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キングオブコント2021を見た感想

1.優勝は空気階段

史上最多3015組の中から14代目キングとなった空気階段。誰もが納得せざるを得ない圧勝であったと思います。本当におめでとうございます。一本目のネタは終始好きがなく、これぞコントと言える完成されたネタでした。また別の記事でこのコントの素晴らしさをご紹介したいと思います。

2.即席ユニットのエントリー解禁

今大会一番の大きな変革と言えば、即席コンビのエントリーが解禁されたことだろう。準決勝でも残った即席ユニットは、昨年のM-1で大きな爪痕をのこした「おいでやすこが」、王者シソンヌと大ブレイクを果たしたチョコレートプラネットのドリームユニット「チョコンヌ」、ベテラン二人の奇跡のコラボ「ヤギとひつじ」(見てみたかった笑)。結果的には敗退してしまったが、個人的にはコントは漫才よりも即席で相当面白いネタが出来上がる可能性が高いと思っていたため、期待の反面ただのお祭りにならないかという不安を孕んでいたが、蓋を開ければ順当に地盤を固めてきたメンツが残ったと言う印象だ。勝ち残れなかった即席ユニットのネタも、今後お茶の間で披露されることだろう。
※マンプクトリオもユニットでした。謹んでお詫び申し上げます。

3.審査員の大幅変更

もう一つの大きな変更点は、審査員の大幅変更だ。これは切望していたこともあり、大変嬉しい発表だった。誰とは言わないがほとんどの審査員がネタに関してまともに評することがなく、権威だけで座っているようなものだったので、松ちゃんを残しお茶の間でも人気のある歴代王者四人を採用したのは大成功だった。大会の格を落とすことなく全体的な若返りも成功し、どの角度から見ても批判されようがない最高の布陣であったと言える。

4.三冠なるか、マヂカルラブリー

個人的に一番注目していたことでもある。今大会は、M-1&R-1の2冠のコンビが2組も準決勝に残った。言わずもがな、「霜降り明星」と「マヂカルラブリー」だ。霜降りは最近コントにも注力していたし、マヂラブはKOCも取ると公言していただけに、どちらかが決勝に残ったらそれだけで大注目と期待していた。

5.大会に関する感想

・大会の進行は非常にスムーズだった。編集の手腕もあるのだろうが、やはり生番組での浜ちゃんの進行が圧倒的に上手いのだろう。

・もう一つは観客が非常に盛り上がっていた。各組が単純に水準が高いと言うことはあるのだろうが、それでもやりやすい空気だったのじゃないかと感じる。実際過去の大会を省みると、シンとする場面は少なくない。

・一番満足できたのは審査員の論評だ。どの審査員も端的に、的確に解説しており、視聴者が見てもわかりやすいし、私のようにお笑い好きが聞いても非常に興味深く面白かった。向こう数年は同じ審査員で全く問題ないのではないか。そして、コメントの中にも必ずひとボケ挟む松ちゃんは、やはりレベルが違うなと感じた。残りの審査員も、次回以降緊張がほぐれてそれぞれのユーモアを効かした審査をしてくれることだろう。

6.ネタへの感想 抜粋

・1.蛙亭「実験体NO.164」

1組目の一発目に観客にドン引きさせるほど悲鳴を上げさせてから、あそこまで笑いを取れるのは本当に驚いた。キャラクターの強さもさることながら、博士とホムンクルスの温度差を徐々に詰めていくストーリーに偏らせながら、ポイントポイントで笑いを確実にとっており、洗練されたネタと言う印象。トップでなければFinalに残れていなたのではと思うくらい面白かった。

・3.男性ブランコ「ボトルメール」

思い描いた女性とかけ離れた人が出てきた。と言う見た目で笑いを取りに来たんだろうと高を括っていたらそんなことに留まらず、まさかの関西弁で笑いをとるという変化球。さらに「好きだなぁ」「愛が止まらないなぁ」とポイントでたたみかけ、思い通りにしてやられた。コントなのに叙述トリックを見ているかのようで、自分の発想の外側をえぐられた。

・5.ニッポンの社長「バッティングセンター」

自分からぶつかってくる謎のおっちゃんにツボってしまい、途中まで腹がよじれるほど笑い続けてしまったが、左に移って自分で金入れてぶつかり始めたところで急に冷めてしまった。中央でもっと互いのやり取りを濃密にしてくれたら、テンポを落とさずに駆け抜けれたのかもしれない。オチも最高だっただけに残念だった。

・7.ニューヨーク「結婚式」

松本審査員と全く同じ感想だけど、コント漫才のようで、コントとしての面白さが見れなかったのが残念。「オッケーです!」が準決勝の会場ではハマって爆笑をさらったのだと思うが、決勝ではいまいち掴めなかったのだと思う。審査員へのクレームが一部ネットで批判されているようだが、舞台を降りてもしっかり笑いをとれたのはこのコンビだけ。また大会終了早々に公式チャンネルで、披露できなかった2本目のネタをアップしているあたり、ネタを出し惜しみせず、もっと強いネタ作ってリベンジしてやるぞ。と言う気概や自信も伝わってくる。平場も含めて芸人としてのレベルは頭ひとつ抜けていると思う。

・8.ザ・マミィ「この気持ちはなんだろうち」

日常を切り取ってエッジを効かせたような、一番簡潔でわかりやすい掴みだったと思う。ニッポンの社長同様に途中まで大爆笑だったが、中盤まで展開が往復で、少し飽きてしまった。後半の展開も笑いよりストーリーに重きを置いていたように感じ、ミュージカルにはあまり入り込めなかった。

・9.空気階段「火事」

文句なしのダントツ一位。ストーリーが停滞せず、かといって笑いをとぎらせることなく、動きもセンテンスも完璧に動いていた。このコンビだけが唯一照明の色使いを駆使しており、飛び抜けてクオリティが高かった。また別の記事で色々と凄さを語りたい。

・10.マヂカルラブリー「こっくりさん」

一番応援していただけに悔しかった。序盤の入りまでのタメからの一発目の大ボケは漫才同様に強烈な破壊力で爆笑したが、後半の失速で下位に沈んでしまったのは妥当と思う。振りを喋りで進めるあたりやっぱり、この2人はしっかり漫才師だなと。なにより掴みまでの速さも爆発力も構成力も、全てにおいて空気階段が一枚上手だった後では歯が立たなかった。だけどやっぱり好きなコンビだ。優勝するまで参加してほしい。

7.最後に

観客の湧き方を見ても、近年稀に見るハイレベルな戦いの中で、空気階段が圧倒的な力を見せたように感じる。順番やハマり方次第では、どの組もFinalに残れた可能性があるのではないだろうか。今までは出ただけでは売れっ子に慣れる保証はなく、現に引退解散をしている者も多くいるが、今回は全組とものし上がっていきそうな雰囲気がしてならない。

近年の笑いのレベルは向上する一方で、特に若い世代からの突き上げは凄まじい。今回は所謂ベテランの決勝進出はなかった。漫才と比べてもコントは特に若い芸人の独創性を強く感じる。R-1の流れもあり、近い将来KOCも芸歴制限がかかるかもしれないが、むしろ新しい笑いがたくさん見れるのではないかと楽しみだ。出場者全員のこれからの活躍を楽しみにしている。

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