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居場所。

「あなたにお願いしようと思います。」

そんな一言から、私のマネージャー生活は始まった。

私は、中学生の頃からずっとマネージャーに憧れを持っていた。
けれど、2歳の頃から熱中していた別の活動があり、一生マネージャーになることはないのだろうとどこか諦めていた。

大学がラストチャンスだと思った。
スポーツ経験ゼロ・部活動所属経験ゼロのあまりに無知な状態だけれど、挑戦してみようと一歩踏み出した。
今考えると、国を背負い戦う選手達が在籍する強豪チームと知らず、のこのこと応募した自分がとても怖い。

案の定、私は最悪なマネージャーだった。
ボールを拾っても選手の元へ届くように投げ返せない。
試合時は選手よりも緊張してテンパる。
大きな試合会場では迷子になり、選手に迎えに来てもらう。
ここでは語りきれない程のポンコツぶりで余計な仕事ばかり増やすマネージャーだった。
選手をサポートするどころか、選手に助けられ支えられてばかり。

こんな失敗ばかりの私を、選手はずっとずっと待ってくれていた。
練習後に何度もボールの投げ方を教えてくれた。ルールが難しいところは分かるまで説明してくれた。仕事に慣れるまで何度も一緒に準備してくれた。私ができるようになるまで、私のペースに合わせながらずっと支えてくれていた。

私はスポーツから 「素敵な居場所」 をもらった。
選手の為に役に立ちたい。チームの勝利に貢献したい。
スポーツを通じて出会えたこの想い。
その想いが私に特別な場所をくれた。

正直、最初はマネージャーの仕事に興味があっただけで選手と打ち解けることまで頭が回っていなかった。けれど、いつの間にか彼らの為なら自分を犠牲にしてまで頑張りたくなるほど、彼らが私の活力になっていた。
それはきっと、選手たちが私を必要としてくれていたから。私をチームの1人として、仲間として必要としてくれたから。

彼らは、いつの日か私に言った。

「マネージャーが居てくれるから、頑張れるんだ。」

「心配性な君でも安心してベンチに座って居られるように、絶対に不安を感じさせないくらい俺らが強くなるから。」

「絶対日本一のチームになる。必ずベンチから日本一の景色見せてあげるから、楽しみにしててね。」

彼らから贈られた数々の言葉から、私をいつもチームの一員として考えてくれているのが十分に伝わってくる。
その優しい気持ちに反動するように自然と私までも
「選手の為になる事は、全てやり遂げたい。」
「いつか選手に恩返しができるくらいの大きな存在になって、選手に楽しい日々を届けたい。」と奮闘するようになった。

私は、スポーツから「仲間を思い仲間の為に頑張ること」を教えてもらった。
そして仲間の為に励み続ければ、自然と自分の居場所ができることを知った。

私はスポーツから
「私の居場所」をもらったんだ。

今日も私は、新しい場所でいつか「私の居場所」をもらえるように懸命に走り続けている。

誰かのために頑張りたいと思う心、誰かに必要とされる喜び、仲間の努力が実った時に感じる感動。
きっとあの時1歩を踏み出さなかったら、チームの素晴らしさを知らずに生きていただろう。
一生、私のこの素敵な居場所は存在していなかっただろう。

彼らの近くで共に戦い学んだ日々が、今日の私を支えてくれている。

一生消えない大切な居場所。
あの時、私と選手を出会わせてくれたスポーツ。
苦しさも嬉しさも教えてくれたスポーツ。

心の底からありがとう。

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