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【クライミングジム・ボルダリング教室経営】佐藤秀憲さん

(この記事は2020年11月に書かれたものをサイト移転の際に転記したものです)

東京オリンピックの追加種目となったことで注目を集めるようになったスポーツクライミング。

仙台市内にも、複数のクライミング施設があり、特に人気なのが、ボルダリングと呼ばれるスタイル。

壁の高さが数メートル、床には棒高跳びで使うような分厚いマットが敷き詰められているので、ロープや特殊な道具は必要とせず、専用のシューズさえあれば初心者でも楽しめることから、クライミング=ボルダリング、というイメージが定着しつつある。

今回、お話を伺ったのは、11月1日、仙台市(JR中野栄駅そば)にオープンする『ボルダリング教室ボルズ』のオーナー、佐藤秀憲さん。

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佐藤さんは、いままでも仙台市内でクライミングジムを経営していたが、今回始めるのは、新機軸の試みだという。

既存の施設と何が違うのか、そして佐藤さんが目指すクライミングのこれからについて、迫ってみた。

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ー早速、核心に触れるのですが、今回オープンするのは、従来のクライミング施設とは違うということですが…

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はい、ボクがこれまでやってきたのは、ほかの施設と同じ「クライミング・ジム」なのですが、今回は広告やWEBサイトをはじめ「クライミング・ジム」とは書かず、ボルダリング教室、としてオープンします。

インストラクターがいて、それを教わる生徒さんがいる、という形です。

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ー教室、スクールを始めようと思ったきっかけは何ですか?

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最大の原因は「新型コロナウィルス」の影響です。

これまでもBOLZ(※佐藤さんが経営する既存店舗。宮城野区萩野町にある)では、子供たちに教えていたのですが、ほかのお店と同じように休業を余儀なくされました。

ボクの予想では、この状況が落ち着いたとしても、子供たちは戻ってこない、戻ってくるのは、趣味としていた大人のお客様だろうと思っていたのですが、結果は真逆だったんですよ。

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ーそうなんですね?

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はい、子供たちは外で満足に遊べない、体育の授業もこれまでのようにはいかなくなって、どんどん子供たちが運動から遠ざかっていたのです。実際、外で遊ぶのはダメという風潮でしたし。

でも、父兄の方々にしてみれば、子供たちが身体を動かさなくてもよい、というわけにはいかない。「どうにか子供たちに運動をさせたい」と悩んでいる声をキャッチしまして。

じゃあ、習い事だったらどうなんだろうか、いわゆる3密を避け、換気や衛生に気配りして、父兄の方々が「ここになら、まかせられる」という安心を用意したら、振り向いてくれるんじゃないか、という狙いはありました。

それから、これは新型コロナウィルスとは別なのですが、以前から、ちょっと疑問がありまして。

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ーどんなことですか?

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ほかのスポーツ、たとえばサッカーなんかのメジャースポーツでは、必ず指導者がいて子供たちを教えていますよね。クライミングはそれが徹底されていなくて。

「教える」が当たり前にならないと、いつまでたっても「娯楽」のままで、メジャースポーツにはならないと思うんですよ。

この考え方に賛同してくれている父兄、いま競技の最前線でがんばっている若い選手もいまして、他県からプライベートレッスンを受講してくれている方もいます。

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ー他県ですか?わざわざ県をまたいで?

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プライベートレッスンの場合、4回で1セットなのですが、初回は、ほぼカウンセリングなんですよ。
どういうことを教えてほしいのか、かなり時間をかけます。

こちらが教えたいことを押し付けて積み上げるのではなく、足りないピースを見つけてはめ込んでいくような感じですかね。

それは、中上級者やアスリート向けなのですが、とにかく「教える」を一般的なものとしたい、というのはあります。

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ー習い事としてボルダリングの良さは何でしょうか?

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男子と女子で傾向が変わると思います。

男子の場合、多いのが、団体競技が苦手、運動神経があまりよくない、1対1で争うスポーツが嫌い、という子が多いんです。

でも、父兄の方々は、何らかのスポーツはさせたいわけですよね。

ボルダリングの場合、争う相手はいなくて、あくまで自分と壁につくられた課題(登るコース)との戦いなんです。

それが出来るようになる、乗り越えられるようになることで、自信がついたり、自己肯定につながっていって、結果的に精神的な強さが身につきます。

もちろん、バランス感覚や体幹などのフィジカルも成長しますから、中学で部活に所属するとか、そういうところでも応用がききます。

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ー運動が苦手な子でも、うまくなりますか?

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ある程度のところまでは、必ずいけるようになります。

ただ、ものすごくうまくなったり、強くなれますか?と父兄の方々に聞かれることもあるのですが…

週1回のスクールでは無理です、とは答えています。

そこはウソは言えないので。

試合に出場して、日本のトップクラスで戦っている選手もいますけど、ものすごい日々を送っていますから。

【参考】BOLZに通う高校生、竹田創(たけだはじめ)選手の躍進にも佐藤さんが大きく関わっている。竹田選手はスポーツクライミング日本ユース代表で、世界各国の国際大会で表彰台に上っている。

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ー女子はどんな感じですか?

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ベースにあるのは、女子って男子ほど、スポーツの選択肢がないじゃないですか。

いまでこそ変わっているかもしれませんが、それでも、男子しかやらせてもらえないスポーツが多かったりして。

なので、運動大好き、パワーを発散させたい、という女の子が来ますね。

男子とは違った意味で集団行動が苦手だったり、好き勝手に動き回る子が多いです。
そこを変えていくのが、第一歩ですね。

だから、女子たちが集まると、本当に賑やかになりますよ(笑)。

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ースクールをやっていて嬉しい瞬間は、どんな時ですか?

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子供たち自身の成長も嬉しいのですが、いちばん嬉しい…それこそ涙が出るくらい嬉しいのは、父兄の方々が喜んでくれた時ですね。

お子さんたちの成長を実感してもらって、その声を聞いた時が、いちばん嬉しいです。

技術や体力が向上したというところもあるのですが、長く続けているお子さんの場合、自分に自信が持てたとか、内側の成長を喜んでくれているようです。

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ー佐藤さんは、もともとボルダリングの仕事に関わっていたのですか?

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いえ、もともとは空調工事をやるような建設業で働いていて、ボルダリングを楽しむ側として、市内のクライミング・ジムに通っていました。

だんだん仲間たちも出来始めた頃「自分たちが集まって好き勝手できるような場所が欲しい」という話で盛り上がって、「じゃあ、どこか手頃な倉庫でも借りようか」という程度の話だったんです。

そこから、だんだん「みんなの居場所が欲しい」という気持ちが強くなっていって。

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ークライミング・ジムをオープンするぞ、と…?

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でも、すぐに店を始めるぞ!という気にはならなかったんです。そもそも、現実的に出来るのかどうか、調べるところから始めました。

クライミング・ジムをやる、じゃなくて、まず個人事業主になるのはどうしたらいいのか、経営とは何か、経理とはどういうものか、こういうところからスタートしました。セミナーに行って勉強したりもしましたね。

それでダメだと思うなら計画は中止したらいいし、やったことは無駄にはならないだろう、と。

半年から1年くらい、そういうことをしていくうちに「成功するかどうかは分からないけど、これだったら自分でもスタートできそうだな」と思ったので、じゃあ真剣にやってみようかと気持ちを切り替えました。

ノートにびっしり書いたものを奥さんに見せて「そこまで真剣にやるなら、やっていいよ」と言われ、スタートしました。

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ー独立起業して良いことも沢山あると思うのですが、辛いことはありましたか?

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忙しいとか、身体がしんどいとか、そういう辛さはあるけど、そういうのじゃないですよね。つらいこと…ありますかね?

自分がやりたくて始めたことだから、つらいな、と思ったことはありませんね。

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ー新型コロナウィルスで休業や自粛を求められた頃、多くの事業主が不安や辛さを吐露していましたが…

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もちろん将来への不安がゼロじゃなかったか、というとそんなことはないわけですが、じゃあお客さんが来なくて空いた時間、何をしようか?とか。
何が出来るか、何をしていこうか?なんてことを考える時間に充てていました。

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ーその考える時間があったからこそ、中野栄での教室開業に繋がったわけですね…そろそろオープン間近ですが、手応えはありますか?

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問い合わせも多くなってきています。
11月1日~8日までは「無料体験(※要予約)」なので、この機会に体験してほしいと思います。

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ー誰でも大丈夫なんですか?

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何歳からじゃないとダメ、というのはありません。

やっと歩けるようになった小さな子供でも、本能的に登りたいというのがあるようなので。落ちた時、ちゃんとケアできるようにしておけば、そこは大丈夫だと思います。

これまで小中学生がメインだったのですが、もっと小さな園児向けのコースや、小さなお子さんがいるお母さん向けのコースもつくりました。

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ーお母さん向けですか?

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子育てしている方が出来るスポーツがなかなかないんですよね。
子供を預けられる人しか楽しめないのではなく、お子さんと一緒でも思い切り楽しんで欲しくてママベビコースをつくりました。

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ーいろいろな年齢層の方々に対応していますね。

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従来からクライミング・ジムに来る人達だけに目を向けていては、衰退するだけだと思うんです。

ボルズでクライミングを習った子供たちが、よそのあちこちのクライミング・ジムのお客さんになっていくことで、さらに人口も増えると思います。

人口が増えることでアスリートの原石も増えていく…そういうきっかけになれば、嬉しいです。

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ー佐藤さんにとって仕事とは何ですか?

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あらためて聞かれると難しいですね(笑)。
自己表現…の場ですかね?
自分が伝えたいこと、自分が目指すこと、自分が積み重ねた技術、知識をアウトプットして、そこに対価をいただく。

だから、すごく楽しいですし、ずっと楽しいです。

もちろん怖さもあるんですよね。

いつ潰れるか分からないわけですし…でも、本当に楽しくやらせてもらっています。

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ー最後に佐藤さんの宝物を教えて下さい。

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(迷いなく)娘ですね。もうすぐ3歳になるんですが、自分の命よりも大事です。

仕事に、と限定されたら…やっぱり人ですかね。

お客さんもそうですし、取引先の方々…自分が今まで関わってきた人たち…モノではないですね。

だって、モノの価値は誰かががつけたもので、それを宝物と思うのは違うと思うんですよ。やっぱり、自分で築いて、自分が関わった人たち、そういう人とのつながりが宝物ですね。

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熱血漢で、想いをストレートに熱く語る佐藤さん。

趣味や好きが高じて起業するケースは少なくないが、事業として冷静に分析してスタートする起業家は決して多いとはいえない。

クライミングはバランス感覚が大事、という話が出たのだが、ビジネスでもそれを見事に体現していた。

ボルダリング教室ボルズが、これからの地元クライミング業界に新しい風をもたらすことに期待したい。

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2020年11月1日開講の『ボルダリング教室ボルズ』の詳しい情報はこちらから。

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ひと:佐藤秀憲さん
しごと:クライミングジム・ボルダリング教室経営
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