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【絵をみるって楽しい】知られざる光瑤の横顔感想


福光美術館にて開催中の石崎光瑤の企画展。

石崎光瑤は大正、昭和に活動した日本画家(1884年〜1947年)であり、主に花鳥画を描く。

自然に魅せられた彼の生き様の片鱗を見た展示だった。
小規模の展示なのでさらっと見るにはちょうどいい。

そんな事言いつつ私は常設展示含めて1時間半も滞在してしまったけど…。
平日に行ったため人がいなくて、ゆっくり過ごせたので…時間を忘れて夢中になっていた…。
それだけ見ごたえのある楽しい展示会だったということなんだけれど。

以下、展示の感想について。

まずは企画展の話


冒頭に地元に馴染みのある作品を展示し、衝立で隠された奥の空間に帝展特選の大作を持ってくる構成が良い。
ダンジョンの奥に宝物が隠されていた感じ。
(この感覚はゲーム脳かも…)

企画展は光瑤がどれほど自然物に対する思いがあり、絵を描いたのかを知れる展示だった。

特に面白かったのは彼が登山家であったということ。彼が月刊誌山岳に投稿した登山の記録や紀行文、インドに行った際の記録、
そういった文面が一緒に展示されているのを見て、すごく興味深くて読みふけってしまった。

彼の画家と言う名と登山家と言う面両方が知れた。

展示室に入ってすぐに出会う「富山湾真景図」が一番のハイライトだった。

まるで富山湾を展望しているかのような構図が好き。

奥に広がる海と奥にうっすらと見える立山連峰による遠近と、
左右の視点から見たときに広がる海の奥行きにより
立体感を味わえる絵だった。

私は海より山派(見るのも行くのも)の人間だったが、まさかここにきて海に心動かされるとは思わなかった。
この作品は何時間でも見られる。
そんな出会いだったな。

やっぱり美術館に足を運んで実物を見る醍醐味は
絵画を見て絵の具の盛り上がりやにじみ具合、
発色をその場で実感できることだと思う。

ここはこんなに絵の具を盛り上がらせて作ってるんだ。
これは紙を使ってるな、こっちは布を使ってるんだとか。
使っている素材も実感できる。

実物を見ることでさらにいろんな角度から作品を見られるのは大きいと思う。
光の加減や見る方向によって絵の印象は変わるから。

特に今回の展示で細かく見ていて面白かったのは
植物の葉っぱの表現でひっかきを使っている部分、
花の花粉部分の盛り上がり。

そういった絵画のわずかな凹凸や素材の違いを思う存分堪能できた。

写生が一緒に展示される事で、目的によって変化する絵の表現が知れるのも醍醐味だった。

誰かに見せる為に描かれた絵と対象物を理解するためだけに描かれた絵の対比ができるのはすごく面白いと毎回思う。
こういう写生スケッチを一緒に展示してくれるのは本当にありがたい。

そしてなんと、今年の夏に石崎光瑤の回顧展開催が決定していた。
全国巡回予定のため大変楽しみ!

ちょこっと常設展の話


常設展には光瑤と棟方志功の展示がそれぞれあり、こちらもこちらで見応えたっぷり。

常設展の中でのお気に入りは光瑤の「筧 かけい」。
こちらも見上げるほどの大作。
一面に真っ白な卯の花が咲き誇る姿が印象的な作品だった。

この作品の向かい側にあった「雪」では迫力のある白の使い方(絵具の盛り上がりからして)をしていたので、余計に繊細な線と色づかいを感じたのかもしれない。

企画展でも常設展でも感じたが、じっと作品を見ていたくなる絵が多くて楽しかった。

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