ポゼッションが効果的に行われているかの指標

タイトル通り『ポゼッションが効果的に行われているかの指標』について現在の考えを。


指標

ポゼッション=ボール支配率を高めることで試合を有利にする戦術、として。
試合でのボール支配率が高かったとしても、それは試合を有利に進めることになっていたのだろうか?ただ戦力的に優位だったからそうなっただけでは?という疑問も湧く。
現状ではこれらの指標でポゼッションが効果的に実行されているか測れるのではないかと仮説を立てている。

【ポゼッション効果測定指標】
1.長い距離のスプリント数(少ないほどGood)
2.パスを受けた時の受け手の移動速度平均(遅いほどGood)
3.ラスト25mにおける2.でGoodとされる速度の頻度(多いほどGood)

数m程度のスプリント数が多く、停止状態含めた低速移動時のファーストタッチばかりが発生してて、それらがより相手陣深くで行われている
のであればポゼッションが効果的に実行されている

1.は何mからが長いのか、2.は何km/hだったら良いのか、3.はなぜ25mなのか、など細かいところは詰まっていない。
そんなデータを集めて検証する機会が無いから。

ただ、「なぜこれらのような指標でポゼッションが効果的に行われているか測れるのか」の答えはもちろん持っている。

理由

1.長い距離のスプリント数(少ないほどGood)

守備時。
ポゼッションにおける守備というのは、支配率を上げるためにも攻撃陣形を維持するためにも、もしボールを奪われたとしてもさっさと奪い返したい。
陣形も変わらないレベルで即座に奪い返していれば、短い距離のスプリント数だけが増えていくはず。
守備で長い距離を速く走る回数が多いということは、自陣まで戻らされている回数が多いことを推測させるし、奪い返すのに時間がかかっていることを示していると言える。
毎回自陣で奪われている場合は長い距離のスプリントはあまりカウントされないだろうが、そんなチームは誰が見てもポゼッションが効果的に行われていないので指標もクソもないだろう。

攻撃時。
ポゼッションにおける攻撃では、ボールを奪われないためにボールの行き先に数的優位を作りながら相手陣に攻め入るというのが基本で、それは前述の守備での即時奪回の意図も兼ねている。
その「奪われずに進みながら即時奪回も兼ねる」を最大化する手段として、選手が孤立しないよう陣形を保ったままゆっくりと前進していくもの。
もちろん全力で走り続ければ早く前進してもある程度陣形は保てるが、走り回った状態のまま休み無しでボールを扱えば、精度が落ちて「奪われない」は達成されづらくなるし、疲労で「即時奪回」も達成できないだろう。
「ボールの方が人より速い」という原理故に、自陣後方にボールがある状態から縦105mを急いでボールを進めれば進めるほど人が追いつかず陣形を保てなくなるのは間違いない。
つまり攻撃で長い距離を速く走る回数が多いということは、ポゼッション攻撃の肝である陣形維持が上手く出来ていないことを示していると言える。

ポゼッションが効果的に行われていれば、どうやら長い距離のスプリントは攻守にあまり発生しない。


2.パスを受けた時の受け手の移動速度平均(遅いほどGood)

パスを受ける時、全力で走った状態でボールに触るのと、止まった状態でボールに触るのでは、難易度が明らかに違う。
全力で走った状態でボールを扱うことは、テクニック的な難しさももちろんあるし、速度に比例して視野が狭くなる認知的な難しさも、消耗してる中で制御する疲労的な難しさもある。

「でもスピードに乗ったまま受けたほうが相手をおいていけるだろ?」と考える人もいる。
確かにスピードに乗った状態のほうがまだスタートしていない相手をおいていけるが、それでは方向転換ができない。
ただでさえ全速力はミスが出やすいのに、更に相手の逆を取ることもアイデアを変えることも許されないのでは、ボールを奪われないというポゼッションの手段を取ることを難しくする。
また、全速力状態でインターセプトされると、ポゼッションの肝である即時奪回に反応することも難しくなる。
相手をおいていくには、相手の逆を取ればいい。
ポゼッションではとにかくいつでも方向転換ができる状態を作ることが重要と言える。

ボールを制御しやすく且つ方向転換をしやすくするためにも、ボールをタッチする瞬間は受け手の移動速度は下がっている方が望ましい。
ボールを受ける前のマークを外す動きで速度を上げたとしても、タッチするときには減速されているべき。
全速力を出してから減速して受ける、減速した状態から加速して受ける、であれば前者が望ましい。

この指標については実際に計測するとしたらどうやるのか?という疑問がある。
ボールタッチした瞬間からタッチする1秒前までの移動速度でよいのか?
そもそも平均速度でよいのか、低速帯と高速帯の頻度の方がよいのか、などなど。
そのあたりはわからない。

ちなみに、守備側も加速しながら突っ込むと相手の変化に対応し辛い、という原理はあるが、けどそれはポゼッションに限った話ではないためここでは指標として入れない。


3.ラスト25mにおける2.でGoodとされる速度の頻度(多いほどGood)

後方でたくさん繋いで支配率は高いものの、前線にボールが入るやいなや特別チャンスでも無いのにワーッとスピードが上がって「ポゼッションなんてクソ喰らえだぜ!」みたいになる現象は珍しくなく。
ポゼッションで大事な「奪われない」「即時奪回」が達成されるのであればそれでも問題ないが、大体の場合はワーッ状態になるとそうは行かず。
ワーッ状態では、1.でBadとしている長スプリントで多くの味方が走り出し、ボールホルダーは2.でBadとしている全速力じゃないと合わないようなパスを味方に送る。
それだけ走っても相手ゴール前にたどり着ける味方は多くて2人、相手は4〜5人。
「奪われない」「即時奪回」の達成はその圧倒的不利な状態での前線のクオリティ次第になってしまう。

ラスト25m内で低速帯でのファーストタッチが多発しているようなら、ワーッ状態が頻繁に起こっているとは考えづらい。
味方が揃っていて且つ十分なポジションを取れていなければ、低速帯ファーストタッチが多く発生することは無い。
相手陣地深くでもその状態を作れているのであれば、ポゼッションの「奪われない」「即時奪回」が効果的に機能していると考える。
相手陣地深くで「奪われない」「即時奪回」が機能するということは、それは得点の可能性が高まっていることを意味し、ポゼッションが効果的に行われていることを証明する一つの指標になる。


指標を左右する要因

ではどんなプレーがこれらの指標の数値に大きな影響を与えるか。
少し考えてみる。


パス

適切なタイミングで正確なパスができると数値は良くなる。
ミスや無駄な動きが減る、つまり移動スピードを上げる必要がくなるから。
上手すぎると当たり前のように見えてしまうことが多いが、受け手の移動速度に合わせて減速するころに足元にピタッと扱いやすいボールが入るのは実は貴重な能力。
味方が加速してるところに速いボールを当てたり、全力じゃないと追いつかないスペースにパスを出したり、味方の向きや重心と逆側にパスを出したり、というプレーでは味方を加速させることになるので数値が悪くなるのは間違いない。
パスミス連発は言うまでもなく。

「パス回し」という括りにすると。
基本である「良い状態の味方を良い状態の内に使う」を実行できているかどうかはかなり重要な要素。
2〜4人のパス回しをしているユニットで、それ以外の味方に良い状態を作れるかどうかも大事。
パスを回せば回すほどボールの雲行きが悪くなっていく、なんてことになるパス回しになるなら、ポゼッションは諦めた方がいい。


ドリブル

ここで言うドリブルは突破も運ぶもキープも全部含んでいる。
ドリブルで味方がポジションを取る時間を作れる能力も貴重。
味方が一度良いポジションを取れれば、チームとして加速しながら走り回る必要が無くなる。
シャビがよくやるボールを隠して後ろを向くようなクルクルするターンはかなり効果的。
ドリブルで一度後ろを向くことで、味方が相手の逆をつく間を作り出せる。
ドリブルで味方のスピードをコントロールできる選手が優秀とも言えるか。
味方が慌ててサポートする必要が出てくるドリブルをする選手や、逆に全くドリブルしないで味方の状態に関わらずにパスしまくるような選手は、劣等と言わざるをえないか。


ポジショニング

先に良いポジションを取っておいてからアクションを起こす。
これができていれば、無駄に速度が上がることもなく、ボールをプレーすることも、奪われた後にアタックすることも、よりイージーになる。
逆にデフォのポジションが悪かったり、ポジションを取るのが遅いと、その後のアクションが後追いになるからプレーがどんどん加速しちゃう。
大事なことだからもう一度言う。
ポジショニングが遅くて悪いからプレーが加速しちゃう。
ポジショニングは指標のためにはかなり重要な要素であり、ボールコントロールを必要としない分、誰しもがコントロールし易い要素でもある。

次の展開がどうなるかを常に予測しながら先回りすることが習慣になっていて、且つその予測の精度が高い選手は、指標にとても良い影響を与えるのだろう。
そういう選手がいると攻撃も守備も実際に本当に助かる。
しかもダッシュでそのポジションに移動していないから、あんまり走ってないように見えることも多い。
効率が良いから、実際に多く走ってないこともあるけど。

攻撃では、相手が出れない場所を理解できている選手、マークを数歩で外せる選手、激しい動き無く味方をスッと繋ぐことができる選手、なんかはきっと良い助けになるはず。

守備で遠慮したいのは、「そこは遠くね?」という位置から飛び込もうとしがちな選手、役割を理解していない場所に全力で移動する選手、相手が前方に行くことに無警戒な選手、とかか。
こういう選手がいると、長スプリントが多発する。


最後に

以上、あくまで現状での仮説であり、実際に計測したことのないものでもある。

「ここはこうじゃないか?」という意見があれば、それが発展を生むことになるので、(優しい言い方で)積極的にお願いしたい。

「実際にデータで似たような部分を見てみたらこんな数値が出てたよ」なんて声があれば最強。

ちなみに、本稿で上げた指標だと、長い距離のスプリントでマークを外す(ジョルティアルバのような)、ゴール前のクロスに対して全力で走り込んで合わせる、などがやってはいけないプレーのように感じそうだが、そういうわけではない。
それらはポゼッションの中で当たり前にあるべきプレー。
この指標の数値はBadが無くなることを目指すためのものではない。
ポゼッションが効果的に行われているとGoodの数が多くなりそう、というだけの話。

さらに身も蓋もないことを言えば、指標なんてそのチームのスタイルによって良し悪しが変わるものだから、ポゼッションって一括りで言ったところで絶対的な指標なんて存在しないのでは、と思ってもいる。

なので、「ポゼッション的なプレーとはこういうものでは」を指標という言葉を用いて表しただけの記事だと捉えていただければよいのかもしれない。


おわり

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