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「書物固有の快楽」とはなにか

水村美苗という作家が、「この世紀末、文学に希望が持てるか」というエッセイでこんなエピソードを紹介しています。(ちくま文庫『日本語で書くということ』所収)1991年、京都大学で著者が講演をしている最中のことです。

講演のあと相次ぐ質問に大まじめに答えていると、突然、からかうような間延びした声がどこからかあがった。あのう、水村さんは、なぜ今ごろ、小説なんちゅう誰も読まんもんを書こうとしてるんですか。聴衆がどっと笑い、わたしも思わず苦笑した。

『日本語で書くということ』p.8

今から30年以上前のエピソードですけれども、これに対する著者の回答が実に奮っています。少し長いですが、引用させてもらいます。

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