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駄菓子の『ひき飴』で、『大人の理不尽』と『性』を教育しているお話し。(今のところ苦情なし)

愛媛県松山市の小さな港町・三津(もしくは三津浜)。
松山の玄関口だったこの町で、芋の子洗うほどの人でごった返していた景色はもう今昔物語。
それでも店主の個性がきらり光る一品がそろう三津浜商店街は、週末になると人もそぞろそぞろ。
その商店街の一本南の辻にあるのが茶舗de la música (チャポデラムジカ)。
常識を身に纏う人には見えないお店。
冒険したい人や遊び心がある人しか辿り着けないお店。
そんな不思議なお店に、今日も彼奴らがやってきた。

そう…
私の獲物たち…( ̄∀ ̄)

4年ほど前、近所の子供達に懇願され駄菓子を置き始めた茶舗de la musica。
その駄菓子のひとつに『ひき飴』がある。
赤や黄色や水色の大小様々な飴には糸がついていて、糸を引っ張ると飴がそれに釣られる。
糸は途中、紙に覆われているのでどの糸がどの飴につながっているのかわからないようになっている。
このひき飴が、甘さと可愛さが相まって大人気。

仕入れた時は袋に入っているこの飴を私はわざわざ小瓶に移し替える。
その時、袋の底に溜まった白い砂糖たちも小瓶にさらさらと流し移すのだが、私は一言添えて移すようにしている。
「マ〜リ〜○ァ〜ナァ〜」
すると社会の黒さを知らない無垢な子供は言う。
「マリ○ァナってなぁに?」
私は答える。
「楽しい事しか考えられない甘い粉だよ〜」
子供たちは目を輝かせながら私に言う。
「マリ○ァナいっぱいつけて!」

ある日、小学一年生のトモ君が
「飴を引いた子たちに『これは魚が大好きになる飴だよ』とか『にんじんが食べれるようになる飴だよ』って渡したらいいんじゃない?嫌いな野菜が食べれる飴があるって噂になってじゃんじゃん売れるよ!」と言う。
なんてポエムな思想。
なんて現実的な感覚。
私は早速、トモ君が言うようにひき飴を引いた子たちに
「ピーマンが食べれる飴だよ〜」
「にんじんが好きになる飴だよ〜」
「しいたけが大好きになる飴だよ〜」
「牛肉が胃にもたれない飴だよ〜」
と言い続けた。
ところが子供らは
「わたし、最初からにんじん好き〜」
「僕しいたけ食べれるし」とか言う。
だんだん面白くなくなってきた。

ある日、私は駄菓子を売りながら、子供らに義務教育以降の世界を教えなきゃいけない使命にある人間なんだ!と気がついた。
そんな使命感に絆され(ほだされ)、今はひき飴を引いた子らに
「ただのリーマンになる飴〜」
「客室乗務員になってパイロットと不倫する飴〜」
「歯科助手になって先生と結婚する飴〜」
などなどなどなど、素敵な未来を提言している。

そんなある日。
いつものようにひき飴を引いた小1のかわいい女の子に
「かたいリーマンと結婚したのに不倫される飴〜」
と提言すると
「なんで私がそんな事になるのよっ!」と激怒した。
私に忽ち(たちまち)不安が襲う。
小1で『不倫』がなんなのか理解してる事に…。
これは家庭訪問案件だ。(せんけど)

今日は三津小を卒業したメンバーが久しぶりにやってきて、こぞってひき飴をひいていった。
最近彼女ができて浮かれポンチの千景がひいた飴はこんな飴だった。
『女とやりすぎて性病になっちゃう飴』
千景は即答した。
「俺、結婚するまでゴムつけるんで性病になりませんっ!」
私の常日頃の性教育が功を奏している。(かどうかはまだわからんけど。)

「映え」ばかりが散りばめられた三津浜商店街から一本南の、隠れた辻にあるお店・茶舗de la música は気がつけば今日もディープさ漂う空間になっていた。

君も飴をひきに来ないかい?
私が素敵な未来を
提言するよ…( ̄∀ ̄)
ふふふ…
ふふふ…
あーはっはっはっはっはー‼︎

おしめり

素敵な未来を教えてくれる『ひき飴』

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