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高い塔

私は高い塔を見つめる。ぱっと見はわからないが、塔は人間の体でできている。人がうずたかく積み重なっている。しかも細部はわからないが、がっちりと組まれているように見える。私は人の塔に近づいていく。近づいてみて驚く。なんと入り口があるではないか。これは比喩的に人の塔なのではなくて、実際に人でできた塔なのだった。私は凸凹とした足場を慎重に確かめながら、塔の中に入っていく。中は光が差し込み、なんとか辺りが見える。入り口を通り、少し進むと階段が見える。それも人でできている。私は目を合わせないようにしながら、それを上る。見上げると、天井は見ることができないくらいに高い。私は息を乱しながら必死に階段を上る。時々窓が作ってあって、外が見える。休みがてらそこから様子を見ると、荒涼とした景色が広がっている。つまりはもう誰もいないのだ。私はふと寂しくなって、涙を流す。ただ、それも一時のことで、私は使命感を感じて階段を上る。きっと意味があるはずなのだ。こんな残酷なことが意味なくあるはずないではないか…。

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