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円舞曲を踊ろう。

豪華客船が大きな音を鳴らしながら揺れている。 氷塊にぶつかった衝撃で甲板や外装が破壊され、大きく空いた穴から大量の水が流れ込んでくる。 もう時期、この船は沈没するのだろう。と、私は半ば諦めたような気持ちでその場に立ちすくんでいた。 私の横にいる男は、初めて会った時からずっと同じような微笑みを湛えている。 漆黒のタキシードに身を包み、嫌味に横へと髪を流したセットをしているこの男はどうも好きになれない。 「なあ、どうせ沈むんだから一緒にワルツを踊らないか?」 「厭よ、あんたと踊る

    • 冬の海は遊泳禁止で

      高校三年生のとき、終電に飛び乗って真冬に夜中の江ノ島に行ったことがある。 ウミネコは本来、冬の季節は日本にいないので「ニャー」という鳴き声は聞こえなかったし、いくら待っても、映画でしか見たことないような船はやってこなかった。点灯さえしないあの大きな灯台を時々見上げて、冷たい息を吐きながら僕は『冬の海は遊泳禁止で』を独り口ずさんでいた。 Plastic Tree(以下:プラ)を好きになったのはいつから、なんていう記憶はないし、物心着いた時には既にDVDプレイヤーを駆使して『二

      • 朝目が覚めたら……なんてね

        DEZERTの曲はたまに独り善がりで、でも聴いてる人に勇気と元気を与えてくれるような、 そんなバンドだと僕は思っている。 「デザートの楽しいマーチ」では と、一見聴くものを突き放しているも思えるが、最後には「今日も生きてくれててありがとう」と曲を締めくくり、リスナーの暗い気分に寄り添い、肩を貸してくれるような歌詞がVo.千秋氏の特徴であり、かつ楽曲はメロディアスでポップな曲調が多く、一度聴いたら耳から離れないような印象深い曲ばかりである。 また、ライブでのMCは冗談を混じえ

        • 2010年7月15日の君へ

          13年前の7月15日、その日はV系シーンに激震が走った。 ex.蜉蝣、the studs、大佑と黒の隠者達のフロントマンを務める「大佑」氏が亡くなった日だ。 Fatimaの時からV系の前線を走っていた彼の突然の死は多くのファン、そしてバンドマンに衝撃をあたえた。無論、僕もその一人であった。 はじめて音楽プレイヤーをもらった日はよく覚えている。幼稚園の頃、兄のお下がりのiPodをもらい、四六時中それをずっと肌身離さず、寝る時でさえ音楽を聴きながらよく眠りについた。その時によく

        円舞曲を踊ろう。