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【登山ガイド】J.miuraさん

少し前なら会社員の副業は御法度だった日本。
いまや大手企業も副業を推進、働き方にも多様性が生まれつつある。

本業と副業が全く違うケースもあれば、ふたつの仕事をうまくオーバーラップさせている人もいる。今回、話を聞いた登山ガイドのJ.miuraさんも後者のパターンだ。

本業と副業、ふたつの仕事の関連性も含め、根掘り葉掘り聞いてみたい。

登山ガイド J.miura

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ひと・しごと図鑑:まずはいきなりなのですが、登山ガイドとはどんな仕事なのでしょう? 失礼な質問になったら申し訳ないのですが、登山は誰でも自由に出来るレジャーですよね。エベレストのような険しい山ならガイドを雇うのも分かるのですが、地元の小さな山を登るのに必要なのでしょうか?

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J.miuraさん:たしかに登山道を歩くことは誰でも自由です(※入山許可が必要な山、登山道もあります)。ただ、山の中、深いところを歩くと道に迷ったり、それが原因で遭難、最悪は命を落とすこともあります。そういった不安を解消したり、天候を読みとって悪天候を回避するなどして、安全管理に努めます。

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ひと・しごと図鑑:なるほど、リスクコントロールが登山ガイドの仕事なのですね。

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J.miuraさん:それだけだとマイナスをゼロにして終わってしまいます。ゼロをプラスにもっていくのもガイドの仕事です。

簡単に言うと「山の案内人」ということになるかと思いますが、もっと深く言うと「自然と人の関わりを伝え導く者」、つまり、自然の美しさや素晴らしさをお伝えすることができで、自然の厳しさを伝えることができる者が、プロの「登山ガイド」だと考えています。

たとえば、今まで知らなかった道を歩いてもらったり、疲れにくい歩き方、動植物の知識、山にまつわる歴史など、多岐にわたって解説します。

はとバスだって東京の街を走りながらガイドさんが解説してくれることで、新しい発見がありますよね。そういうイメージですかね。

宮城県民には馴染みのある「泉ヶ岳」は、 初心者や体力のない子供でも頂上に登れますよね?

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ひと・しごと図鑑:はい、子供の頃に学校で行きました。

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J.miuraさん:小さな山なので、一度登ればおしまいだと思うかもしれませんが、登山道の組み合わせや季節を変えることで何十通り、もしかしたら百通りもの楽しみ方があります。

ただ、一般の登山愛好家の方々が、単純に山頂を目指すだけでは見落としてしまうものが沢山あるのです。ガイドがいることで、登る山を隅々まで堪能頂けると思います。

登山ガイド J.miura2

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ひと・しごと図鑑:J.miuraさんが、ガイドになるきっかけは、何だったのでしょうか?

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J.miuraさん:幼い頃から外遊びが大好きで、家回りのイグネや田んぼ、川で毎日のように遊んでいました。

高校生のときにアルバイトで稼いだお金でキャンプ用品一式を購入し、本格的アウトドアライフがスタートしました。自転車で初めて行った奥松島、そして初登頂した「大高森」、これが私のアウトドアライフの原点となっています。

大人になってクルマの免許をとって行動範囲が広くなってくると、東日本を中心に、キャンプ、スノーボード、登山に明け暮れました。50ccバイクでの日本一周や北海道ツーリングは、今でも忘れられない思い出です。

20代半ばになって、登山専門のアウトドアショップに勤めるようになりました。

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趣味が高じて、という話ですね?「好き」を仕事にしてみてどうでしたか?

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J.miuraさん:楽しいだけじゃダメでしたね。その時勤めたのが、登山の専門店のいわゆる「道具屋」です。

お客様の登山スタイルに合わせて、何か必要か、何が合っているかをご提案するのですが、メリット、デメリット、万一のトラブルの場合はどうするかなど、しっかり伝える必要がありました。

なぜなら、登山装備の有無が、登山装備のトラブルが、命に直結するからです。お店の社長や先輩、常連のプロ登山家の皆様から、楽しさの裏側にある厳しさを叩き込まれました。

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ひと・しごと図鑑:そこではガイドはやらなかったのですか?

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J.miuraさん:仕事の一環でガイドの見習いからスタートしました。始めは最後尾についてお客様たちと歩くところから。少し慣れてくると、メインガイドも任されるようになりました。

ところが、お連れする方々は自分の両親、いや祖父母くらいの年齢の方々です。技術と経験は向こうの方がはるかに上で、こっちが勝てるのは体力ぐらい(笑)。

最初は「山に連れていってケガをさせないで帰ってくればいいんでしょう」くらいの気持ちだったのですが、ガイドといっても喋るネタもすぐに尽きてしまいますし、誤魔化そうにもすぐにバレてお客様から厳しく指摘されたこともありました(笑)。

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そういう苦い経験もありつつ、ガイドという職務を放棄せずに、さらに向上させた理由は何でしょう?

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J.miuraさん:自らも被災した、東日本大震災が大きなきっかけでした。

大自然の中での活動である「登山」、その知識や技術、装備や精神は、東日本大震災の時に大変役に立ちました。

自分がこの目で見てきた経験してきた「東日本大震災」、長年向き合ってきた「登山」、これらを自然の脅威から身を守る「防災術」として、多くの人にお伝え出来ないかと思った次第です。

趣味の登山がいざという時には防災にもなりますので、もっと身近に登山を感じて頂きたいと思っています。皆様にしっかりお伝えする為に、登山ガイド資格と防災士資格も取得しました。

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ガイドをやっていて、どんな楽しさがありますか?

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J.miuraさん:素晴らしい自然と関わり、山好きな人達との出会いと楽しい時間の共有、これ以上に魅力的な仕事は無いと思います。山好きな人は本当に良い人ばかりなんで、それも嬉しいことですね。

また、登山は修行あり、「登山道」とは目指すべき「道」だと思っています。精神的にも、肉体的にも、自分自身を高めていけるのも登山の魅力ですかね。

あとは、何よりも自分が案内をしていてお客様が満面の笑顔で「ありがとう」と言ってくれたり、本当に楽しそうにしている時が最高の瞬間ですね。

登山ガイド J.miura3

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逆にガイドはつらい、大変だな、ということはありますか?

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J.miuraさん:本業、ガイド下見や準備、ガイド本番と、休みはほとんど無いです。

J.miura 流の心と体の休ませ方は、本業中は「体の疲れをとり」、登山ガイドでは「心を癒す」、忙しい中でもうまく自分をコントロールして楽しみながらやっています。

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本業からフィードバックされること、副業から本業にフィードバックされることはありますか?

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J.miuraさん:「道具屋」は道具を売るのが仕事、「ガイド」は案内が仕事です。基本的に両方をこなせることは少ないですが、私の場合、買って頂いた道具を現地でレクチャーします。

登山装備のご提案から、山の計画、山のご紹介、楽しみ方やリスクをお伝えしながら、山の案内まで、皆様の登山をトータルプロデュースすることができます。

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J.miuraさんならではのガイド、はどうでしょうか?

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J.miuraさん:私が感得した「登山道 三浦流」は、五感をフルに使い「五輪」を感じる山歩きです(五輪とは:万物を構成する要素である「地・水・火・風・空」のこと)。

今、目の前にある自然から過去や未来を想像したり、山の歴史や人との関わりを考えたり、J.miura の視点で解説してゆきます。

また、自然と向き合っていく為のサバイバル術、歩行技術、行動術、危急時対応術、装備の実戦的活用術などなど、日常の防災にも役に立つ講習も行っています。

登山ガイドというと目の前にある草花、景色を解説することに偏りがちなのですが、私の場合は山の歴史や伝説、人との関わりをお話しするのが好きです。参加して頂いたお客様にも一緒に想像して頂き、私の話だけの一方通行にならないように気を付けています。

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これから、もし若い方がガイドを目指すなら、どんなアドバイスをしますか?

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J.miuraさん:まず、自然が好き、人が好きじゃないと出来ないと思います。

日常の仕事とは全く違って、登山ガイドの仕事は非日常であるということ。何時から何時までの勤務だとか、何分休憩だとか、公私のメリハリは全くありません。

それでも登山が出来れば楽しい!皆を喜ばせたい!と思える人なら登山ガイドに向いていると思いますよ。

あとは、登山以外のことにも興味を持たなければなりません。山に関する逸話を語るためには歴史の勉強が必要ですし、山の成り立ちを語るためには地学も学ばなければなりません。

動植物なら生物ですし、文学、美術、音楽、民俗学、運動生理学…たくさん勉強して引き出しを沢山作っておかなければなりません。

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最後にJ.miuraさんの宝物は何でしょうか?

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J.miuraさん:「家族」です。

何気ない日常というものがどれだけ大切なのかを知らされたのが「東日本大震災」でした。あの時、何よりも一番に考えたことは「家族」のことでしたから。

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【まとめ】

スペースの都合上、割愛した部分もあったが登山の魅力を熱く語るJ.miuraさん。

本業から派生した副業、副業から得た経験を本業に活かす、双方を上手にコントロールしている姿は参考になるのではないだろうか。

また、J.miuraさんは登山ガイドだけではなく、初級者を対象とした「机上講習会」というセミナーも積極的に開催、登山の普及、安全登山の啓蒙活動も行っている。

ガイドも初級者、中級者などレベルに合わせて行っているため、経験の浅い人でも安心して参加できるとのこと。

詳しくは、こちらのWEBサイトへ。


記事執筆者:竹田知広

https://www.worldwalkers.biz/







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