ハラハラドキドキ (タカシ君の就職)

前回お伝えした タカシ君のその後です。

まさかまさかの就職をして 2023 年の年初めから働き出しています。
タカシ君は寝たきりのおじいさんの介護も終わり、猫を飼い始めました。
最近は電話でその 飼い方の質問をしてくれるようになっていました。
おとなしい彼としてはこれも喜ばしいこと ではあったのですが・・・。

このごろちょっと時間を持て余している様子も見られ、「それなら宅建(宅地建物取引主任 者・不動産の資格です)の勉強でもしてみたら。」と私は軽い気持ちで提案してみました。 そして、それはそのひとことから始まったのです!

タカシ君の家は地域の開発により不動産をいくつか持っていたからなのです。今はお母さま が管理していますが、ゆくゆくは誰かがそれを手伝わなければという事情がありました。
そこ で、まじめにコツコツやるタイプのタカシ君には「勉強していて無駄ではない。」という私の思 惑があったのです。

早速ユーキャンで資料を取り寄せたそうです。
しかし、ドンと送られてきた資料の束 に恐れをなしてタカシ君は手を付けられずにいました。
そこで、昔からの家族づきあいの不動産屋の会長さんに相談したのだそうです。
実はこの会 長さん、おじいさんの葬儀の時にタカシ君の様子を見ていました。参列者にしっかりと対応を するその様子を見て「変わったな。」と思っていたのだそうです。

それからは話がトントンと進み、「一週間うちの店で様子見てみなよ。」の言葉に乗り、一週 間限定で見習いに行ったのが 2022 年の年末。

もう、これだけでもびっくりです!

まじめな彼の様子を見て「昭和の親父さん」の会長さんは「すぐあきらめるようなら来なく ていい。
覚悟をもって働きたいならうちで雇ってやる。」と言ってくれたそうです。 こんな良い話はないですね。
でも、そうはいってもそれまで 6 年余りほとんど外に出られず 昼夜逆転ぎみだったタカシ君です。
日ごろ話す相手は家族とフリースペースで知り合った数人 がほとんど。
そんな状態の彼にはあまりにも乗り越えるべきハードルが高すぎます。
「どうしよう。どうしよう。」と大いに悩み、本人から相談が。
その時はもう自分の中では「働く」と半分以上決めていたようでした。
背中を押してほしい 様子が見て取れたのです。

思い切って私も「ダメ元でやってみたら」と背中を押しました。

背中を押したはいいけど、実は不安がいっぱい。
この新年は,ハラハラドキドキ、心配でたまりませんでした。

そんな中、働いて一週間のタカシ君から電話がありました。 「思ったより疲れはするけど、この仕事はきらいじゃない。」とのこと。
「今は黙々と覚えているだけで精いっぱいだけど、何とかこれからも続けられそう。」の言葉 にホッとはしたのですが・・・。

あー! これからも私のハラハラドキドキはしばらく続きそうです。
(文中ではプライバシー保護の観点から仮名とし、内容も多少変えてあります)

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