見出し画像

幽刃の軌跡 #31

第31話: 「影天の密命」

平場国西部での軍国会議が終わった直後、総大将は静かに席を立ち、影天部隊の隊員たちを招き入れた。会議場は重厚な沈黙に包まれ、闇に紛れるように姿を現したのは、影天部隊の精鋭たち。黒装束に身を包み、冷徹な表情で総大将を見つめる彼らの姿は、まさに影に生きる者たちそのものであった。


総大将:

「見ておったか…どうや? あの中に怪しい人間はいるか?」


影天部隊隊員1:

「いいえ、まだ明確にはわかりません。しかし、やはり七番隊長の吉常が…」


影天部隊隊員2:

「そうですね。私も潜入しておりますが、彼の強硬的な侵略策はますます現実的になりつつあります。」


総大将は、微かに息を吐いた。その目は、遠くを見据えるように険しい光を宿していた。


総大将:

「やはりな…(短い沈黙)…新たなる指令を発動する。フォーマンセル(4人一組)で動け。一番隊から四番隊の内部調査を行うチームと、五番隊から八番隊を調査するチームに再編成せよ。そして、軍の内部実態を徹底的に洗い出せ!」


その命令に、影天部隊の全員が無言で深く一礼した。


影天部隊全員:

「御意!」


影天部隊は素早く散開し、闇に紛れて姿を消した。彼らの動きは無音であり、次に会う時にはさらなる情報がもたらされるであろう。


数日後: 藤原真彦の特別室

数日後、藤原真彦は豪華な特別室に佇んでいた。豪華な装飾に囲まれたその部屋の中で、彼は深く考え込んでいた。外には西国の雄大な風景が広がっているが、その視線は内向きに向けられていた。彼の隣には、一人の若き隊員がいた。


真彦:

「そうゆうことか…事態が悪化しなければよいが…平家は確かにこの国の内情しか見ていない。それは事実だ。しかし、今は大和や九国の情報がほとんどないまま動くのは愚策だ。真男の判断も理解できるが…一方で、九国にスパイがいるというのが事実であれば、話は変わる。どう思う?尊。」


尊:

「その真相を明らかにするために、私と他3名でフォーマンセルを組み、西部守護部隊の内部調査を行います。」


尊は冷静で沈着だが、その目には決意が宿っていた。彼は既に動き出す準備を整えていた。


真彦:

「東部四部隊の構成はどうなっている?」


尊:

「琴太を中心に、影天部隊副隊長である篠原副官が指揮を執ります。」


真彦:

「彼がいるなら安心だな…」


真彦の声には、篠原副官への強い信頼が感じられた。彼はあくまでも冷静に状況を見極め、最適な手を打つ男だ。


西部第七番隊の駐屯地

一方、数日が過ぎ、平場国西部第七番隊の駐屯地では日常が続いていた。兵士たちは疲労感を漂わせながらも、厳しい訓練に耐えていた。演習場の隅で、数人の隊員が軽い雑談を交わしている。


隊員1:

「今日も疲れたわー...」


隊員2:

「毎日毎日…戦もないのに本格的な演習ばっかりはきついな…」


隊員1:

「うちの隊がこの平場部隊のなかでも一番武闘派って有名やしな…」


隊員2:

「まあ、今一番勢いのある隊長やからしかたないわ…」


しかし、その会話に不穏な影が差し込む。潜入している影天部隊の一員が、静かに話題を転換する。


隊員3(影天部隊潜入者):

「それにしても最近、隊長が隣国に仕掛けるとか仕掛けんとか、聞いてないですか?」


隊員2:

「それはお前…口にすんな…だれが聞いてるかわからんぞ。」


隊員1:

「でも…御上の承諾とか取らんって言いだしてるのは事実やろ…」


突然、厳しい声が響く。


弁景(低い声):

「お前ら!!なんかまたしょーもない話してないか?」


その声の主は、第七番隊副隊長の奥洲弁景(おくすの べんけい)であった。彼の目は冷たく、強烈な圧を放っていた。


隊員1:

「すみません…副隊長…」


弁景:

「若に関してのあることないこと、まだ決まってない内容について口にする者は、明日の演習で敵役してもらうけど、まだ話しますか?」


隊員たちは顔色を失い、即座に謝罪する。


隊員1・2:

「いえ、すみません!!!!!!!!!!!」


弁景は目を細め、影天部隊の潜入者に冷たい視線を送る。


弁景:

「お前は?」


隊員3(影天部隊潜入者):

「すみません…慎みます…」


隊員たちは弁景の圧に屈し、場の空気は一瞬にして緊迫感を増した。


その時、背後から七番隊長である吉常が現れる。彼の目は冷たく鋭いが、その唇に僅かに笑みが浮かぶ。


吉常:

「そろそろかもな……」


弁景:

「ですな……」


謎めいた言葉を残し、二人は影天部隊の潜入者を尻目に静かにその場を去った。その背中には、何か大きな動きが迫っていることを示唆するかのような、暗い影が漂っていた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?