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不可視のものを可視化する思想

昨日、学びの場で出会ったティモシー・モートン(Timothy Morton, 1968-)に関する記録note。(結論もまとめもありません、悪しからず)

ティモシー・モートン(Timothy Morton)って?

モートンはカント哲学を脱人間化し、物質が時間・空間を表出し人間も共物質的に存在すると考えることで、人間の感覚をはるかに超えた地球環境の危機に対応する思想に辿り着こうとする。モートンにとっては、不可視のものを可視化する思想としてのObject-Oriented-Ontologyこそが、地球温暖化や放射能汚染のように宇宙、生態圏、科学技術や人間社会の様々な要素が複雑に絡み合い、人間の感覚だけでは最早知覚することができない「ハイパーオブジェクト」の時代に対応する哲学なのである。


全文と引用元はこちら。

11.ティモシー・モートンの環境哲学
  
 ティモシー・モートン(Timothy Morton, 1968-)はイギリス・ロマン主義文学における食と表現の研究から次第に環境思想へと接近し、現在ではObject-Oriented-Ontologyの提唱者の一人として知られるようになった。キーツやシェリーを分析した『スパイスの詩学』 (2000年)で彼は、「いかにある特定の商品が比喩的言語を通して思想的に想像され、いかにある特定の比喩的言語や理論がその商品を通して思想的に想像されたか」を主題として追求した。(4)  そしてロマン主義の自然志向が近代社会への批判であるという考えは誤りであり、ロマン主義こそが資本主義のイデオロギーだと指摘した。しかし彼は、ロマン 主義文学は否定されるべきではなく、逆に資本主義を内包しているからこそ深く分析されるべきだと考える。なぜなら、現代の我々もまた新しい時代のロマン主 義を生きているからである。
モートンは 『自然なきエコロジー』(2007年)で文学の分析を離れ「自然」あるいは「場所」といった概念に関して批判的な考察を行った。彼の考えでは、近代の環境主義における「自然」は「それが実体であり、また象徴でもある」ものであり、それは「スパイス」同様ロマン主義的消費主義の言語なのである。(10)
 更に『エコロジーの思想』(2010年)で彼は「自然の否定としてのエコロジー」という考えをより一般的な思想として敷衍し、「不気味な他人」(strange-stranger)、「網の目」(mesh)そして「転位」(dislocation)と いったキーワードを用いてエコロジーの目的を「共生」であると宣言する。現代は二項対立的な背景と前景の関係が作る「世界」と「場所」の差異が消え、全て が網の目のように繋がったグーグルアースの時代であり、そこでは不気味な他人との関係構築が求められる。そうした要請に応える思想として彼はエコロジーを 再定義する。
 モートンは2013年に2冊の著作(『リアリズムの魔術』『ハイパーオブジェクト』)を刊行した。彼はこれらの著書でObject-Oriented-Ontologyの 哲学を全面的に展開している。カントは物質を現象と物自体を分け、あらゆる現象はアプリオリに時間・空間に規定されており、人は物自体に到達出来ないと考 えたが、モートンはカント哲学を脱人間化し、物質が時間・空間を表出し人間も共物質的に存在すると考えることで、人間の感覚をはるかに超えた地球環境の危機に対応する思想に辿り着こうとする。(224)モートンにとっては、不可視のものを可視化する思想としてのObject-Oriented-Ontologyこそが、地球温暖化や放射能汚染のように宇宙、生態圏、科学技術や人間社会の様々な要素が複雑に絡み合い、人間の感覚だけでは最早知覚することができない「ハイパーオブジェクト」の時代に対応する哲学なのである。

【参考文献】
Morton, Timothy
The Poetics of Spice: Romantic Consumption and the Exotic Cambridge UP, 2000. 282pp.
Cultures of Taste/Theories of Appetite Palgrave Macmillan, 2004. 288pp. (edited by Morton)
Ecology Without Nature: Rethinking Environmental Aesthetics Harvard UP, 2007. 249pp.
The Ecological Thought  Harvard University Press, 2010. 163pp.
Realist Magic Objects, Ontology, Causality Open Humanities Press, 2013. 223pp.
Hyperobjects: Phylosophy and Ecology after the End of the World Minnesota UP, 2013. 229pp.
(芳賀 浩一)
http://www.ses-japan.org/ecoc_themes/ecoc_theme11.htm



昨日の学びの場について

株式会社 eumoさんが主催するeumo Academy基礎講座 第6期、11講座だった。

【11講座目】9月22日(水):「essaiとしての“地域(環境)論”」~持続可能社会のためのre-volution~
講師: 竹本 吉輝 氏(株式会社トビムシ代表取締役)

eumoAcademyご受講者さんのnoteはこちら↓。

 僭越ながらぼく自身も第1期より『成人発達理論基礎講座』で講師を務めさせているが、今回の第6期では全ての講座に参加させていただき、全体の構成やストーリーを体感させていただいている。10/27には全ての講座を終了した後のフォローアップ講座も務めることになっている。

 第11講座のテーマは「essaiとしての“地域(環境)論”」~持続可能社会のためのre-volution~。”なぜ今、地域に関わっていく必要があるのか?”という問いに応えるような流れで、様々な具体的データや歴史や思想などの文脈を通して、竹本さんの本心から語られる2時間だった。

直面している状況を、どのように認知し、どのように関与(応答:response)するのか?。その応答が先延ばしにされるなら、irresponsibility(無責任)である。毀損された多元的な歴史や生命は蘇ることはない。

個人的には、全体のストーリーとして、そんな印象が色濃く残っている。

  今日のnote、ティモシー・モートン(Timothy Morton)は、講義の最初の10分程度にチラッとだけ出てきただけだけれど、僕自身の探求テーマにはとても関連する。



今朝のゆる〜い印象

ヒトの存在側から環境を観察する人間中心主義ではなく、物質の内在スペース(時空)側からヒトと環境を観察しようとするのが”Object-Oriented-Ontology”なのかも。物質側から観ると、通常の私たちの認知はどれだけ歪んでいるのだろうか。たとえば、真善美なんて、ただの甘〜い戯言なのかもしれん…



モートンが説く『新型コロナとの共生』


モートンの動画

幾つもあるうちのひとつの動画


IPCCの最新報告書の動画解説


IPCCとは?
”気候変動に関する政府間パネル(きこうへんどうにかんするせいふかんパネル、英語:Intergovernmental Panel on Climate Change、略称:IPCC)は、国際的な専門家でつくる、地球温暖化についての科学的な研究の収集、整理のための政府間機構である。学術的な機関であり、地球温暖化に関する最新の知見の評価を行い、対策技術や政策の実現性やその効果、それが無い場合の被害想定結果などに関する科学的知見の評価を提供している。数年おきに発行される「評価報告書」(Assessment Report)は地球温暖化に関する世界中の数千人の専門家の科学的知見を集約した報告書であり、国際政治および各国の政策に強い影響を与えつつある。”
引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/気候変動に関する政府間パネル

#気候変動 #IPCC の最新報告書を、江守副領域長が動画で解説!📺 https://youtu.be/dLgGSI0G2SA 「温暖化が人間の影響であることは疑う余地がない」など、14あるヘッドラインを一つずつわかりやすく、時にマニアックに(?)、執筆者の一人として独自目線で解説。報告書の全容が詳しくわかります!🐰ぐら

Posted by 国立環境研 対話オフィス on Tuesday, August 10, 2021


※ 以下は実践の際に役立つ書籍


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