【短編】わかりあう、ふたり
「ねぇ、もう終電なくなるんじゃない?」
早田早紀は澤井雄二の断固として帰らなさげな素振りが気になっていた。もう夜の十一時五十分だった。終電がなくなったら、カラオケっていってもとにかく今日は帰りたい、早紀は雄二が帰るよと言いださないかと強く強く念じていた。
「あのさ、ここからタクシーじゃぁ五千円はかかるもんね。ウチまで」
「知らないよ、京都駅から久御山あたりならそうなんじゃないの」
早紀はそっけない。だが早紀にはさっきから雄二のまわりに余計なものが見えていた。
――あぁ