幽刃の軌跡 #36
36話「平場の乱:開戦」
真男「霊域解放……………氷焔剣舞(ひえんけんぶ)!!!!」
総大将である真男の霊域が解放され、青白い炎の剣が室内を凍りつける。彼の怒りと共に冷気が広がる中、影天部隊の三名、熊谷景虎、篠原景秋、そして奥洲弁景が真男のもとへ駆け込んだ。
熊谷景虎(影天部隊長)
「総大将!!落ち着いてください!!」
三人は真男を取り囲むようにして、剣を構えた彼を制止しようとする。しかし、真男は憤怒の眼差しで三人を睨みつけた。
真男
「なぜお前らがいる!?よりにもよって、弁景!!お前まで!!!!!」
奥洲弁景(元影天部隊長)
「総大将……いえ、真男様……牛若隊長は白です。私が断言します!」
真男
「ふざけるな!!全員打ち首じゃ!!!!!!」
真男の剣から放たれる冷気が強まり、室内の温度が急速に下がっていく。彼の暴走を察知した影天部隊の三名は、すぐに動き出した。
篠原景秋(副隊長)
「総大将の霊域が暴走する前に……」
熊谷景虎(影天部隊長)
「影遁術、発動準備!!」
三人は迅速に印を結び、漆黒の霊気が彼らの周りに渦巻く。
熊谷景虎
「今だ、転移術式を発動するぞ!」
篠原景秋
「心得た!」
奥洲弁景
「影遁裂界陣(えんとんれっかいじん)、展開!!」
暗闇の裂け目が空間に現れ、真男を包み込む。次第に真男と三名の姿が消え、霊域の暴走が鎮められた。
真男たちが消えると、会議室内には不気味な静けさが戻った。しかし、その静寂は長く続かず、突然、嘲笑が響き渡る。
――――クスッ……フフフフ……――――
振り返った部隊長たちの視線の先には、二人の「朝光」が立っていた。彼らは全く同じ姿をしているが、霊力を見極めようとしてもどちらが本物か見分けがつかない。
藤原綾香(四番隊長)
「なぜ、朝光様が……二人……?」
彼女の震える声が会議室の静寂を破る。眼前にいる二人の「朝光」の姿は全く同じだった。背格好、装い、霊力までもが瓜二つである。しかし、その片方の笑いには、底知れぬ冷酷さが漂っていた。
牛若(六番隊長)
「ようやく、尻尾を出したか……お前は……九国のスパイだな?」
朝光本人
「この時を待っておったのじゃ!!」
その瞬間、もう一人の朝光から霊力とは異なる禍々しい力が迸り、会議室全体が異様な空気に包まれた。突如、彼は手を天に掲げ、鋭い声で術を発動する。
もう一人の朝光(九国スパイ)
「森羅万象……………無尽封域(むじんふういき)……………!!」
空間がひび割れ、異次元の壁が会議室全体を覆った。その結界は異様に厚く、触れたものすべてを拒絶する。まるで鋼鉄の牢獄が一瞬にして生成されたかのようだった。
平琳守(二番隊長)
「……っこれは……噂には聞いていたけど……九国式の……霊域解放か……!!」
彼の声には明らかな動揺が混じっていた。九国の出雲族が使うとされる「森羅万象」の術法……霊域とは異なる力で生み出された結界に、全員が戦慄を覚えていた。
真彦
「綾香!!明清!!増援を呼べ!!すぐにだ!!」
藤原明清(六番隊長)
「駄目です……外に出られません……この結界、強力すぎる……」
平茂道(五番隊長)
「そんなことはさせん!!わしが破ってみせる!!霊域解放!!地震の巨槌(じしんのきょつい)!!!!」
茂道が地面を強烈に打ちつけ、巨大な槌が結界に衝撃を与えた。しかし、何の変化もない。まるで岩を叩いたかのように結界はびくともしなかった。
朝光本人
「あっははは……無駄な事しなさんな。茂道殿」
部隊長たちは驚愕し、無力感に包まれたが、その時、牛若が静かに前へと歩み出た。
牛若(六番隊長)
「霊域解放……………漆黒駿影(しっこくしゅんえい)!!!!!」
牛若の霊域が解放され、暗黒の霊馬がその場に現れた。霊馬は室内を疾風のごとく駆け巡り、その黒い影が結界に新たな波紋を生じさせる。
朝光本人
「決着をつけようか、牛若!!……霊域解放…………朝陽の鎧(ちょうようのよろい)!!!!」
朝光は霊域を解放し、輝かしい太陽のような鎧を纏った。その光は結界の内部で輝きを放ち、牛若の漆黒の霊馬と対峙する。
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