位の例で言えば、「数的優位を作れてるのに、優位を届けていない、どころか、そもそも前に進んでもいない」なんてシーンが多々ある。

数的優位を作るスキル、フリーにボールを届けるスキル、そういうのは身についている選手でも問題が解決していない。

「九九を覚えたは良いが、九九の暗唱ばかり上達していて、問題文の中で九九を使うところに気づかない」かのような。
この九九の例でいえば、力技で足し算のみでも問題は解決できる。けど問題自体に気づいてなければそれすらも出来ない。
サッカーでそうなってしまっている状態が見られる。


なぜ問題に気づかないのか。
どうすれば正しい問題に気づくようになるのか。


問題に気づかない選手は、そもそも自分で問題を探してこなかったように思う。
私のような問題を考えるのが好きなコーチが、問題を与えすぎてしまっていたのが原因かもしれない。
答えを出す遊びはやってきても、問題文を作る遊びをやってきていない。そんな環境をコーチが作ってしまっていたのかもしれない。
だから、試合が優位に進んでいる時に「なんで今優位に進められていると思う?」、試合が劣勢な時に「今の問題ってなんだと思う?」、とかこういう問いかけが必要なんだろう。
何かしらのスキルを発揮したときも「今そのスキルで何か問題が解決したか?何か優位になったか?」と、スキルによって何の問題を解決したのか、自覚してもらうこともきっと必要だ。

それとどうやら私が指導している選手達は「どうやったらそのスキルを発揮できるか」というスキル発揮の問題文を抽出しがちな傾向があるように思うし、”正しい問題に気づく”ことにおいてはその傾向がとてもネガティブに作用しているように思う。
このケースでは、コーチが間違った問題文に誘導していた、ということもありそうだ。
例えば「上手い選手はこのスキルが出来るぞ」なんて声かけをすれば、スキル発揮を問題にしてしまいそう。
「上手い選手はこういう劣勢を優位に出来る」のような言い方を意識すべきかもしれない。


「なんで今優位に進められていると思う?」
「今の問題ってなんだと思う?」
「そのスキルで何か問題が解決したか?」
「そのスキルで何か優位になったか?」
「上手い選手はこういう劣勢を優位に出来る」

指導者のコーチングとして例に出した声掛けだが、選手自身が自分に声掛けしても効果はありそうだ。


選手は「このスキルが出来た!」ではなく、「試合の問題を解決できた!」を大事にしならなければならない。

選手レベルは ”どんな問題を解決できるのか” で測られるから。

より強力な相手や困難な状況を解決できる選手こそ、レベルが高い選手と言える。
だとするならば、身を置く環境も大事だ。
その環境で「問題に気づいて解決する」を繰り返していく内に、よりレベルが高い選手になっているんだろう。

逆に、自分で問題に気づかずに、誰かが与えた問題を疑問も抱かずに解いているだけでは、きっと応用の効かない選手になるんだと思う。
問題を整理してくれて単純な問題の解決だけを求めているチームでは輝いたけど、もっと複雑な問題を提示されるチームだと輝けない、みたいなね。



さて、こんな記事を書いている私は、何かの問題を解決できているのだろうか。


終わり

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