見出し画像

KOC2023感想と審査員寸評

1.優勝はサルゴリラ


16代目キングはいぶし銀の苦労人、最年長のサルゴリラが栄光をつかみ取りました。スコアが示す通り、拮抗した戦いの中、頭一つとびぬけた印象です。本当におめでとうございます。

2.拮抗とは。採点レンジの是非

 「トップバッターから点数が高い」「点差のレンジが狭すぎる」と思っている人は多いと思う。自分も毎度賞レースでやきもきしている1人だ。

 ただ最近、KOMに関してはこのくらい詰めてもいいんじゃないかと思えてきた。それは優勝の決定がファーストとファイナルの合計点数だからだ。

 点差が開けば開くほど、ファーストの首位が優勝することが濃厚になってくるし、緊張感も薄れていく。よほどロッチらなければ大丈夫という安堵感は、大会がダレることにつながってしまう。

3.合計点に関しての是非は

 では、そもそも合計点でチャンピオンを決めるのはどうか?ということに関しては、個人的には賛成。
 点数の合算は、より純粋に「上質な2本のネタ」の評価に値すると思う。漫才はある意味「面白いネタ」よりも「面白い人間」を見出す側面もある気がするのだが、色々な設定、キャラクター、演出を駆使するコントは一貫性・人間性よりも柔軟性・創造性が求められるのではないかと思う。そういう部分で、1本面白いコント。でなく2本の総合評価というのは真っ当な採点なのではなかろか。
 R-1は異種格闘技でそもそもが点数で相対的に評価することは難しい。M-1はある意味真にチャンピオンとしてふさわしいか、最終決戦でリセットして値踏みしているきらいもあるのかなと。

4.審査の傾向、リアリティ・イマジナリー

審査を批評するつもりはないが、東京03の飯塚さんがジグザグジギーのネタで「そんなわけないと思ってしまった」って評価したことに引っかかった。そんなこと言ってたら隣人とかもう評価に値しない感じになる気がするのだがどうなんだろう。と思って調べてみた採点は下記の通り。

発言の通り、日常から逸脱しすぎないコントを評価する傾向にある。ここまでポリシーに則って評価するのは清々しささえ感じる。「そんなわけない」無しで優勝できるコントをできるのが東京03くらいしかいないことも説得力マシマシでぐうの音も出ない。

5.各ネタの感想&審査員寸評

1.カゲヤマ 謝罪

完全に強化ロッチ(笑)。しかし既視感でもある。トップバッターで準優勝はあっぱれすぎる。今回の大会でダントツでばかばかしさに振り切っていた。あと最近気づいたのだが、裸をみせる芸人はすべからくムダ毛ケアしていて、プロだなと思う。
山内:くだらないネタ。ドラマ風で知的なネタを見れると期待した時間を返して欲しい。
松本:ある種ロッチの進化系。フジモンに見て欲しい。
秋山:コメディショー。体つきも面白い。

2.ニッポンの社長 空港へ行け

展開一辺倒でずっと笑いが続いたのが凄い。寄席と違って一般観客はグロやバイオレンスに引いてしまう傾向にあるが、かなりうけてた。出血の描写が無かったのも良かったのかも。
小峠:設定ありがちだがそのあと。辻からケツへ狂気の連鎖が良かった。普通は引くが
飯塚:めちゃくちゃなようでルールがしっかりしていたのでちゃんと見れた。
松本:二人の台本が一緒なのにト書きが違うようなやりとりが面白かった。
山内:カゲヤマの馬鹿っぽさの方が繰り返しのネタにおいては適していたと思った。

3.や団 演劇の稽古

当人たちは昨年よりどっしりした。と評していたことからか、なんとなくもったりした印象を受けたが、再度見返したら色々面白い箇所が散りばめられており、シンプルにすごいトリオだなと思った。大ボケ小ボケというより、ボケA/B/Cというか均等に笑いがおきてるのが独特な気がする。

飯塚:灰皿が変ったときにエスカレートせずしり込みする人間味が好き。
松本:普通なら一位だが前2組のインパクトが強い。
山内:1/2組目のパンチがすさまじく、しっかりしたネタだがインパクトが出番順で損した。

4.蛙亭 寿司ボーイ

秋山:この自由な設定で自由に広げられるのが凄い。いいスウェット

5.ジグザグジギー 市長

ファーストでは一番面白かった。このネタをチョイスしたのが策士だなと感激した。準決勝の審査員も、松ちゃんのリアクションを見たいというバイアスがかかるくらい決勝に残したくなるネタだと思う。客層を選ぶかなとも思ったがかなりウケてた。IPPON-GPの認知度も市民権を得ているのだなと。

飯塚:モデルが分かりやすい。最初のまじめなマニフェスト提示までは面白かったが、ナレーションがそんなわけないなと感じてしまった。
山内:フリップの出し方、芸人あるあるが面白かったが、あそこからもっと芸人あるあるが見たかった。

6.ゼンモンキー 縁結び神社

小峠:前半種明かしがあってから上り調子でなく、展開もありがちだった。
松本:4年目、一番ちゃんとしたコント、それだけに刺激は少なかった。今後に期待したいがヤザキが事件を起こしそう。

7.隣人 猿落語

生で見てたら1秒目から腹筋崩壊してた。顔隠してるのがかつてのモンスターエンジンやニッ社を想起させる。
秋山:一人を猿のコスプレで覆い隠すのは相当な決断。だからこそもっとばかばかしくなって受ける箇所が欲しかった。表情も封印されてる。
松本:チンパンジーはメイクよりこの方が絶対いい。落語家がチンパンジーになったところがピークでそこから下がったのが点数が伸び悩んだ要因。

8.ファイヤーサンダー 日本代表メンバー選出

今回一番応援してたコンビ。初手のボケが読めそうで読めないぎりぎりのラインがたまらない。公式チャンネルに上質なコントがたくさんあるのでぜひ見て頂きたい。けど5分だとちょっと時間あましてた気もする。。。
飯塚:つかみ、着眼点良かった。展開に結構引き込まれた。
秋山:最初全く予想つかなかった。顔もいちいちリアクションがいい。カゲヤマの爆発には到達しなかった。

9.サルゴリラ ルールマジック

演技力というよりも表現力/人間力と言えばいいのだろうか。圧倒的にコントを見た満足感があった。トップ通過は異論がないんじゃないかと思う。

山内:最初はありがちがたそこからの靴下ニンジンの派生にびっくりした。演技が面白過ぎて世界観に引き込まれた。
小峠:落ちずにぶっちぎった、マジックの本質も面白いが、途中の区役所行かなきゃ。家じゃ居場所が無い。で人間性が出てばかばかしさに深みがでた。

10.ラブレターズ 義母と隣人の間に

初手のシベリアンハスキー放し飼いがめっちゃ面白くて期待しただけに、その後の展開に直結しなくて少し残念だった。
松本:順番も可哀そうだった。ヅラじゃなくてサンバイザーなのがよかった。ごめんね~
飯塚:面白かったがピークで壁を叩いたとこと最後。ごめんね~

最終決戦1 ニッポンの社長 手術

プロや目の肥えたファンを笑わせに来ているなと思ったが、いかんせん決勝の観客はまずグロに引いて空気が重くなる傾向にある。薄暗さも煌々とした会場のギャップで重々しくなった気がする。
秋山:最初静かで大丈夫かなと思ったが、だんだんと出てくるアイテムが面白くなってハマってきて普通に笑ってた
小峠:気持ちの悪いコント。今日が全体的にパワー系の派手なネタが多く、最初暗転したとき大丈夫かなと思ったがその後全部のボケが当たって引き込まれていった。

最終決戦2 カゲヤマ

個人的にはダントツ面白かった。初手のボケに20秒近く溜める胆力。ワードも発生のトーンも素晴らしすぎてツボだった。
コントなのにほとんど棒立ちで進行していく(しかも佇まいも面白い)のもあまり見ないスタイルで斬新と感じた。

飯塚:凄いコントと思った。あんなにぶっ飛んだ人だけど仕事ができるって本当にいる気がしてきた。「僕はどうなるんですか」という普通の言葉をキラーフレーズにするのが凄かった。
山内:最初の机のうんこが後になればなるほど面白くなる時限爆弾のようなボケ。・
松本:実はうんこは最初の1回しか言っていない。いかに面白い一言だったかということ。

最終決戦3 サルゴリラ 魚

一つのワードを軸にしたネタは一発目に外すと相当厳しいと思っていたが、このネタはしつこく繰り返すことで笑いが増幅していくのが異質だった。
「魚」というややこしくないワードをややこしく使うという分かりやすいギャップに人間味を乗せて、単調さを感じさせないとてつもないコントだったと思う。「友達の魚、ご家族の(お)魚」と律儀なのも練り込まれてたかと。
山内:普段ならカゲヤマが優勝するレベルだが、サルゴリラが演技もネタも抜けてた。
山内:魚にハマってしまった
小峠:文句なしの優勝ネタ。
飯塚:最後まで魚で終わり切ったのが美しすぎた

5.おわりに

昨今、1本目に強いネタが来て2本目に逃げ切るという傾向にあった(最終に残る為に当然だけど)が、今回の3組は2本目もとてもレベルが高く、また一つこの大会が格調高いものになったと感じる。
サルゴリラは特にいろんなユニットコントでも面白くなりそうだし、もっと平場でパーソナルな所も見てみたいなとワクワクしている。
来年はファイヤーサンダーにリベンジして欲しいし、準決までに敗れた刺客たちが牙をむいてくるのだろう。
全ての出場者の今後の活躍が楽しみだ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?