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いつか覚えてろよ生理痛

何年振りかの立っていられないほどの生理痛に腹が立つ。生理痛の何が嫌かって、腹が立つのだ。あまりに痛いし理不尽で。コロナにかかったときも辛かったけど腹は立たなかった。ウイルスにかかったら諦めるしかない。人に感染させる恐れもあるし堂々と休める。ウイルスが検出される、熱が上がる、といった客観的事実を明確に証明できるからだ。

しかし生理痛、お前はどうなんだ。明確にこの痛みを証明できない。相手に大したことのない痛みだったり、嘘だと判断されることもある。

まず女しかならない病だ。さらには生理痛と無関係の人生を送っている女もいる。彼女たちからは一切の理解を得られない。せめて「私は分からないけど、辛いんだよね」と、心の底から思っていなくとも、ポーズだけしてくれたらいいものの、そこに無遠慮も加わると敵に回ることが多い。生理痛くらいでいちいち喚くな、と。お前が喚くなよクソが、分からんなら黙ってろと思う。

そしてこの通り口が悪くなる。理不尽なダメージを受けると性格が歪む。明確なその一歩である。手負いの獣そのもの。

生理痛のある月とない月があるが、完全に賭けで、月のものが来ないと分からない。これまでの経験上、おそらくだが身体が冷えていると起きやすい。なので夏と冬に爆弾のような生理痛に襲われることが多い。



出勤前はちょっと痛いけど薬を飲むほどじゃないな、と思っていた。出勤してからじわじわと痛み始める。段々と立っていられなくなる。私が突然椅子を持ってきて座るので周りに心配され始める。「さっき薬飲んだから効けば大丈夫だと思うんですけどねー」とヘラヘラしてみる。しかしありえないくらい痛みが増してきて、ヘラヘラできなくなってくる。痛さのあまり吐き気が出てきて、視界がチカチカする。

あ、救急車。搬送される自分が一瞬頭をよぎる。いやまて、その前にやることがあるだろ、横になることだ!

「ちょっと寝てきてもいいですか」とマスク越しでも分かるくらいに白い顔で言えば、同僚たちが即席の段ボール布団を作ってくれた。梱包に使うプチプチを枕に、誰かの膝掛けを掛け布団にして、まるで避難所生活みたい、とうすら笑いを浮かべながら横になる。生理痛無配慮女がいる職場じゃなくてよかった。男の人ばかりの職場じゃなくてよかった。

ああ、かたい。そう思ったのも束の間、縦になっているよりは何倍もマシで心が休まる。ふと、「タカアンドトシのトシの写真を見ると、生理痛が和らぐ」という都市伝説を思い出し、スマホで必死にトシの写真を探す。本当に和らいでくる。ホッとしたのか5分もしない内に意識が落ちる。これまでの経験上、薬を飲んで睡眠を1時間ほど取ると痛みがなくなることを知っていた。これは私が中学生の頃、母と訪れた鎌倉で同じ目に遭い、荏柄天神社の休憩スペースで突っ伏したときに得た技だ。

意識が落ちる、ってこういうことなんだろうな、と分かるくらい、起きた時に時間の断絶を感じる。睡眠というよりは気絶。できるだけ薬を飲みたくないから、極限まで我慢してしまう。でも本当は、生理痛には早めの対策が肝で、痛みが出てきた頃に薬を飲むのが良いという。強くなってからでは遅いと。

だが耐えられるくらいの痛みで終わる時もある。自分の身体のことだけど兆候が全くわからない。ストレスが関係している説もあるけど、新卒で働いてた頃、ストレスしかない環境で食生活も荒れていたがなぜか生理痛がなかった。もう全くわからない。さっさと最先端医療で解決してくれよ。いや、そんなことよりもトシありがとう。

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