2020/06/18 接触確認アプリ詐欺

【2020/06/18 接触確認アプリ詐欺】

※この話は今のところフィクションです。

N国政府は接触確認アプリをリリースした。

すでに接触確認アプリを出している諸外国では、さまざまな問題が持ち上がっていた。特に、個人の権利を尊重する欧州では、アプリの賛同者が半数を超えることはなく、実効性に大きな疑問がついて回っていた。そもそも個人情報が流出しないと限らないことに、不満も大きかった。

そういう中でN国もアプリをリリースした。
N国は、欧米とは違う方策でCOVID-19に対策を打ってきた。強制的な都市のロックダウンもなく、また、「接触8割減」という単なる努力目標をほとんど法律のような遵守事項に格上げした戦略は、世界に改めて名を轟かせることになった。

昔豊かだった凋落N国だけど、意外にやるな…

というところだろうか。

国民へのアプリの評判は、賛否の相混じる五分五分というところだろうか。

初日のダウンロードこそある程度好調だったものの、翌日からはあまり増えてこなかった。
そもそも自粛を続けている人にはそれほど意味がないツールだし、すでに活発に動いている人には、ありがた迷惑なツールでもあった。興味本位で、あるいは、会社や家族に強要されて渋々インストールするものの、積極的に使う気もしない…。そういう人が多かった。

そういうことも含めて、アプリが実際に警告を鳴らすことはほとんどなかった。

…1週間経つまでは。

アプリがあちこちで鳴り始めた。
電車の中ではいくつかのアプリのビープ音が共鳴し、大音響になることもあった。K町の一角も、またG町でも、ひっきりなしに鳴り始めた。

アラートの停止ボタンを押すやいなや、電話がかかってくる。

「あなたは陽性者の濃厚接触者です。直ちに検査代1万円を振り込んで下さい…」

何ともわかりやすい詐欺。

本当は笑い飛ばしていいのだけれど、人間は疑心暗鬼になる。

この電話はデタラメだけど、もしかして、本当に濃厚接触してるかも…なんせ、両隣の怪しい奴らではなく、俺にだけビープが鳴ったのだから…

男は昨日おとといの自分の行動を振り返る。
…おとといは仕事仲間と、そして昨日は大学の同級生か…。あんまり危なそうじゃないはずだけど…いや、彼らがその前に誰と会ってたかどうかは余り聞かなかった。もしかしたらもしかするかも…

…気にしてもきりがないので、男は考えるのをやめた。

その代わり、アプリはもう消しちゃおう。どうせ、鳴っても参考にならないなら、面倒なだけだから…

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となる気がするんだけど、どういうふうに普及を進めるんでしょう。

そこの作戦が見えていません。

2020/06/18 Die革命グループ主宰・医師 奥 真也

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