大学生との「ななめの関係」



 
 
フリースペース雲では主に早稲田大学を中心とした学生スタッフと不登校の子たちの間で生まれる「ななめの関係」を大事に活動しています。
 
縦でも横でもない、ちょっと年上の学生たちとのいわば「ななめの関係」は大きな効果を発揮します。
 
不登校の子たちにとって社会の中の人間関係はとてもむずかしいものなのです。
 
同学年の子たちとの「横の関係」は、不登校の子にとってはきついものがあり、乗り越える最後のハードルとなることも多いです。
彼らは学校に通えない自分の未来も見えず、「もう終わった。」と感じてしまうことが多いようです。
「横の関係」のクラスメイトにはできている「登校」ができない自分に大きな引け目を感じてしまうのです。
 
一方、教師や親との「縦の関係」。この関係にも行き違いやトラブルを感じている子も少なからずいます。
親の希望に添えない自分に対する自己嫌悪。
親にわかってもらえていないと感じる孤独感など。
不登校の子たちは特に親子関係には難しいものを感じることも多いようです。
また、学校での教師とのトラブルで不登校になる子もいます。

そんな経験をした子は大人が信じられなくなり、「縦の関係」に難しいものを抱えてしまいがちです。
 

そうした彼らにとっては、フリースペースにおいて大学生スタッフと時間を共にしてはぐくむ「ななめの関係」は有効です。

大学生という憧れの存在が自分と同じように悩んだり立ち止まったり、時にはお互いぶつかり合ったりしながら過ごしている。
大学生も「ごく普通の」年長者であることに気が付くのです。
また、時には自分よりずっと大人っぽくて、大学生活を謳歌している姿も見えてきます。
そんな姿を間近に見て、彼らにあこがれを持つことも事実です。

自分にとって閉ざされたと感じた未来は実は身近なところに存在すると実感することもできるのです。
 

かたや、大学生にとってもこの「ななめの関係」は彼らの成長にとっても大きな効果があります。
不登校の子たちが自分のかかわりによって元気を取り戻す過程を体験することは大きな喜びになります。ひとのためになることの喜びを感じることで、彼ら自身にも自己肯定感が育まれ成長していきます。
 
 大学生の中には自分も不登校を経験したという学生もおり、子どもたちの良いロールモデルになっています。
その不登校経験の学生にとっても「負の経験」と思っていたことが、実は今立ち止まっている子たちの何よりの力になることを実感します。
「ひとのために役立つ自分」であるということを実感できるのです。
 
そう、彼ら双方にとってこの「ななめの関係」は有効な人間関係であると私は感じています。
 
その成果を間近に見ることができる喜びが私の原動力の一つともなっています。
 
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?