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ボロ戸建て再生のリアル

ボロ戸建てを安く買って、安くリフォームすれば超絶儲かるぜ!!!うぇーーーーい!!!!🤤🤤🤤🤤🤤

という風な発信をするインフルエンサーは多いです。確かに、10軒買えば1件ぐらいはとても安く買えて、リフォーム費用もそこまでかからず、利回りが30%近くとれる、そんな案件もあると思います。

例えば以下の物件は「そんな案件」でした。購入してからのリフォームはほぼ実施せず、諸経費含めて原価は200万ほどに抑えることができ、賃料6万の利回り35%程で回せています。

とはいえ、この物件は買取再販をやっている弊社だとしてもやはり10軒に1件程度しかこない案件であり、現実としては「誰も買わない、土地も小さすぎて価値が無い」ような物件だからこそ、数十万円という安価な金額で購入することができるわけです。

本記事では、

・一般的に数十万で買える不動産というのはどういうものか
・そのような物件を買うとどのようなリフォームを実施せねばならないか
・そのリフォームはどのくらいの金額が必要となるか

について語っていきたいと思います。


30万円で買ったボロ戸建て

これは3年ほど前に買った市内の戸建てです。土地面積が140㎡ほどで、地方では注文住宅用地としては適さないので解体土地売りができない。しかし、築50年ほどで内部の状態も悪く、一般市場に出して売れるような物件ではない。

このような物件を市内の仲介会社が預かると、だいたい私のところに話をもってきてくれます。(うん、まぁ気持ちはうれしいんだけどもうちょっと程度の良い物件がイイカナ…💦)

パッと見て「(うわぁ…買いたくないなぁ…)」と思いましたが、売主に話を聞いてみると相続したあと色々な不動産会社に相談したが取り扱いを断られている、相続登記の費用も含めて手出しがゼロ円になればそれでいいと考えている、という状況でした。また、付き合いの長い仲介会社からの相談案件でもありました。

色々と話を聞き、このような住宅を相続してしいまいどうしたらいいのか途方に暮れている人を助けることも地域社会の中での私の役割だと考えていますので、「じゃあ30万で引き取ります!」と見学しに行ったその場で数字を出して即決してあげました。

実際に購入してからは中々に大変でした。このような築年数が古く、駐車場も弱く、間取りも弱い物件のリフォームプランを考えるのはとても難しいのです。

全てを新品リフォームするなら誰でもできます。しかし、それでは利益が出ません。じゃあ何もしなければいいのか?それでは当然買い手・借り手がつきません。築古再生では、リフォーム予算と利益のバランスを考えて、最も利益率が高い分岐点を自分の経験から算出しリフォーム内容を決めなければなりません。最終的に、

「これ水回りはさすがに全新品交換しなけりゃ絶対ダメだ。家もちょっと傾いてるから床の調整してCF貼りにしよう。駐車場スペースが足りなすぎるから塀は全解体。せめて1階部分はすべて洋室にしないと使い勝手悪すぎる。雨漏り箇所もあるから外壁塗装やりつつ、雨漏りの修繕や予防のコーキングしないと怖くてたまらん。ただ、雨樋やらサッシやら雨戸を交換する予算まではとてもじゃないがだせないな。2階はマジで予算ないから和室のままだし砂壁のままだけど、畳表替えと襖張替えだけやって最低限度の見栄えは整えよう。」

といった感じで、「しっかりやる!」かつ「見栄えにあまり寄与しない部分はなるべくやらない。」という思想でリフォームを実施しました。

リフォームのビフォー&アフターは以下の感じです。


リフォームのビフォー&アフター、外観・外構

外壁、雨樋、雨戸塗装、塀と門扉撤去
駐車場は普通車がギリギリ2台分置けるようにした

水回り


内観


さて、大事なのは本リフォームの実施費用、諸経費も含めた取得金額、総額に対して家賃がどれだけとれて、利回りがいくつになるかです。それぞれの数字については以下になります。

・購入金額・・・30万円
・取得経費・・・30万円(仲介手数料、登記費用、取得税)
・リフォーム費用・・・418万円(建物378万、外構40万)
・その他経費・・・12万円(防蟻工事)
総額・・・490万円
・家賃・・・6万5000円×12=78万円
・毎年かかる経費・・・約8万円(火災保険4万円、固定資産税4万円)
・手残り家賃・・・70万円
利回り・・・70万÷490万円=14.2%

現実には、修繕が数年ごとに発生したり、家賃に対しての法人税(所得税)が発生するため、手残りはより減少し、税引き後実利回りは10%以下になります。

また、先にも述べたように本物件の土地は地方においては非常にコンパクト(140㎡)であり、最終出口に窮する物件です。隣地が売りに出されるタイミングでそれを買っておいて、本物件の店子が出たタイミングで2つの建物を一気に解体し、土地を合筆して販売する、ぐらいの手段しか出口が思い描けません。

つまり、税引き後実利回り10%でなんとか10年間程度回して投資資金を回収しつつ、その後は上記のような出口手段を考えるか、あとからやってきた素人投資家にババを押し付けるか(笑)、死ぬまで「負動産」として抱え続けるかしかないということです。

これらの数字を見てどう考えますか?

「元本が年々棄損(経年劣化)していく投資商品で、税引き後実利回りが10%しかなく、流動性も低い。雨漏りクレームなどの精神的負担も発生し、確定申告などの税務負担も大きい」

築古戸建て投資を現にやっている私ですら、このようなビジネスを手元現金でやるくらいなら絶対に株式投資のほうが割が良いと判断します。私はあくまで不動産業者として地域への福祉の観点から、半ばボランティアの感覚でこのような難しい案件も取り組んでいますが、不動産投資のみをやっている人間であったのならばら絶対にこのような物件は購入していません。

これが築古戸建て投資の現実です。そして、この案件は決して悪すぎる内容のものというわけではなく、築古戸建て投資の平均水準程度の案件だと感じています。


不動産投資で儲けられなくなり、インフルエンサー、セミナー屋、情報商材屋になった人間は数多く存在します。彼らはこぞって、

「1円で家を買って、コスパよくリフォームをして、人に貸す!こんな楽な商売ないよ^^不動産投資なんて超楽勝!」

なんてことを言います。いわゆる「ポジショントーク」というやつですね。

しかし、現実は違います。やる価値のある収益物件を手に入れるためには、DIY能力があったり、DIYをするための時間がある人だったり、安パイな収益物件を多数紹介してもらえる人脈をもっていたり、低金利で資金を調達できる能力をもっていたり、賃貸だけではなく販売をする選択肢もとれたり、そのような能力をもっている必要がある。そうでなければ、本当に築古戸建て投資は「やる価値ナシ」なのです。

さぁさぁさぁ!皆さん、今日も一緒にご唱和ください!!!

「#絶対にやめよう不動産投資」

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