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木の高さをどう測るか②

 前回、山の素材価値を知るうえで欠かせない立木調査の流れをご紹介しました。立木調査で調べるのは、木の直径、樹高、形質、樹種―でした。この内、直径は簡単に測れる。形質、樹種は人の目で読み取ればいい。では、樹高をどう測るのかが今回の着眼点です。

 まず、アナログな方法で、測桿(そっかん)という伸縮式のポールを使った方法があります。測桿を根元に当て、木の上端まで伸ばすのです。

 しかし、例えば直径40センチクラスのスギは高さ30メートルほどになります。その上、木の上端に近づくほどに枝が混み入り、測桿を伸ばすスペースに余裕がなくなっていきます。こうした中、数百、数千という本数を測るのは大変です。

 私達の現場では、超音波を利用したスウェーデン製のデジタル樹高測定器、Vertexを使っています。

 Vertexは優れ物。超音波を発信する小型の装置と、超音波を受けるやはり小型の応答器からなります。発信側には、応答器を視準するレンズが付いていて、これを覗き込み応答器に狙いを定めます。

Vertexを使った樹高測定の手順

 樹高を測定するには、まず発信側を木の山側に、応答側を木の幹に配置します(応答器設置の高さは後述の通り任意でよい)。①その状態で応答器を視準し、次いで②木の上端を視準する。何とこれだけで木の高さが分かってしまうのです。

 最初現場でこれを使ったとき、なぜこれで樹高が測れるのか不思議でなりませんでした。三角比が隠れていそうなのは想像がつく。私は理系の人間です。帰宅するとさっそく紙とペンを手にしました。

 まず始めに、既知の数値を整理します。

A+Bの値をa, θ, φを使って表したい

 上の図で、赤字で書いた距離a, 俯角θ, 仰角φは既知です。なぜなら、aは超音波の速さと、応答器からの跳ね返りが発信器に戻るまでに要する時間との掛け算により求まるためです。θ, φは発信器に内蔵のセンサーによります。これら3つの値はリアルタイムで発信器の画面上に表示されもします。

 また、上の図で樹高は h+A+Bで表されます。ここで、hは応答器を設置する地面からの高さなので、あらかじめ装置に読み込ませた値(例えば1.5メートル)に設置すればいいだけです。要するに、A+Bを、既知であるa, θ, φで表せれば樹高が測れたことになります。

表せた

 上の図のように角度θ, φそれぞれが形作る直角三角形の三角比を用いることで、式変形により、A + B = a sinθ + a cosθ tanφと表せました。どうりで瞬時に高さが計測できるわけだ。

 Vertexにも注意点があります。その1つとして、測定する木に近すぎる位置で木の上端を視準しない。下の図のように、張り出した枝が邪魔し、本来より高い所に木の上端部を見出しかねません。

発信側は木から十分離れて測定する


 次回は、Vertexを使った厳密な立木調査の世界から離れ、身近な物(なんとそこら辺の棒1本!)を使った簡単な木の高さの測り方を考えてみます。

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