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カオスな創業期にPMを兼任する上で、最低限これだけは注力した、するべきだったこと5選

こちらの記事は、プロダクトづくりのための挑戦とその成功・失敗談を綴るアドベントカレンダー powered by プロダクト筋トレ Advent Calendar 2021 の20日目の記事です。

はじめに

トリニティ・テクノロジー株式会社 取締役CTOの大谷真史です。
今から約1年前の2020年10月、私達はトリニティ・テクノロジー株式会社を創業しました。
主にスマート家族信託という、高齢者の財産管理にまつわる社会課題を解決するためのサービスを提供しています。

さて、多くのスタートアップの創業期(0→1フェーズ)では、少人数で文字通りゼロからの立ち上げをヒト・モノ・カネがない状況で行わざるを得ないため、リーダー層は多くの役職を兼任せざるを得ない状況が続きます。

特にPMFするまでの過程においては、PMの採用難易度が非常に高いこともあってか、多忙なCXOが創業アイデアをプロダクトに反映すべくPMを兼任するケースが多く見られます。
私もCTO・PM業を柱に全社採用、マーケティング、さらにはオフィス移転PMなどを担当する慌ただしい1年を過ごしました。

ここ数年でPM界隈においてはさまざまなコミュニティ(例えばプロダクト筋トレなど!)の発達もあり、多様なフレームワーク・テンプレートが浸透してきていると感じています。

その反面、例えば創業期に最低限これはやろうね、これはまだやらなくてもいいよね、という判断も難しくなってきているとも思います。
きっと多くの人が多様なフレームワークの存在を認識しているものの、現実は時間がなかなか取れず、フォーカスすべき課題の選定に苦労されていると考えています。

そもそも必要なワークの選定・量・質は業界、業種、ビジネスモデル、ユーザーペルソナ、プロダクトのステージなどにより全く異なるものであり、標準化するのも難しいものだと思います。

そこで今回は創業から今日までの1年間を振り返り、
・創業時に兼任PMとして最低限これだけはしっかりやって良かったこと
・あるいはやるべきだったのにやらなくて失敗したこと
を5つピックアップして書いていきたいと思います。

1. プロダクトのCore / Whyを整理する(やって良かったこと)

プロダクトのCoreやWhyについてはこちらをいつも参考にさせて頂いています。

創業時アイデアはあくまで仮説であり、遠くまで旅をしてみないとどうしても見えない解がたくさんあるため、旅のスタートである創業期には一見ビジネスチャンスがゴロゴロと目の前に広がっているように思えます。
そのためあれもしたいこれもしたいと、意外と事業の軸や幅がブレやすい時期であると感じます。

なぜこの会社を作ったのか、どんな価値提供をしたいのか、辛い時も上手くいかない時も自分自身を含めチームを支えてくれるCoreやWhyは何か、を言語化する作業は足場を固める重要な作業のように思えます。

当社では全社的なMVVも含め、CoreやWhyを一通り整えるのに1年を要しました。
ずいぶん時間がかかってしまったのですが、上述の理由からやって良かったなと振り返って感じます。

参考までに弊社のCore・Whyから、一部だけを抜粋して以下に記載します。
当社では無理にステートメントとしてはまとめず、はじめて読む人も共通理解を持てるように文章としてまとめています。

Core→Whyから考えるのが適切かもしれませんが、当社では事業を通じて解決したい社会課題が明確に存在しているため、自然とWhy→Coreの流れで定義づけが進みました。

社会背景 (Why now? / 市場分析)
超⾼齢化社会の進展により、認知症患者数が2020年時点で630万人を超えており、2050年には1000万⼈に到達する見込みです。
認知症によって意思能⼒を喪失すると資産は凍結されるため、200兆円を超える資産が凍結リスクにさらされています。

資産の凍結は本人及び家族の家計を脅かすだけでなく、資産の流動性を大きく棄損することから日本経済にも大きな打撃となります。
膨大な資産を凍結から回避する法律制度として、2000年から成年後見制度がスタートしたものの、その使いにくさ・馴染みにくさから利用率は未だ認知症患者の4%にも満たない状況です。

そこで2016年あたりから「家族信託」という、家族の中で信託契約をし財産管理を任せる新たな手法が注目され始めました。
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ミッション
「ずっと安心」の世界をつくる

私たちはスマート家族信託を通じて、認知症高齢者1000万人時代の財産管理のインフラをつくり、お客様が世代を超えて「ずっと安心」できる世界の実現に向けて取り組んでいきます。

当社のCore・Whyについては、Company Deckにさらに詳しく記載しています。

2. ドメインエキスパートと考えを同期させる(やって良かったこと)

当社は家族信託のリーディングカンパニーとして、これまで数多くの家族信託の組成を行ってきました。
そのためPM視点では大変ありがたいことに、社会課題、事業環境、ユーザーペイン・ゲインなどに精通したドメインエキスパートが社内に多く存在します。

特に当社のようないわゆるVerticalなサービスにおいては、ドメインエキスパートとの議論を通じて、Why、Whatの多くは埋められると考えます。
ユーザーのペインを知り尽くしているドメインエキスパートと考えを同期させることで、初期仮説をテンポよく立てていくことができました。
想定ユーザーにも会いながら、複数のドメインエキスパートを自分に憑依させることでMVPの解像度が上がっていきました。

3. 捨てる前提でコードを設計する(失敗したこと)

0→1フェーズにおけるプロダクト開発の目的は、PMFするための手応えを獲得することだと考えています。

幾度かのPMFを乗り越えて見えてくるプロダクトの全体像と、ドメインエキスパートや想定ユーザーとの議論をベースに出来上がった初期仮説から生まれるプロダクトの間には、必ず大きな差分が存在します。

当社ではUIはある程度大きく変更することを前提にし、外部ライブラリを活用しながら開発したため、フロントエンドのビルド&スクラップを容易に行うことができました。

一方、根幹のバックエンドまであまりに大きく変更が加わることは想定しておらず、結果的にバックエンドのリファクタリング期間が想定より長く発生してしまいました。
ちなみに弊社は創業期であろうと "The best at this moment" を心がけ、資産の最大化・持続化のために積極的なリファクタや設計の見直しを推奨しています。

プロダクトのWhatが大きく変わり、またプロダクトチームも自分1人から10人超のチームへと大きく変わっていくことを見据え、多くのコードを捨てる覚悟を持って取り組むべきだったと振り返って思います(難しい!)。

4. 本当のMVPを早く出す(やって良かったこと)

どれだけ頭で分かっていても、何度下記のTweetを見ようとも、本当に「恥ずかしい」状態でMVPをローンチすることは難しいものです。

プロトタイプに使ったシンプルなデザインをそのまま流用し、仮説だらけのバックエンドを添えてリリースを迎えることは勇気が必要でした。
顧客・社内のリアクションから目を逸らす勇気を持ち、もっと時間があればカッコよくできるよ、こんな機能も実装できるよと言いたくなる自我を抑えて初期リリースを迎えました。

結果としては5ヶ月弱ほどでMVPのリリースを行い、多くのユーザーのインサイトを早い段階で回収し仮説検証できたため、良いトライだったのではと考えています。

MVPを出してしまえば、あとはインサイトを適切に集め、Fit & Refineを繰り返していく作業に集中できます。
当社の場合、幸い致命的な仮説の間違いはなく、MVPのインサイトから得られるアイデアや修正点活かしたPDCAサイクルに無事突入できています。

5. 権限委譲を喜んで進める(やって良かったこと / もっと進めていきたいこと)

多忙でカオスな創業期は特に、権限移譲によって仕事がなくなり暇になることなどありません。
権限移譲できるメンバーを採用し、採用できたポジションから積極的に権限移譲を進めました。

プロダクト開発においては、メインプロダクトのPMロールだけは手放していないものの、UX・UI / フロント・バックエンド・インフラのテックリードは全て権限移譲済みです。
自分でコードをガッツリと書いていた時期はMVPのリリースまででした。

MVP開発の傍らリファラル採用に注力した結果、過去に一緒に働いたことのある優秀なメンバーがたくさん当社に参画してくれたことが、この1年で最もインパクトが大きかったことかもしれません。
優秀なプロダクトチームのおかげで、(営業やファイナンスなど自分が出来ないことを除いて)他の多くの部門をカバーできています。

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以上、カオスな創業期にPMを兼任する上で、最低限これだけは注力した / するべきだったこと5選でした!

最後に、トリニティ・テクノロジー株式会社ではプロダクトチーム(PM・デザイナー・エンジニア)やビジネスサイドなど全方位で積極採用をしています。
よろしければ弊社採用ページもご覧ください。

権限移譲をまだまだしていきたい!
HPからのエントリーやTwitterのDMなど、どこからでも全職種でエントリーお待ちしております!^^

参考文献

2020年にしたプロダクト系図解まとめ
プロダクトマネジメントのすべて

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