AIは試合を見なくても才能を見分けられる?
世界中で毎日のようにサッカーの試合が行われ、「早く見なきゃ」「また見れなかった」という妙なプレッシャーを感じることはないでしょうか。
プロのスカウトにも、同じ悩みがあるようです。
ライバルクラブを出し抜いて掘り出し物を見つけようと思ったら、マニアックな国のリーグを見る必要がある。自国の2部やU19も当然ながらチェックしなければならない。
スタッフ十数人で分担しても、とてもチェックし切れません。だからこそ小さなクラブがビッグクラブを出し抜く、一発逆転のチャンスがあるとも言えるのですが。
そんな課題を解決するために、ある分析会社が新しい手法を開発しました。
その会社とは「SciSports」。AIを使ってデパイにリヨン移籍をアドバイスしたあの会社です(前回の投稿を参照)。
サッカー界ではいかに細かいデータを取るかの競争になっていますが、「SciSports」はあえて発想を逆転します。試合中のプレーは一切追わず、シンプルな基本データのみに注目したらどうかと考えたのです。
基本データとは次の6つです。
・先発メンバー(ポジション情報含む)
・ベンチメンバー
・試合のタイプ(リーグ戦、カップ戦、国際試合など)
・そのコンペティションのレベル
・スコア
・出場分数
彼らはこれらのデータだけで選手の能力値(SciSkill)を導けると仮定し、過去のデータから機械学習を行い、独自のモデルを構築しました。
彼らのモデルにおいて、各選手の能力値(SciSkill)は次のように計算されます。
(写真:SciSportsの公式ページより)
1) 試合のメンバーが発表されたら、両チームの選手の能力値(SciSkill)をもとに試合結果を予測。
2) 試合後、実際のスコアと予測との差をもとに、両チームの選手に攻撃ポイントと守備ポイントを(ポジションを考慮して)分配し、各選手の能力値(SciSkill)を更新する。
たとえばAとBが対戦したとしましょう。モデルの予測が2対1で実際は3対1だったら、Aの出場選手の攻撃ポイントを加点し、Bの出場選手の守備ポイントを減点。それをもとに最新のSciSkillを導き出します。
上に書いたように、選手がどんなプレーをしたかは一切考慮されていません。大雑把に言えば、「誰が先発で、何分出たか」しか見ません。 にもかかわらず、このモデルはブックメーカーの予測より試合結果を当てられるというのです。つまりはモデルで計算された能力値(SciSkill)はアテになる——というのが同社のロジックです。
すでに多くのクラブが導入しており、リヨン、アヤックス、バーゼル、フランクフルト、ボルフスブルク、パーダーボーンなど50クラブが使っています。
スカウトたちは今までのように自分が担当するリーグを見つつ、同時に「SciSkill」が高い選手がいたら追加で映像をチェックする、という使い方をしているようです。「無駄撃ち」を減らすのに役立てているわけです。
同社は多くのリーグで選手の能力値(SciSkill)を集めて機械学習を行い、「選手が将来どんな成長曲線を描くか」を予測することにも挑戦し始めました。
(写真:SciSportsの公式ページより)
この選手はこれだけ伸びて、何歳にピークが来る——ということが予測できると。
数年後、サッカーの評価法が激変している・・・かも。
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