幽刃の軌跡 #27
第27話「平安国将軍!!」
明菜が振り向くと、瀬戸内海上から突如として猛スピードで現れた一人の剣士が、刀を構えたまま彼女に迫ってきていた。その男は四国軍のエース、平琴太(たいらの ことた)。金色に輝くその刃は、まるで空気を切り裂くように彼女を狙っていた。
「明菜殿!!!危ない!!!!」
那須がその動きを察知したが、反応が遅すぎた。明菜自身もその動きに気づいたが、既に避ける間もなく、琴太の太刀が彼女に振り下ろされる。間一髪――その瞬間、閃光のような何かが二人の間に現れた。
「霊域解放…草薙天雷(くさなぎてんらい)!!」
雷鳴のごとき声と共に、源尊(みなもと たける)が琴太の攻撃を受け止めた。金属がぶつかり合う音が轟き、火花が散る。源尊の持つ草薙の剣は、琴太の黄金の刃をしっかりと防ぎ、二人の力が拮抗する瞬間が続いた。
「よかった...間に合いました。明菜様、状況はすべて把握しております。この場は私にお任せ下さい。」
源尊は明菜に向けて静かに言った。その眼差しは冷静そのもの。彼の登場により、明菜は安堵の息を漏らした。
「源将軍...ありがとうございます。助かりました。あなたがいれば安心です。」
明菜は源尊の頼もしさに感謝しながら、彼に全てを委ねる決意を固めた。
「那須殿、明菜様を頼む。わが軍の背後に下がれ。そして、第四軍は第一軍の援護を!」
源尊は迅速に指示を飛ばし、平安軍全体に向けて士気を高めていく。これまでの混乱を払拭するかのように、彼の命令が次々に実行されていく。那須は深く頭を下げ、即座に行動に移った。
「御意!!」
竜馬・大森の襲撃、そして天狗の暴動によって乱れていた戦場は、源尊の登場と指揮により、再び平安軍が統制を取り戻していく。その空気が変わったことに、琴太もすぐに気づいた。
「お久しぶりやな。尊殿。」
琴太は、攻撃を一時止め、にやりと笑って源尊に語りかけた。二人の間には明確な因縁が存在していた。
「いつぶりやろか。20年は経つか…平家がまだこの平安を納めていた頃やな。」
琴太の言葉には、過去の記憶が滲んでいた。かつて、源尊と琴太は同じ戦場に立ち、同じ時代を過ごしていた。だが、時が流れ、立場が変わった今、再び敵として相まみえることとなった。
「その頃のことはもう関係ない…お前が今、平安に仇なす敵であることには変わりない。」
源尊の冷たい言葉に、琴太は微笑みを深めた。
「それはそうやな…なら、次は本気でいかせてもらうで。霊域…解放!金刀比羅の刃(ことひらのやいば)!!」
琴太の言葉と共に、その体から黄金の光が溢れ出し、巨大な烏天狗の姿が背後に顕現した。その力はまさに四国軍のエースに相応しい圧倒的なものだった。
「源将軍、頼みます…」
明菜が呟くように声を出す。その目には戦士としての覚悟と、信頼が込められていた。
源尊は微動だにせず、琴太に対峙し、静かに草薙の剣を構えた。そして次の瞬間、二人の間に再び火花が散り、激しい戦いの幕が開ける。
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