10月25日

おぼろげに少しずつ、かたちのない音が意識へ滑り込んでくる。ホワイトノイズのようなそれは徐々に輪郭を有し、冷蔵庫の稼働音だったり歩行者用信号機の音だったり一斉に進み出す車の音だったりに形を変える。

まだふわんとした頭に手をやりながら、考えるふりをする。そうすると、ぽつぽつと単語が浮かぶ。眩しい。朝。布団。ざらついた麻のシーツに湿気が含まれ、体との間にたおやかな空気ができている。
「……今何時。」
どこまでも包んでくれそうな空気に甘えたい気持ちを見ないふりして、寝っ転がったまま布団を剥ぐ。
寒っ。また気温下がったんじゃないの。そろそろ毛布出そうかなあ。
どっこいせ、と起き上がり、ひとまずラグに足をつける。壁の時計は7時5分を過ぎたところだ。まあ上々じゃないの。のっそり立ち上がったところで、自らの空腹に気付く。パン焼くか。


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