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書評:石川文康『カント入門』

カントの純粋理性批判を巡る最適な入門書

西欧の哲学者イマニュエル・カントについての入門書。
特にその著作『純粋理性批判』にフォーカスが当てられているのが特徴である。

カント自身の著作は非常に難解である。私の場合、『純粋理性批判』、『実践理性批判』、『道徳形而上学原論』、『永遠平和のために』を読んだが(全て岩波文庫)、はっきりいって前2つはほぼ理解不能であった。もはや「読んだことがあるという事実が欲しい」という衒学的欲求のみから根性で読破したに過ぎない。

なので、カントの著作そのものについては読書感想を述べることはできないのが現実である。私のカント理解は専ら本著のようなカント解説書と、大学時代に受講した西洋哲学の講義内容に依存している。

さて、本著であるが、カント入門書としては非常に読者にやさしい良書である。

広く浅く網羅的でありながら、やはりカント哲学と基底となる『純粋理性批判』については丁寧に解説されている(言うならば、「T」の字型(横に広く、ある一点においては深い、という意味の造語です)の模範的な解説)。

「カテゴリー」「アンチノミー(二律背反)」「物自体」といったカント哲学のキーワードを抑えるに留まらず、カント自身の思索上の変遷を表す「独断のまどろみ」「認識論のコペルニクス的転回」といった用語の解説も交えられており、カントが如何に思索したか、定点的にではなく思索が動的に変化していく様子がよく伝わる紹介となっている。

ではこうした入門書を読んだ後なら『純粋理性批判』を読むとスラスラ読めるのかというと、残念ながらそんなことはないのだが・・(私が証拠)。

読了難易度:★☆☆☆☆
読みやすさ度:★★★☆☆
ポイント押さえ度:★★★★☆
トータルオススメ度:★★★★☆

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