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僕と怖いおじさん(芋けんぴ達の独り言) 第35話 怖い顔のおじさんとJK(22)

#創作大賞2023
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第35話 怖い顔のおじさんとJK(22)

(まあ、絵里がおじさんへと不満を申しても。いつもおじさんは、自身の都合が悪いことは。右から入って、左から直ぐに抜け、素知らぬ振りをするから。絵里が不満を漏らすだけ無駄だよね)と直ぐに思い。

 彼女は、自身の脳裏で呟くから。

 絵里ちゃんは家の怖い顔のおじさんの様子を凝視しては、またクスクスと微笑み始める。

「……ん? なんや、絵里ちゃん?」

 だから家の怖い顔のおじさんは怪訝な表情で絵里ちゃんへと訊ねた。

「うぅん、何でもない。何でもないよ。おじさん……」

 だけど絵里ちゃんは、自身の首を振りつつ、何でもないと。

 家の怖い顔のおじさんへと天使の微笑み……。

 そう、家の怖い顔のおじさんいわく。

 幼稚園の年長から変わらない絵里ちゃんの大変に可愛らしい笑みを見て、見惚れながら。

「そうか、そうか……。絵里ちゃんが何でもないならば。早ぅ、彼氏と学校へいけ。早く。早く」と。

 家の怖い顔のおじさんは、自身の孫、娘のように可愛くて仕方がない絵里ちゃんへと。

 本物のお爺さん、お父さんのように荒い口調で、絵里ちゃんへと急かし、告げるから。

「うん、わかった」と絵里ちゃんは頷くと。

「──じゃ、おじさん! うち、学校へといってくるね」と。

 絵里ちゃんは家の怖い顔のおじさんへと本物の孫や娘のように。

 大袈裟に手を振り──振り終えれば。

 彼女は踵を返し、反転をする。

 そして彼氏の許へと慌てて駆け始める。

 でも、絵里ちゃんは少し走れば足を止め──。

「あっ!」と驚嘆を漏らすから。

「……ん? どうしたんじゃ、絵里ちゃん?」

 家の怖い顔のおじさんは、彼氏の許へといかずに急に立ち止まり。

 驚嘆を漏らし、踵を返して振る向いた絵里ちゃんに。

 家の怖い顔のおじさんは少しばかり困惑をした表情で絵里ちゃんへと言葉をかける。

「ふっ、ふふふっ」

 そんな様子の、家の怖い顔のおじさんへと絵里ちゃんは妖艶、小悪魔JK的に微笑むと。

「おじさん~。今うち、お小遣いピンチだから~。近々アルバイトをさせてよ~」と告げてくる。

「ん? ああ、何だぁ、絵里ちゃん。そんなことかぁ。絵里ちゃんがアルバイトがしたいなら、いつでもえぇけぇ、くればえぇ。こっちの売り場でもええし。家での作業。袋詰めでもええぞぉ。絵里ちゃんの好きな方をすればえぇ」と。

 そう、家の怖い顔のおじさんは最初はね。

 絵里ちゃんが急に立ち止まり驚嘆を漏らしたから。

 絵里ちゃんとすみれさん親子に。

 何か大変なことでも起きたのではないか? と。

 家の怖い顔のおじさんは、ハラハラ、ドキドキしながら思ったみたい。

 でも絵里ちゃんの話しが、近日中にアルバイトをさせて欲しいとの嘆願だったので。

 家の怖い顔のおじさんは、絵里ちゃんの言葉を聞いて、『ホッ』として、安堵……。

 自身の胸を撫で下ろしながら。

(ああ、よかった。よかったよ。絵里ちゃんやすみれさんの身の上に。最初は何か大変なことが起きたのではないか? と。儂は思ぅちょぉったから。正直驚いたけぇ。でも二人の身に、何も起こちょぉらんかったけぇ。ほんまによかった。よかったけぇ)と。

 家の怖い顔のおじさんは心底思う。

 まあ、そんな様子のおじさんに絵里ちゃんは、自身の両手を大袈裟に振りながら。

「おじさん~、学校へと行ってくるねぇ~!」と。

 絵里ちゃん声を大にして叫ぶと。

 今度こそ、彼氏の許へと駆け足で戻る。

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