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ノースキルだった私がRecursionを創業するまでの物語

私の経歴やアメリカでの出来事を交えながら、コンピュータサイエンスをオンラインで学習できるプラットフォーム「Recursion」を起業するまでの経緯を記事にまとめました。

まずは大学生活まで遡ります。

大学時代、初めてのプログラミングとの出会い

私がプログラミングに初めて出会ったのは、大学1年生の時でした。当時は経済学部専攻だったのですが、必修科目としてC言語を学ぶことになりました。当時は2013年で、大学が田舎にあったこともあり、今ほどプログラミングブームが広がっていませんでした。また、「プログラマー=オタク」というイメージがあり、正直全く興味がありませんでした。C言語の勉強も、まったく楽しく感じることはありませんでした。当時の私にとっては、シリコンバレーも単なる聞きかじりの言葉に過ぎませんでした。

その授業が終わってから、大学卒業までの間、私は一切プログラミングに触れることはありませんでした。当時は、プログラミングに対してまったく興味がない学問だったのです。

大学卒業、そして就職。

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大学卒業後、私は東京に移り住んでメーカーに就職しました。しかし、入社してから3ヶ月ほどで、これではスキルを持たない人材になってしまうかもしれないと焦りを感じ、英語の勉強を始めました。私は以前は意識が低い人間でしたが、この頃から徐々に変わり始めたと思います。そして、「アメリカでもっと経験を積もう」という安易な考えから、親や友人に反対されながらも、たった7〜8ヶ月で入社した会社を辞め、アメリカに渡る決心をしました。

この頃から、外国人の友人との交流が増え、彼らとの会話の中で「コンピュータサイエンス」という言葉を聞くようになりました。当時私は中身を理解していませんでしたが、「カリフォルニア大学」と「シンガポール国立大学」でコンピュータサイエンスという科目が勉強できることを知りました。

スキルゼロでアメリカへ

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会社を辞めたのが12月頃で、アメリカに渡ったのは翌年の6月末でした。準備期間があったため、英語はまずまず話せるようになっていましたが、他に何のスキルも持っていませんでした。アメリカでビジネスを学ぶ予定だったため、英語がまずまず話せるし、何とかなるだろうという甘い考えを持っていました。これは、日本で大学受験や就職に問題がなく、日本の新卒採用文化が私の中に根付いていたためだと思います。

しかし、留学して数ヶ月後、私が持っていたプランは完全に破綻しました。留学先のカリフォルニア州は世界中から人が集まり、競争が激しく、会計士以外のビジネス職には外国人はほとんど採用されないことを知りました。特に、社会人経験が少なく、特化したスキルを持たない外国人には需要がありませんでした。

アメリカは日本と異なり、スキルベースで人を雇用します。したがって、英語がまずまず話せたとしても、アメリカ人と比較するとそれは最低限度であり、何か他のスキルを持たない移民には仕事がありません。この頃から「何か英語以外のスキルを身につけなければ」と考えを改め、オンラインでプログラミングの勉強を開始しました。当時、私はC言語を学んでから5年以上経っていました。

進まないプログラミング学習

最初にGoogleで「プログラミング勉強方法」と検索して、日本のいくつかのサービスのHTMLやCSSを試しました。コンテンツ自体はわかりやすかったのですが、1-2週間経つとほとんどを忘れてしまい、自分で何もできるようにはなりませんでした。また、JavaScriptやjQueryなども試しましたが、定着率は悪く、根本から理解できていない状態でした。

その後、英語のサービスや動画も試しましたが、自分に合ったものを見つけることができず、プログラミング学習に苦戦しました。特に、英語で理解できていないものを学ぶのはかなり難しかったです。

こうして、完全に行き詰まっていたとき、Recursionの共同創業者のJeffryと出会いました。この出会いが私の人生の大きな分岐点の1つだったと言っても過言ではありません。

共同創業者Jeffryの出会い

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Jeffryはたまたま日本に興味があり、アニメを見ながら日本語を勉強していたことがあり、私たちはすぐに仲良くなりました。ある日、私が「今、プログラミングを勉強しているんだけど、どの言語を勉強した方がいいの?」と尋ねると、Jeffryはコンピュータサイエンスを勉強すれば、言語なんて関係なくなるよと答えました。そして、コンピュータサイエンスがどれほど世界にインパクトを与えて、アメリカの経済成長に貢献しているかを1時間ぐらい熱弁されました。

ある日の会話の中で、Jeffryは「日本の大学にはコンピュータサイエンスの学部が少ない」という事実に衝撃を受けました。なぜなら、彼は日本に行ったこともなく、住んだこともないため、アニメを通してしか日本の姿を見たことがなかったからです。彼にとって、日本はテクノロジー国家であり、そこにはコンピュータサイエンスは当然存在するものなのです。

アメリカのほとんどの大学にはコンピュータサイエンスの学部が存在しており、修士や博士のカリキュラムも充実しているため、日本の現状が理解できないのはわからなくはないでしょう。私が1ヶ月同じことを言っても信じてくれなかったのを覚えています。

シリコンバレーと日本の差

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Jeffryと出会って私の価値観は大きく変わりました。恥ずかしながら、それまではAmazonがただのEコマースサイト、FacebookがただのSNSサイト、Teslaがただの電気自動車のようなイメージを持っていたのですが、Jeffryと会話する度に、これらの企業がバックエンドに到底真似することができない技術を持っていることを学びました。シリコンバレーというと、「オフィスがオシャレ」「イノベーション」「柔軟な働き方」のようなぼんやりとしたイメージがあったのですが、Jeffryと会ってからは、最先端のソフトウェア技術によって常に世界をリードしている企業群という見方に変わりました。

コンピュータサイエンスはソフトウェア技術の根幹であり、この部分が欠けているとどうしても開発力が落ちてしまいます。シリコンバレーではコンピュータサイエンスを学習していない人材はまずエンジニアとして雇われることはありません。つまり、シリコンバレーでは常にトップレベルのソフトウェアエンジニアを世界中から雇っているため、今の現状では日本がどれだけオフィスや働き方を模倣したとしても、ソフトウェア開発で圧倒的な差がある限り、勝算は低くなってしまうわけです。

Jeffryとの出会いがきっかけで、コンピュータサイエンスがソフトウェア開発に欠かせない重要な要素であることを知ったことで、僕の考え方は大きく変わりました。しかしながら、日本からアメリカのソフトウェアエンジニアにアクセスすることがほぼ不可能であり、米国大学/大学院へコンピュータサイエンス専攻で留学する以外の選択肢が存在しないという問題があります。

一方で、アメリカでの生活から気づいたことは、日本人の数学力が非常に高いことです。Jeffryに日本の高校数学のカリキュラムを見せるとそのレベルの高さに驚かれました。高校数学のIAからIIICまでを理解していれば、コンピュータサイエンスを学ぶための基礎が十分に身についていると言えます。つまり、数学に関しては、日本人はアメリカ人よりも大きなアドバンテージを持っていると言えます。

このような状況から、数学が得意な私たちが日本語でコンピュータサイエンスにアクセスできる環境を作りたいという思いが芽生えてきました。

日本におけるプログラミング学習の課題

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一方で、日本におけるプログラミング学習においても、多くの課題が存在します。例えば、教育機関によるカリキュラムが不十分であることや、プログラミングを学ぶためのアウトプット環境が整備されていないことなどです。また、日本語でアクセスできる優良な学習コンテンツや、アメリカ人エンジニアから日本語で学べる環境が限られていることも課題の一つです。

プログラミングを学ぶための環境が整備されていないことから、学習者は自ら環境を整えなければなりません。そのためには、多くの場合、コンピュータの知識や英語力が求められます。これらの壁を乗り越えることができずに、学習を断念してしまう方も多いのが現状です。

このような課題を解決するため、Jeffryと私は「Recursion」を立ち上げることを決意しました。「Recursion」とは、プログラミングにおいて「再帰」「繰り返す」という意味を持ちます。プログラミング学習者が、アウトプットを繰り返すことで高い定着力を実現し、プログラミングの力を身につけることができるよう、様々な取り組みを行うことを目的としています。

Recursionは、Jeffryが提供するソフトウェアエンジニアに必要な知識と、私がユーザーとして使いたいと思うUX/UIを組み合わせたプラットフォームです。Recursionを利用することで、会社員として働きながらリスクを一切取らず、皆で楽しくコンピュータサイエンスを勉強することができます。また、アメリカで最も評価が高いスキルの1つであるコンピュータサイエンスを、日本語で学習することができ、日本語ができるアメリカ人ソフトウェアエンジニアから教わることができます。

Jeffryは、中学生の頃からプログラミングを始め、大学でコンピュータサイエンスを専攻しています。さらに、日本語を読み書きすることができるため、日本人とのコミュニケーションもスムーズに行えます。Recursionは、Jeffryの経験と知識を活かした、日本におけるソフトウェアエンジニアのための新たな学習環境を提供しています。

こうして、私とJeffryが手を取り合って、2020年8月7日にサービスを正式ローンチしました。

Recursionとは

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Recursionは、「世界で通用するエンジニア」を目指すプログラミング学習プラットフォームです。元Metaのソフトウェアエンジニアが、MITやスタンフォード大学などを始めとする米国大学に沿った、オリジナルのカリキュラムを作成しています。Recursionでは、ゼロからエンジニアスキルを身につけることができます。長期的な学習を目的としており、開発力の高いソフトウェアエンジニアになるためのノウハウを提供しています。

https://recursionist.io/

最後に・・

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Recursionは、現在まだまだ認知度が低く、集客に苦戦しています。しかし、私たちのビジョンに共感していただける方がいらっしゃれば、この記事をシェアしていただけると大変助かります。

また、私たちはYouTubeでコンピュータサイエンスに関する情報発信も行っていますので、チャンネル登録していただけると幸いです。

https://youtu.be/uV9wh_W4qkA




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