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「やりたいことがない自分」から「他人のために動ける自分」へ〜家事代行を通して得た原動力とは〜



「この仕事を始めて、直接『ありがとう』といってもらえる機会が増えたことが一番嬉しい」

そう語るのは、家庭や子育て支援の現場で活躍する古畑日菜子さん。

全国家事代行サービス協会アワードで優秀社員賞受賞者として、彼女は今、家事代行サービスのNPO法人のチーフとして多くの家庭をサポートしている。生き生きとインタビューに答える彼女だが、過去は自らの役割や意義を模索する日々だった。


なにもやりたいことがなかった過去


調理専門学校を卒業したのち飲食店へ入職した古畑さんは、初めの頃は悶々とした日々だった。

「料理することが好きで飲食店で働いていましたが、何かが違うという気持ちばかり大きくなり、結局1年で辞めてしまった」と彼女は回顧する。


新たな門出のきっかけ

そんな彼女の人生は、ある方との出会いをきっかけに変わり始めた。

「当時はよくわからないからこそ動くぞ、という気持ちで、行ったことのない遠方の地域まで移動し、お手伝いをさせていただく経験をたくさんしました。その中で個人で家事代行サービスをされている方と出会ったんです」

その方との出会いが、彼女の未来を変えることとなった。

「その方との出会いがなければ、今の自分はいなかった」と古畑さんは感謝の気持ちを述べる。

「元々、家事代行サービスを知りませんでしたがその方の想いを聴き、この人だ!と思い、ぜひお手伝いしたいと思いました」

この新たな出会いを通じて彼女は家事代行サービスの真の意義を知ることとなり、その仕事を通じて社会に貢献する方向性を見つけたのである。

「特に印象的だったのは『家事代行は手段であって、目的は家庭支援、子育て支援だ』という話です」

古畑さんは、家事代行が単なる「家を綺麗にする」業務でないこと、家庭環境の改善や子育て支援といった更なる意義があることに気づかされる。 

「家事代行は家庭、子育てなどの環境を考え、子どもたちの生き抜く力を支援するものだと知りました」と彼女は語る。

「今の時代、家庭は共働きが増え、家事や育児の負担が重くなっています。その中で、家事代行は親のケアを重視しているんです」と彼女は指摘する。


家事代行から見えた社会問題と自分の役割

そこからは複雑な面持ちで続ける。

「子どもにとって学校へ行き、必要な教育を受けることは大事ですが、その前段階の家庭環境が整っていなければ、教育を受ける以前に、子どもの脳の発達や感情を育むことはできません。

さらに今の時代、少子高齢化問題や子育てに適した環境や整備が整っていない中、親は共働きをしている方がほとんどで、家事、育児、仕事に追われ、日々家庭は戦争状態なんです。

慌ただしい日常の中、子育てのハードルを高く感じる人が増えてきました。子どもを産みたいのに産めない、あるいはこの社会に子どもを生む勇気が出ない。家事代行は、そのような親御さんたちを心からサポートします。その結果、家族や大切な人とのふれあいの時間が増えるのです。家事代行を通じて、子どもたちの未来を明るくする方法は教育だけでなく、家庭のサポートも大切だと気づかされました。私は、それを実現するお手伝いをしたいと真剣に考えています。今の状況を少しでも良い方向に変えたいという想いがあるからです」


原動力は「相手に喜んでもらいたい」


古畑さんはその家事代行サービスの理念に共感し、活動を手伝いたいという想いから入職を決意。
仕事内容は料理、掃除といった日々の家事負担を減らす内容が主になる。
その中でも古畑さんは案件に対し人一倍立候補するようにしていたという。

「多くの家庭で日々家事に追われ、あれもしなきゃ、これもしなきゃと心のゆとりを持てない親が増えています。そこで私たちが家事を代行することで、親は時間にゆとりを持てます。
それがコーヒー1杯だけ飲めるゆとりだとしても、家族と過ごせる時間が増え、親御さんからとても喜んでもらえるんです」

そう語る古畑さんの原動力はなんなのか。

「誰かに直接喜んで貰えることが1番うれしいんだと思います。お金をもらえることもうれしいですけど、それよりお客さんから直接「本当にありがとう、助かったよ」みたいな言葉や気持ちがダイレクトに聞けることにやりがいを感じています。だから遠方でも躊躇なく移動できたし、楽しみながらお仕事できているんだと思います」

まさに天職ですね、という質問に対して満面の笑みを返し、食い気味に続ける。

「本当にそうなんです。仕事って感覚ではなく、本当に楽しみながらやれています。
個人で家事代行をされている方に『家事代行は誰にでもできる仕事だけど、誰しもができる訳ではない』と言われたことがあります。
たとえば、水周りの掃除が苦手な人もいるし、料理ができない人、お客さんとコミュニケーションをとることが苦手な人もいる。その中で私は運良くすべてがマッチした、という感じですね」

インタビュー中、「楽しい」のワードが何回も出てくるほど仕事にやりがいを感じている古畑さんですが、この現代において今の仕事に漠然とした不安や違和感を抱えている人もいるだろう。そんな人に対してどうあるべきか、以前の自分を重ねつつ教えてくれた。

「自分は何にやりがい、喜び、モチベーションが湧くのかを知ることが重要だと思います。それがわかってたら楽しめると思うし、可能性も多方面に広がっていきます。

自分が興味持った人はもちろん、そうでなくても色んな人に会いに行って、その人の仕事や生き方に対する想いを聞く。そこで自分と近しい人だったり、同じ想いを持った人とお手伝いでもいいから一緒にお仕事をする。私はそうして今の環境を掴むことができました」


仕事の原動力は「相手に喜んでもらうこと」

今後の目標は「家事代行を伝え、広めていくこと」


ここまで仕事に対するやりがいや想いをを語ってきた古畑さんですが、
今後、家事代行のチーフとして意識していくことはどんなことなのか。

「今携わらせて頂いているNPO法人の立ち上げからもうすぐ1年が経ち、新規のお客さんも増えてきています。そんな中もっと家事代行の認知度を広げていきたいと考えています。
たとえば掃除のやり方に関しても、以前は教えてもらう立場でしたが、これからは自分主体で新規スタッフやお客さんに理念を広く伝えていきたいです」

子育てに適した環境や制度が整っていない現代において、私たちができることとははなんなのか。古畑さんはまずはこの状況を『知る』ことが重要だと話す。

「家事、育児、介護といった無償労働が女性に偏る傾向は、日本は世界と比較しても異常です。その無償労働とされた労働にも必ず価値や対価は発生することを忘れないでほしいですし、そのために私たちがいます。家事代行という視点からご家族の良き相談相手として、ご家族を俯瞰して考え、今後もご家族間のコミュニケーションをサポートしていきます。」

満面の笑みを見せて、彼女は次の現場へと向かっていった。誰かのために動くことの重要性を語ってくれた古畑さんの活動は、現在も家庭環境に悩む親御さんの希望の光になっている。


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