M-1グランプリ2022 大会見どころ
いよいよ週末に迫ってきた漫才日本一決定戦。
18代目王者の栄冠に輝くのは誰なのか
1.準決勝までの感想
昨年2021年大会の記事で、正統派漫才が覇権を握る時代は終わったと述べた。今年の大会を見た限り、表現の幅は相変わらず広がり続けてはいるが、準決勝まで勝ち上がってきたコンビに関しては、例年通り確かな話術を持ち合わせる者たちが生き残ったというところだろう。また動きとワードのハイブリッドも少なくない。
一方で漫才の締めかた。「もうええわ」に類する綺麗な切り方をしないコンビが異様に多い。トレンドなのか、時間効率なのか、インパクトを重視しているのか。素人の私にはわからないが、とにかく今までにない傾向である。
漫才という生命体に、また何かの進化が起きていると考えると、背筋がゾクゾクしてくる。
また、今大会は大波乱という記事をよく目にするが、個人的には決してそんなことはない。確かに準決勝でのオズワルド敗退。準々決勝での見取り図/ランジャタイ/金属バット/その他ファイナリスト敗退など、有力視されたコンビの敗退は目立つのだが、そんなことは今に始まったことではない。
現に例年半数は決勝初進出のコンビばかりだ。ラストイヤーの芸人だって平気で落ちる。M-1はいつだって忖度しない。ただ面白いコンビが残り、注目コンビにもラストイヤー組にも過去ファイナリストにも冷徹だ。
2.「秩序」
私は昨年のファイナリストを「混沌」となぞらえた。
パッと見の目新しさ。衣装。
サンパチの存在がかろうじて漫才の大会であることを示唆している。
ランジャタイ/モグライダー/錦鯉/インディアンス
何かしら爆発してくれそうな起爆剤だらけのカオス大会だったとは今でも思う。
対して今大会。
小学生が一組混じっていることを除けば、見事に地味でどう見ても職業漫才師。そんなメンツが出そろっている。
見た目だけではない、全組確実におもしろいのであるが、明確にこいつらがハジける。と断言できるコンビがいない。逆にやらかして爆ぜて散りそうなコンビもいない。世間の認知は置いといて、ここまでどうなるか予想のつかない。誰がトロフィーを掲げるのか想像できない安定した大会は初めてではなかろうか。キャラクターを楽しまず、各コンビのネタの密度に注目したい。表現の仕方は別として、非常にまとまった技巧派だらけの大漫才大会の始まりだ。
3.打ち砕け吉本の牙城「タイタン&人力舎」
M-1グランプリは吉本主催の大会である。単純なお笑い芸人の数も吉本興業が圧倒的に多い。つまり単純に吉本芸人が優勝する可能性が圧倒的に高い。
第一回大会なんて、吉本の若手売名の為の大会であると思われていたほど。(超実力派の中川家の優勝。次年度に松竹芸能のますだおかだの優勝により、完全なるガチの大会であることが周知される)
母数の単純計算で吉本芸人の優勝が大多数であることは当然である。
過去の非吉本の優勝者は以下
2002 ますだおかだ(松竹芸能)
2004 アンタッチャブル(人力舎)
2007 サンドウィッチマン(当時フラッドファイヴ)
2021 錦鯉(SMA)
わずか4組。錦鯉は実に10大会ぶりの非吉本。加えて言うと非吉本の連覇は実例が無い。
事務所で棲み分けするのはナンセンスであるのは自覚している。ただ私はこじらせている重度のお笑い好きなので、シンプルにお許しいただきたい。
人力舎の真空ジェシカ。
下馬評でも優勝候補筆頭。
歴代最強との声も高いアンタッチャブル依頼の戴冠に期待したい。
タイタンのウエストランド、キュウ。9組中2組がタイタン。こんな世界線を誰が予想しただろうか。申し訳ないが、今回優勝を逸すれば、現在の戦力でタイタンが覇権を握ることは未来永劫無い。現役最高峰の漫才師「爆笑問題」のお膝元で漫才日本一の栄冠を他に譲っていいわけがない。
※筆者は爆笑問題を崇拝しています。タイタンが大好きです。
4.東西漫才の優劣および審査員交代がもたらす作用
9組の中で関西勢は4組。関東勢は5組。
※ここで言う関西勢は関西弁の漫才、関東勢はそれ以外を指す。
比率で言うとここ数年とは大差はない。この点はなるべく色んな角度の笑いを提供したいという審査員の判断基準もあると思う。
どんなに面白くてもランジャタイ9組では番組として成り立たない。
東西どちらが優勝するか、数的優位は無い。
一方で審査員構成はどうか。
昨年を最後に、重鎮である上沼恵美子とオール巨人が勇退した。
巨人師匠は引退理由を「僕らに理解できひんような漫才に、理解したような顔してよう審査できん」と述べた。
このコメントに私はとても感動した。なんと潔く、説得力があり、覚悟を秘めたコメントなのだろう。さりとて阪神巨人の漫才が色あせることはない。
本当に長期にわたり重責を担って頂き、ありがとうございました。これからは気を楽にニュージェネレーションの笑いを楽しんでください。
話が脱線し巨人師匠が死んだみたいになってしまったが、時を戻そう。
入れかわり審査を担うのは博多華丸大吉の大吉先生。そして女性芸人のレジェンド、山田邦子
大吉先生は審査員の実績もあり特筆することもない。
山田邦子もサプライズであるが、芸人としてのキャリアと実力、少し昔ではあるが圧倒的知名度と人気を鑑みれば、審査員として申し分ないと思う。どんな審査をしてくるか、大変楽しみである。
着目したいのはその東西比率だ。
7人の中で関東率が極めて高い。巨人上沼の関西の双璧が抜けたにも関わらず、穴を埋めたのは関東の重鎮だ。(大吉先生は福岡だが非関西として述べる)
例年の審査を見るとナイツ塙は若干正統派漫才への評価の比重が高めであるが、松本、礼二、富澤はある程度フレキシブル。志らく師匠に至っては奇抜な笑いを好む傾向にある。
大吉先生もどちらかと言えばフレキシブル。
山田邦子は漫才の論評をできる訳がなく、エンタメ性やシンプルな笑いの量、目新しさなどの観点を重視しそうだ。(調べたら邦子さん、最初は漫才だったんですね。失礼しました。)
つまり今大会は「正統派」「喋りが達者」という観点での評価を重視する面々ではないということだ。この点からコテコテの関西勢、特にさや香、カベポスターは実力十分であるがかなり厳しい戦いになると思われる。素人の浅い考えを嘲笑い、風穴を開けて優勝してくれる事を期待する。
5.終わりに
個々の魅力見どころは前日までにまた記事にする。
毎度のことで長々となったが、M-1は最新の大会が歴代最高であると確信している。
史上最高に安定した最高品質の今大会。誰がトロフィーを掲げるのか。今から目が離せない。
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