マヂカルラブリーのネタが如何に「漫才」かを順序立てて説明する M-1グランプリ2020
1.優勝はマヂカルラブリー
壮絶な叩き合いの末、栄えある16代目王者に輝いたマヂカルラブリー。本当におめでとうございます。強敵に競り勝った薄氷の栄冠ではあるも、圧倒的に会場を沸かせたのは間違いありません。
最後の吊革ネタは、準決勝で一番観客を沸かせたネタで、おいでやすこがの1本目がそれに次いでウケていたことを鑑みるに、残るべきコンビが残ったという印象です。
2.漫才なのか
早速議論となっている「あれは漫才なのか」という問題について、順序立てて説明した上で、マヂカルラブリーが如何に素晴らしい「漫才」を披露したのかを解説していく。
話術の大会と思われている故の不毛な議論に終止符を打つべきだ。
3.そもそもの「漫才」とは
まず起源の話をすると、漫才とは複数人で行う芸事のことで、もともとは舞踊や演奏にルーツがある。したがって歌を歌ったり、楽器を弾いたり、踊りを踊ることも、正真正銘の漫才なのである。大会自体のルールにおいても楽器等の小道具が認められているのはそういった背景がある。
近代においては、言葉の掛け合いを楽しむ「しゃべくり漫才」が主流となっており、世間一般には王道としてカテゴライズされるのは間違いないのだが、漫才にも色々な種類があって、しゃべくるだけじゃないんだよ。ということを知って欲しい。
4.掛け合いをやっていない?
漫才じゃないという意見を持たれている方は、恐らく野田クリスタルが暴れているだけで、コンビ間のコンタクトが成立していないということだと思う。
しかし前述の通り、しゃべくるだけが漫才ではない。いうなればお互いの主張をぶつけ合って、そこで笑いが生まれることが漫才の醍醐味であるのだ。
その観点から、マヂカルラブリーはボケの動きとツッコミの声で、見事な掛け合いをやってのけている。ただ電車が揺れて転げ回っている一人芸を、見事に漫才までに昇華させ、成立させているのだ。
これを漫才と言わずに何と言おう。漫才ではないと感じた方に言いたい。これは「しゃべくり漫才」ではないだけで、「漫才」なのだ。
5.初めてのタイプじゃない
つまりしゃべくり漫才やコント漫才の様に、双方が会話をしなくても漫才として成立するのだ。そして現在乗りに乗っているコンビも、同じタイプの漫才で王座についてる。
勘の良い方はもうお分かりだろう。M-1グランプリ2018王者 霜降り明星も、手法としては会話のない掛け合いをしているのである。
ひとり芝居でボケまくるせいやはさながら動くフリップの様だ。粗品は間髪入れずに切れ味鋭いセンテンスで突っ込んでいく。
ボケとツッコミの間の会話はないが、漫才として成立している。
6.双方の違いとは
せいやが言葉を発する分、霜降り明星の方がより漫才に見えるかもしれないが、漫才の要素は同等だ。
少し異なるのはツッコミのベクトルだ。粗品はせいやのボケを上手くかみ砕いて、短い単語で観客に向けて言い放つ。対して村上はひたすらに野田に対して間違いを指摘しまくる。
もちろん粗品もせいやに話しかけるし、村上も観客に投げ掛けることもあるが、基本の方向が異なっている。
一方的に的確なタイミングでツッコミをすることは普通に会話の流れで行うよりも難しく、技術的に高い水準であることの証明である。おいでやす小田も同様だ。(霜降りはしゃべくりもできることは承知しております)
7.審査員の投票がおもしろい
最終決戦の投票結果は以下の通り
以下は全て妄想
今回の3組はいずれも爆笑を取っていたが、それでも会場の沸き方はマヂカルラブリーが飛びぬけていた。富沢・志らく・礼二はシンプルに面白かったマヂカルラブリーに投票したのだろう。松本・上沼は迷った挙句一本目の順位を考慮、また新しい可能性やエンタメ性に対して一票を投じたのかもしれない。
面白かったのはオール巨人とナイツ塙だ。単純に一番面白いと思った見取り図に投票したのだろうか。この二人はどうしても漫才に対する話芸への比重が高いように感じてならない。大滑りであれば話は別だが、ある程度の結果であれば、見取り図に投票する心づもりはあったのだと思う。他の五名は漫才以外への造詣も深い故、王道しゃべくり以外への理解もあるのだろうが、漫才一本への並々ならぬ情熱を持った二人は、どうしても王道を評価したかったのではないだろうか。
まとめ
M-1は漫才No.1決定戦だ。長々と語ったように、マヂカルラブリーはれっきとした漫才で優勝したのだ。
「つまらなかった」という感想は、各々の好みであるから否定しない。しかし「漫才じゃない」は明確に間違っている。
漫才じゃないと全否定する方は、運営側に申し立てをするなり、自分で小道具禁止、舞台で転げまわるの禁止なりのレギュレーションを設けたしゃべくり漫才No.1決定戦を開くなりして頑張って欲しい。
出場者前組が、今後活躍することを期待している。
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