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僕と怖いおじさん(芋けんぴ達の独り言) 第5話 みんな僕のことを知っているかな?(5)

#創作大賞2023
#お仕事小説部門#お仕事 #移動販売・対面販売 #ラブコメ・恋愛 #おじさん #駄菓子・豆菓子・珍味・ドライフルーツ #未亡人・JK少女 #女子大生 #人妻


第5話 みんな僕のことを知っているかな?(5)

 それも小山、中山ではなく大きな……。

 そう、鳥取県にある西の富士だと世の称えられている美しい山……。

 霊山、大山のように。

 僕は大変に大きく盛られ、飾られながら販売をされている。

 まあ、そんな状態なのだ。

 僕【芋かりんとう】はね。

 そんな素晴らしい状態、容姿の僕【芋かりんとう】のことを。

 家の怖い顔のおじさんは、僕【芋かりんとう】の肢体を一本ずつ丁寧に。

 食品トングと呼ばれる物の、大変に長い物を購入し。

 それを使用──。

 僕【芋かりんとう】を食品トングで摘まんでは。

 怖い顔のおじさんは、己の腕を最大限に伸ばしながら。

 この売り場──。

 そう、僕達の怖い顔のおじさんが、この建物、施設……。

 まあ、道の駅と呼ばれる休憩施設なのだけれど。

 この道の駅からお借りした特設コーナー、販売スペースの前後、左右を通りながら道の駅へと入店、退店をする客様達へと。

 家の怖い顔のおじさんは。

「さぁ、どうぞ、食べて」、

「美味いから、食べてみて」、

「美味しいよ。だから食べてみん、さい」と。

 彼は声を大にして叫ぶと。

 その後は?

「心残りはありませんか?」とも。

 彼は声をかけ訊ねる。

第6話 みんな僕のことを知っているかな?(6)

 僕達お菓子や豆菓子、珍味にドライフルーツなどが並べられた販売台の。

 縦横斜め後ろを歩行しているお客さま達に。

 食品トング摘まんだ僕──。

【芋かりんとう】を一本ずつ丁寧に次から次へとリズムよく手渡していく。

「おっ、芋だ!」

「芋けんぴだ!」

「俺、これ好きなんだよね」

「あっ! 私も芋けんぴは大好き」

「おじさん、ありがとう」

「サンキュー!」

「おおきにね」

「うん、美味い」

「美味しい」と。

 僕【芋かりんとう】を家の怖い顔のおじさんから、食品トングで手渡しされたお客様達は。

 歓喜! 歓声を上げ!

 家の怖い顔のおじさんへとお礼を告げながら。

 各自各々が自身の口へと『パク』と入れ、放り込めば。

『ムシャムシャ』

『パクパク』

『ガリ、ガリ』と。

 お客さま達は、自身の口の中で大きな咀嚼音そしゃくおんを奏でながら。

 僕【芋かりんとう】を激しく噛み、砕きながら、食する。


第7話 みんな僕のことを知っているかな?(7)

 だから僕のスマートな肢体はね。

 お客様達の口の中で痛くて仕方がない。

 でも、これもね、僕達お菓子達のお仕事の一つだから致し方がない。

 だから僕らお菓子達も諦めて。

 お客様達に己の肢体を噛み、砕かれ、貪られることを毎日のお仕事、行事なのだと諦めながら。

 僕達は耐え忍びながらの生活を送りつつ。

 おじさんの毎日の生活の糧のためにと日夜頑張っているのと。

 僕【芋かりんとう】の場合はね。

 僕達は大きな篭に盛られ熱いスポットライトの光を常に浴び続けているから。

 自身の身体に付着している砂糖や飴が溶けてしまうほど。

 本当は熱くて仕方がない。

 でもさ、僕達の飼い主、雇い主である、怖いおじさんのために。

「ふう~、熱い。熱いよ……。誰か早く、僕達を購入してよ。僕達は早く、涼しいところへ移動をしたいんだよ。だからお願いだ。僕達【芋かりんとう】を早く購入してお願いだから……」と。

 僕【芋かりんとう】達は暑さに耐え忍びながら、気落ちをした声音ではあるのだが。

 お客さま達へと願を飛ばし続け。

 自身の肢体も黄金色に輝かせながら頑張っている。

 だから僕を求め購入をするお客様の大半はね。

 大変に嬉しいことに女性のお客さまばかりだから歓喜している。


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