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なぜ日本人選手はドイツで成功できたのか? ある代理人の功績

漫画「フットボールアルケミスト」の主人公・先崎のモデルはいるんですか?

よく聞かれるのですが、主人公・先崎はいろんな代理人のダークサイドをぎゅっと集めて1人にした人物になっております。

なので特定のモデルはいません。日本の代理人の方たちから「あの人がモデルでしょ?」と詮索されることはよくありますが(笑)。

ただ、第2巻から登場する先崎のライバル、ドイツ人代理人のラルフ・シュバルツには人物設定を考えるうえで参考にした人物がいます。

ドイツサッカーに詳しい方なら、すぐにピンとくるんじゃないでしょうか。日独移籍の第一人者、トーマス・クロートさんです。

誤解がないように先に言いますと、「フットボールアルケミスト」はフィクションです。作品中にいろんな裏話が出てきますが、実際の人物や団体とは一切関係がありません。

グレーな話は「フットボールアルケミスト」に存分に出てくるので、今回はいかに代理人が選手の助けになるかを書いてみたいと思います。

1人の代理人がドイツ移籍を開拓した

なぜ多くの日本人がドイツで活躍してきたのか? 

Jリーグのレベルアップに加えて「規律を好む国民性が似ている」、「年俸が安くてお買い得」といった理由もありますが、最大の理由は「ドイツで3本の指に入る代理人」、トーマス・クロートさんの仲介だと思います。

クロートさんが初めて日本人移籍に携わったのは2003年1月、高原直泰のハンブルガーSV入団でした。

クロートさんはドイツ代表経験もある元プロ選手。ケルン時代に奥寺康彦氏(日本初のプロ選手)とチームメイトでした。奥寺氏が解説者を務めるWOWOWが高原選手にクロートを紹介し、日本サッカーの新たな扉が開きました。

かつての仲間に日本人選手を推薦

クロートさんの元チームメイトたちは、各クラブで監督やスポーツディレクターになっています。クロートさんはそのツテを生かし、日本人選手をドイツの各クラブに推薦。監督やスポーツディレクターとしても、かつての仲間の情報なので信用できますよね。つまりクロートさんが「スカウト」の役割を果たしたわけです。

その結果、長谷部誠、香川真司、内田篤人、岡崎慎司、酒井高徳、清武弘嗣らが次々にドイツへ羽ばたいて行きました。 

監督に気に入られるためのアドバイス

移籍後のサポートにも抜かりがありません。

クロートさんは監督の性格を熟知しており、どうすれば気に入られるかをわかっている。

たとえば長谷部選手がボルフスブルク時代、「日本代表から戻った日にどんなに疲れていても、練習場に行ってピッチを走る姿を監督に見せろ」とアドバイスしました。当時のボルフスブルクのマガト監督は、頑張る選手を評価するタイプだったからです。

チーム内に味方をつくってくれる

また、クロートさんの事務所はドイツ人選手を多く抱えている。そこで日本人選手が移籍する際は、「うちの選手が入団するから助けてあげて」と彼らにお願いしました。

長谷部選手がボルフスブルクに加入したときには副キャプテンのリーターが、内田選手がシャルケに加入したときにはGKノイアーがサポート役になってくれた。ロッカールームで話しかけてくれる人がいるのといないのとでは大違いですよね。

この道先案内人がいなかったら、Jリーガーのドイツ進出は大幅に遅れていたでしょう。

*第3巻が今日発売になりました!


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