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【読書記録】ようこそ、ヒュナム洞書店へ

「どうしよう、おもしろすぎる……」

読みながら何度も思った1冊。

ファン・ボルム著『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』の感想を綴ります。


書籍情報

『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』

著者 ファン・ボルム
訳者 牧野美加

韓国で25万部を突破した、心温まるベストセラー小説

ソウル市内の住宅街にできた「ヒュナム洞書店」。会社を辞めたヨンジュは、追いつめられたかのようにその店を立ち上げた。書店にやってくるのは、就活に失敗したアルバイトのバリスタ・ミンジュン、夫の愚痴をこぼすコーヒー業者のジミ、無気力な高校生ミンチョルとその母ミンチョルオンマ、ネットでブログが炎上した作家のスンウ……。
それぞれに悩みを抱えたふつうの人々が、今日もヒュナム洞書店で出会う。

新米女性書店主と店に集う人々の、本とささやかな毎日を描く。

あらすじと感想

頑張って努力して一生懸命に生きてきた登場人物たち。

彼らは走り続けてきた足を止めて、時間をかけてゆっくりと自分を見つめ直します。

書店に集う人々と関わり合いながら、少しずつ自分にとって良い生き方を見つけていく。
そんな物語。


完璧な人生なんてないけれど、
「これでいい」と思える今日はある

帯に書かれたこのフレーズに心を掴まれて手に取った小説。

登場人物もストーリーも文章も言葉も、とにかくすべてが愛おしいのです。

本書には、心が救われる優しい言葉たちが散りばめられています。

現代を生きるわたしたちの生き辛さ・もどかしさを代弁し、そっと寄り添ってくれるような。

物語を通して「もう少しゆっくりでいいんだよ」「立ち止まってもいいんだよ」と語りかけてくれているような。

そんな、温かくて優しい小説でした。

『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』を読んで感じたこと

時間をたっぷり費やすことこそ、贅沢

就活に失敗したバリスタのミンジュンのお話では、いろいろと感じるものがありました。

「今まで周りの期待に応え、一生懸命に努力して走り続けてきたのは何のためだったのか?」

「就職がうまくいかない今となっては全て無意味だったのか?」

これって本当にあるあるで、痛いほど気持ちがわかりました。

常にやるべきことに追われ、未来のための準備をする。”こうあるべき”とされる未来に向かって。

そうやって立ち止まることなく生きてきた人は多いのではないでしょうか?

だから自分のことがよくわからない。
自分のことを知る時間がないから。

ミンジュンはニート生活を通して、ゆっくりと自分を見つめ直していました。

  • するのが当たり前だったことから解放された生活

  • 期待や不安や焦りから解放された生活

  • 自然に身を任せて過ごす生活

ひとつの対象について時間をかけて考える、じっくり味わう。目的もなく。

それが、やがては自分自身を見つめることに繋がっていく。

自分が今生きている世界は「時間をかけること」が許されない。

たとえ時間があったとしても「何もしない」ことが許されない。

そんな気がします。

だからこそ、時にはペースを落としたり、立ち止まってみたり。

あえて「時間をかける」選択をすることが必要だなと感じました。

今、この瞬間を生きる

物語全体を通して「現在の幸せを大切にして生きよう」というメッセージが伝わってきました。

この世の中は、”頑張ること”がデフォルト。

では、なぜ頑張らないといけないのでしょうか?

頑張らなければ幸せになれない?
頑張ればいつか幸せになれる?

それって本当?

頑張っている今この時間が幸せじゃなくても?

じゃあ頑張れば手に入るその幸せって何なのでしょう。

当たり前のように頑張ってきた人生。
未来の自分のために、漠然と。

これからは、もっともっと”現在”を大切にして生きてみようと思いました。

心に残った文章たち

「こうすれば生きやすくなる」と言う人は、生きるのがつらいと感じている人。

そのつらさから解放されたくて、しきりに方法を考える。

生きることに耐える方法、この先生きていく方法を。


全人生を捧げたあとに「最高」という賛辞を贈られてどうするというのか。

何かを成し遂げて人生の最後に「幸福」を感じるために、自分の人生すべてを費やすなんて虚しい。


目標を下げればいい。
そもそも目標をなくせばいい。

その代わり、今日自分がやることに最善を尽くす。最善だけを考える。

コントロール可能な時間の中でだけ、過去・現在・未来について考える。
それより先のことを想像する必要はない。

まとめ

『ようこそ、ヒュナム洞書店』

何度も読み返したいお気に入りの1冊となりました。

  • 頑張り屋さんな人

  • なんだか疲れたな…と感じている人

  • 本・本屋さんが好きな人

こんな人におすすめしたい小説です。


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