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書き方の説明を受けてもレポートに何を書けばいいかわからない。という大学生をもう少し高解像度でサポートしてみる

はじめに

前回は大学生のレポート作成について、情報収集の方法や書き方の大枠を解説しました。

ただし、レポート作成についての最初の記事ということで
「フワッと」
書かれています。
たぶんこれだけだと
「……で?目の前の課題はどうやって書けばいいの?」
みたいになると思われます。

そこで今回はもう少し解像度を上げて、さらに目の前のレポート課題に取り組みやすくすることを目的に解説していきます。
しかしながら最終的な結論は
「ある程度色々考えて量をこなす必要はある」
となります。

レポートが書けないときの気持ち

私は大学4年生の卒論を苦も無く書いて卒業しましたけど、大学2年生までは「文章の書き方がわからない」典型的な学生でした。
教養科目で
「電柱地中化についての考えを書け」
と出題されても
「電柱地中化がいいか悪いか書けってこと?うーん、悪いかな、なんか嫌だし。電柱もカッコよく写真撮ればきれいでしょ」
そしてレポートでは
「電柱がある風景も良いものです」
とか書いて、ひたすら良い電柱の風景の例を挙げて文字数を確保して終わり。

まず、暗記中心の勉強しかやってこなかったから
「答えを暗記して出力する」
ことしかできない。
だから
「講義の資料の中からそれっぽい記述を抜き出してレポートに組み入れる」
ことしかできない。
そこから離れたことはよくわからない、となるわけです。

そんな自分に転機が訪れたのは大学3年生の時。その昔話から始めていきます。文章力を磨くことで道が開け始めます。
今回は読者の方に私が「まあレポートは書けるな」というレベルになった体験を追っていただいて、どうすればレポートが書けるようになるのか感じていただくことから始めます。

私はレポートが書けるようになるまで紆余曲折しています

文章を書くことにずっとコンプレックスを抱いていた

私は最終的に大学4年生の卒業研究で、苦も無く卒論を書いて卒業しましたけど、それまでは紆余曲折しています。
というのも私はそもそも、自分がいた大学の学部を適当に選んで進学した、「やりたいことがわからない大学生」だったのです。

工学部に進みましたが、自分には合わず、勉強ははかどりませんでした。
そんな自分にはコンプレックスがありました。
「文章が書けない」
という悩み。

工学部なのに文章かよ。
というツッコミが来そうですが、結局大学に行って気づいたのは、自分はどうも理系への適性が低いようだということ。
適性というより興味かな。工学部でも情報系ならよかったかもしれませんが、電子部品とかメカニック系に進んでしまったので、なおダメでした。

でも「文章を書く」ことに関してはずーっと胸のどこかに残っていたんです。

始まりは高校生の小論文。
高校の小論文が添削されて帰ってきます。すると最低評価レベルでした。「何をどう書けばいいのか」ということが、添削業者が書いた注意文を読んでもさっぱりわかりません。
国語力が足りないからだと考え、高校の国語特化の対策授業に理系なのに顔を出したりしていました。結局内容が理解できず途中でやめちゃいましたけど。
執念はあっても、どうすればいいかわからない状況が続きます。

大学3年で時計の針が動き出す

そんな状態で大学2年生までやり過ごします。レポートが簡単そうな講義を優先して取って単位を稼ぎ続けました。
ただ大学3年生のときに受講できる科目の中に
「文章講座」
という科目を見つけ、試しに受講してみたんです。それが時計の針を進めることになります。

文章講座では文章の書き方を教えるわけではありませんでした。
簡単な文章、例えばお店のポップに書かれた文章の例題があって、それを
「もっと良くするにはどうすればいいですか?」
という課題に取り組みます。

まず箇条書きにするといい、とか、主語が無いのでお客にはわかりずらい、といったことがわかります。そう言う部分を意図的に改悪した課題文が問題として提示されるので気づきやすくできていました。

そして講義の最終課題で
「日記」
を添削する課題が与えられます。
それをもっとよくするためにはどうすればいいか、今までの知識で考えるわけです。

講義は最終課題の解答を提出して終わりました。
しかし自分は何かをつかみました。
「日記を添削すると文章力が向上する」
と気づいたのです。

そして日記を書き始めます。
そして自分で添削する日々が始まりました。
そのやり方を解説したのが次の記事です。

卒論で論文を調べる方法を学び、論文の型を理解する

その状態で卒論の時期が来ます。
そこでさらに文章力は加速していきます。

論文には「論文の型」があることを見つけました。
「はじめに」「実験方法と結果」「考察」「結論」。
ほとんどの論文はこの4つのパーツから成り立っているということをここで初めて知ります。
恥ずかしながら論文を調べるという方法はこのときまでできるようになっていませんでした。
よくそれまでレポートが受理されていたな、と危うい大学生活だったことを思い知ります。
論文の調べ方は前回やりました。最初からこれを知っていれば……。

型がわかったので、何を調べればいいのかだいたいわかります。
「はじめに」では「先行研究」をいくつか挙げて、学会の歩みを述べます。
それを
「しかしながらここに課題がある。」
と否定します。
要するにここが自分のオリジナリティなのです。
ここを考えるのが一番重要で、一番大変なところ。
これは考えなければいけません。
レポートなら先行研究の穴を突くみたいなことまでしなくていいです。
素朴な疑問を課題にしてもいいのです。
そして
「だからこれを調べる・作ってみる」
と進めて「はじめに」は終了です。
まあ卒論では「作ってみる」の部分が大変ではありますが。そこは昔の教科書とかを引っ張り出してきて、勉強しなければいけません。ここは色々な人に聞きながら、本も色々買って頑張りましょう。

あとは自分が作ったり調べた内容を「実験方法と結果」に記述して、そこからわかったことを「考察」に書いて、「結論」で簡単に全体をまとめる。
これで完成です。

電柱地中化を例にレポート作成の思考過程を解説してみる

先の電柱地中化の例では
「これまで電柱地中化は景観の改善のために推進されてきた」
というのが講義で勉強したところ。ここまでは書けます。
ここからは考えなければいけないのですが、例えば今の自分なら
「しかしながら電柱地中化は日本全国津々浦々広がっているとはいいがたい」
これも日常の風景を見れば明らかでしょう。
そこで
「そのため私は予算に目を向けてみた。電柱一本立てるのと、電柱一本埋めるのとどちらがコストが高いのか調べてみた」
となるでしょう。
電柱を埋める費用はどうやら公開されているようです。

電線共同溝方式による無電柱化の事業費は、国土交通省によると、全体で1km当たり約5.3億円 かかります。

東京都建設局, 皆さまからのご質問にお答えします!, 閲覧日 2023-04-06.

あとは電柱を一本立てる費用を調べれば、その辺の道路に面積当たり何本の電柱が立っているか数えて、掛け算すれば費用を比較できます。
電柱一本立てる費用がわからないなら、コンクリートの材料費ならわかるでしょうから、電柱に使うコンクリートの量を算出して(太さと高さはその辺で見ればわかりますので数学の体積の出し方で量がわかります。中の空洞も考慮します)、それを一般的な月給25万円くらいの技術者が一日で立てる場合、二日で立てる場合と算出します。まあ電線のコストなども計算しなければいけませんが、今回は割愛します。
するとこの日数で立てるなら、電柱を立てたほうが採算がとれる、この日数なら地中化したほうがいい、みたいなデータが手に入ります。
そうすれば比較できるでしょう。

あとは「電柱と無電柱のコスト」を結果に書いて、考察で「だからこっちの方が選択されている」ということを書きます。日常を見ればわかるようにおそらく無電柱の方がコストが高いんでしょうね。さらに考察に「だから今後は無電柱化のコストを低減させることが必要である」ということを書く。

ちなみに建設コストとして材料費と人件費を挙げて話を進めましたが、これは次の情報ゆえです。

建築費は、「建築コスト」と建設会社の「一般管理費」に大きくわけることができます。また、この建設コストは、施工に使用する材料や部材の「材料費」と、作業を行う職人や作業員の「労務費」から構成されています。

野村不動産ソリューションズ, 建設コストの高騰とその要因について① 建設業界の現状と取り巻く環境, 閲覧日 2023-04-05.

Google検索で「建設コストの内訳」と検索すれば一番上に出てきました。
大手の企業の情報なのでそれなりに正確性があると判断しました。
この「どうすれば目的の情報を導き出せるか」は経験が必要なので、最初のうちはある程度頭を悩ませて考える訓練が必要です。フェルミ推定とかを勉強すればいいかもしれませんね。
今は中学生から統計を勉強するので、初学者向けの統計の本とかも勉強になります。

でもこういうことまでできるようになれば
「あ、俺勉強している」
って気持ちになりませんか?
ここまでできれば達成感も得られるので頑張りましょう。

具体例を一つ学んでもできるようにはならない

ここまで「電柱地中化」を例に筆者ならレポートをこう書くという具体的な思考過程を書いてきました。
しかし一つの例がわかっても、次の例、つまり読者の方の課題には応用できません。
そもそも課題が違います。
大枠がわかっても、自分の課題にどう適用するのかという答えはわからないのです。

抽象→具体は無理。具体を収集→抽象の順番

私はずっとこのことに悩んできました。
数学を例に出すと、昔から「~の定理」は学校で習います。
しかし問題集の問題は解けない。
これは具体と抽象の関係性が原因の一つだと後々気づきました。

どういうことかというと、抽象的なことは具体の集合体です。
具体例をたくさん集めて、それの共通部分が抽象概念となります。
A、B、Cの具体例をSという抽象概念にする。
ここまでは先人がやってくれています。
しかし「じゃあ最初からSを教えれば、A、B、Cを学ぶ必要がなくなって効率的でしょ」とはならないのです。
一般的にはSを学んでから、A、B、Cを学んで、その共通部分を経験しないと、Sの中に新たに入るDという具体例は理解できません。
たくさんの具体例を経験してようやくSという概念が使えるようになります。しかもDを理解できるかどうかは、偶然のひらめきなどにも左右されますし、D特有の前提知識があるかどうかにも左右されます。

レポートも一緒です。
様々な例題を解く中で、具体的な事例を「論文の型」に当てはめていく。
そうすると共通部分がわかってきて「論文の型」が使えるようになってくる。
レポートは「ミニ論文」なので、「論文の型」が使えればレポートが書きやすくなります。
完全に書けるようにならないのは、レポートそれぞれで調べなければいけないこと、考える内容が違うので、型さえ身につければなんでも書けるようにはならないからです。

前提知識の欠如が問題の場合も多い

上で「電柱地中化」のレポートの例を出しましたが、レポートの型が理解できていて、電柱地中化のレポートが書けるとしても、あらゆるレポートが書けるとはなりません。
私は法律の専門家ではないので、裁判の判例に関するレポートは書けませんし、純粋数学の「~理論」に関するレポートも書けません。
このようにレポートの型、思考方法がわかっても、前提になる法律や数学の基礎知識がないと書けないレポートというものも存在します。
そのときは書く練習と並行して、学問の勉強が必要です。
レポートで書く内容が全く思いつかないときは、そもそも与えられたテーマに関する基礎知識が不足している可能性があるので、自主的な勉強も行うようにしてみましょう。

まとめ

今回は私がレポートを書けるようになった過程を読んでいただき、レポートが書けるようになるには何が必要か体験していただきました。
しかしながら「どんなレポートも書ける万能のスキル」はありません。
具体的な経験をたくさん積んで、色々なレポートを書くことで、レポート作成の技術は向上していきます。
色々なレポートを「論文の型」に当てはめて書いてみる経験を積みましょう。
そうすれば次第にレポートが書けるようになっていくはずです。


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