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『あなたが自分で考えてください。』


「なんで僕に聞くんだろう。」

幡野広志さんの著書「なんで僕に聞くんだろう。」を読んだ。幡野さんの本を読むのは、「他人の悩みはひとごと、自分の悩みはおおごと」に続いて2冊目だ。1冊目を読んで、幡野さんに興味を持ち、違う本も読んでみたくなり手に取った。
「なんで僕に聞くんだろう。」も多発性骨髄腫(血液のがん)になった写真家である幡野さんが、色々な人生相談を受けて、それに答えていくという形で本にまとめられている。家族、恋愛、将来、病気など、様々なテーマについての人生相談が含まれている。
寄せられた質問に答える形の本は沢山あるが、幡野さんの歯に衣着せぬ物言いが好きだ。厳しいなと思う回答もあるが、厳しさの中にも、質問者への愛が感じられる。そのなんとも言えない温かさに、自然に本に引き込まれる。
深刻な質問や回答にも、思わずくすっと笑ってしまうような、幡野さん独特のユーモアが盛り込まれているのもたまらない。みなさんにも「なんで僕に聞くんだろう。」を読んでもらいたい。きっと幡野さんの事が好きになるはずだ。

『あなたが自分で考えてください。』

本を読んでいると、はっとさせられる文章に出会うことがある。幡野さんの本を読んでいる時には、1冊の中で、何度かはっとさせられた。

『あなたが自分で考えてください。』

「なんで僕に聞くんだろう。」で幡野さんが質問者に答えている文章の中に出てきた1文である。「ガンの家族になんと声をかけたらいいのでしょうか?」という質問に対して、幡野さんなりの考えを述べた後に、出てきた1文だ。私はあなたではないし、あなたの事を完全に理解することはできない。だから最後は自分で考えて答えを出すしかないんだよと答えていた。
私は、この1文を読んではっとさせられた。
私は自分で色々なことを決められているだろうか。安易に人に相談したり、答えを求めていないだろうか。そんなことを考えさせてくれたからである。

なぜ誰かに相談するのだろうか?

なぜ人は誰かに相談するのだろうか?「失敗したくないから」というのが理由の一つではないだろうか。何かを決断したり、選択する時にできれば失敗したくないと考えるのは自然なことだ。できれば私も失敗したくないと思う。失敗の確立を下げるために、相談することや意見を求めることは悪いことではない。自分と同じような境遇の人や自分より歳を重ねた人生の先輩の意見や助言は、参考になることも多い。
しかし、意見や助言を貰うことと、その通りにするかどうかは別である。
年齢、性別、置かれた環境、育ってきた環境…全てがまったく同じという人はこの世に存在しない。他の誰かになることはできないし、すべてを理解することは不可能だ。「私だったらこう考える」とか「私だったらこうする」と伝えることはできるが、あくまでも「私だったら」ということであって、相談者にとってそれがベストな選択かどうかは別問題である。あなたの話を聞いて、「すべてよくわかりました。こうしなさい。」と言って来る人がいたら、危ないので信じない方がいい。

失敗もしていいと思う。

そもそも、失敗もしていいと思う。命に関わるような失敗はもちろん避けないといけないが、失敗から学ぶことも多い。長く生きていると、あの失敗があったから今があると思えることも沢山ある。また、その時は失敗に見えても、後から振り返ると失敗ではなかったなと見え方が変わることもある。災い転じて福となすということだ。だから慎重になる必要はあるけれど、過度に失敗したくないと、怖がる必要もないのではないかと思う。

「後悔しないため」に自分で決める。

自分で考えて答えを出した方がいいと私が考える一番の理由は、「後悔しないため」である。誰かに言われた通りにやって上手くいけばいいが、上手くいかないときも必ずある。その時に、自分で決断したことであれば、自分で決めたことだし仕方ないかと諦めもつく。上手くいかない中でも何とか頑張ろうと思える。自分で決めたことだし、責任とるしかないかと腹をくくることもできる。しかし、自分で深く考えずに、誰かに言われた通りにやって上手くいかなかった時、人は必ず後悔する。そして、その状況を嘆き、文句をたれ、そこで立ち止まってしまう。良いことは一つもない。だから苦しくとも、最終的には自分で考えて、自分で結論を出すことが、大事だと幡野さんの文章を読んで改めて思った。

苦しくても自分で考え、自分で決める。

ちなみに、AIに「なんで僕に聞くんだろう?」と質問してみたら、「おっしゃる通りですね。なぜ僕に聞いたのでしょうか?もしご質問やお手伝いがあれば、気軽にお聞きください。」と返事がきた。
AIも「お手伝いはできるけど、自分でも考えて、最後は責任もって自分で決めて下さいね。」と言いたいのだろう。

あなたが自分で考えてください。

厳しい言葉ではあるが、やはり温かい言葉だ。
問題から逃げずに、誰かに相談はしても、最後は自分で決められるようにしたい。失敗したなとは思っても、後悔しない人生を送りたい。


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