池袋、赤い柱のメトロポリタン


ガタンガタンガタンガタンコツコツコッコッ。
階段の上から来た女性が平成を生きているみたいな格好で走っていた。ボーダーのTシャツは中学生2年生までおしゃれだと思っていた。最近また見るようになったから、お洒落の流行は繰り返す。
エスカレーターで地上階に到着して、チン!という音がしそうな勢いで飛び降りる。広がった空と高いビル。都会は空が青くない。白く霞んで、青みがかった灰色だ。それでも空は球体で、真昼のプラネタリウムみたい。
ビジネスマンの群れ。離れて歩いていても、群れは群れ。群像とはきっとこれを指す。
いかつい兄ちゃんが空気に喧嘩を売っている。ビジネスマンその2。灰色のスーツ。
ガタンゴトン。たくさんの荷物を抱えた女子高生。女子高生ブランド。私服学校だったから、女子高生ブランドの魔力に一度も浸ったことのない私は、それが羨ましい。当たり前のことだけど、女子高生ブランドは、女子高生の間しか発揮できない。世の中の女子高生は、女子高生ブランドを誇るべきだ。見せつけるべきだ。もちろん嫌なら強制はしない。でも、今しかできないって多分貴重だから、できる範囲で楽しんでおくことをおすすめする。
人とぶつかりそうになって「あっすみません」って言うたびに変ににやけてしまうのは、私が人が好きだからなのか。それとも、ただただ恥ずかしい人間だということを自分に隠すためなのか。パンプスが階段を降りるたびに平手打ちみたいな音を立てるから、いたたまれなくなってこっそり自分で「うるさいよ」ってツッコむ。ハリセンみたいと言ってもいい。とにかく靴ずれしながら歩かされている靴が痛いのだけど、踵から落ちる感覚が好き。そんな就職活動中の大学生。面接を終えて、田舎には存在しない大きな本屋で本を見ていたら、不意に悲しくなった。もっと読んでおけばよかった。こんなにたくさんの本があるのに、私には知らないことが多すぎた。

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