266: Pink Floyd / The Great Gig In The Sky

ピンク・フロイドの作品で、メンバー以外がリード・ヴォーカルを取っている曲が、「葉巻はいかが」以外に、もう1曲だけあります。
それが、『狂気』に収録された、リチャード・ライト作のこの曲。リード・ヴォーカルを務めているのは、女性シンガーのクレア・トーリー。
このアルバムについては、多くを語る必要はないでしょう。1973年にリリースされると、ビルボードのアルバムチャートに741週連続でランクインし、全世界で5000枚以上を売り上げるという、ロック史上でも類を見ないセールスを記録したアルバムです。
プログレと言うと、曲が長く、演奏もテクニカルで、ロック初心者にはとっつきにくいイメージがありますが、このアルバムは、比較的短めの曲がつなげられて「組曲」を構成しており、演奏も難解ではなく、広いリスナー層に受け入れられたことが、成功の要因だと思われます。
もっとも、サンプラーがない時代に、手の込んだ効果音(その代表が「マネー」のイントロ)を作り上げるのは、想像を絶する労力を要する作業であったと思われます。
そんなアルバムにおいて、この曲はA面の締めくくりとなる重要なナンバー。
リチャード・ライトの弾くピアノに、デヴィッド・ギルモアが弾くペダル・スティール・ギターが絡むイントロは、「何か」が起こる前の厳かな雰囲気を醸し出しています。
そんな中に、ドラムに続いて入ってくるクレア・トーリーの鬼気迫るヴォーカル(歌詞がないのでスキャットですが)は、アルバムのタイトルである「狂気」を感じされる凄まじいまでの迫力です。
ちなみに、この曲の作曲にクレジットされていないことに関して、彼女は2004年にピンク・フロイドを訴え、2005年に和解が成立しています。内容は明らかにされていませんが、それ以降、この曲の作者には、リチャード・ライトとクレア・トーリーの2人が記載されています。

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