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ポルトガルの高速道路での出来事

 長期連休が始まる前夜、翌日からの予定をアレコレ考えながらリスボンの自宅へ通じる高速道路上にいた。途中で、同じくリスボンへ帰宅する同僚の駐在員と遭遇したので、先を行く彼の後につけてタンデム走行。

 尚、本投稿に関しては、登場する同僚の了解を得てあります。

 左に大きくカーブしながら下る追越車線を走行中にそれは起きた。前を走る車に徐々に近づいたその瞬間、突然その車が中央分離帯に激突。先行する同僚はハンドルを切ったが避けきれずに後部に乗り上げるように衝突。その反動で転覆しルーフを下にして路上でぐるりと回転した。

 直後を走っていた私は、今でもしっかりと目に焼き付いているこの光景をスローモーション動画のように眺めながらも、追突を避けるべく急ブレーキをかけながら事故現場すぐ横の走行車線に逃げて停止。そこへ同僚の車から外れたフロントバンパーが滑ってきてドンとぶつかった。

 何台もの後続車がこの事故を避けるため急ブレーキで停止したと思う。が、そんな周囲の状況には全く気付かないまま、その場に留まるのはまずいとだけは感じて…どのように移動したのか気が動転していて覚えていないが…気付くと路肩に退避していた。
追突されなかったのは奇跡!

 完全にパニックに陥り、足がガタガタ震えて目もうつろな状態だった事だけは覚えている。なんとか首を巡らして同僚の車を見ると、少し離れた後方に見えた。無事を確認するため路肩をゆっくり後退して近づこうとする。しかし、事故現場を避けた車達が私を見てクラクションを鳴らしながらすぐ横を加速していく。恐ろしくて身動き取れなくなってしまった。

 思いのほか早く警察が到着して事故処理を開始。私を見かけた一人が"何してる?"と声をかけて来たので、"その車の同僚だ!"と怒鳴り返す。すると近づいて来て、事故に巻き込まれていないことを確認すると、動転している私の顔を見て、"運転できるか? 直ぐに病院へ搬送するから、その救急車について行け。それまで車から出るな"と言う。

 救急車が出発する際には、見かねた警官が後続車を止めて私を路肩から出してくれた。サイレンを鳴らしながら、高速道路上をあまり急ぐ風でもなく進む救急車に付いて行くのは問題なかったが、一般道に降りてからが大変。

 進路を譲った車が、救急車の後ろに張り付く私の前に入ろうと大声をあげる。ここで割り込まれて病院へのルートを見失うと一大事。救急車を指さして”アミーゴ!アミーゴ!”と怒鳴り返しながら必死に付いて行く。事故のショックをアドレナリン分泌で薄めることができたか?

 やっとの思いで病院到着、その後...
検査や事情聴取が終わって問題がなかった同僚は帰宅してよいと言われた。先ほどまで首にコルセットをしていたし、あれ程の事故直後なのに⁇?  エアバックが開いて眼鏡が割れてできた顔の傷が痛々しいが、思いの外元気に見えるので自宅まで送って行くことにする。
 
 道中、転覆した車の中でシートベルトで宙ずりになっていたとか、苦労してベルトを解除したら天井に向かってドスンと落ちた、なんて話をしながら、"明日からの休暇、どうするの?"って聞いたら、"エアチケットもホテルも予約済だから予定通りに行く"と言う。その為に帰宅するのだと…

 翌朝、同僚は傷だらけの顔で家族と共にパリのディズニーランドへ旅立ち、私はアルガルベという有名な保養地へ向かって出発し、それぞれ長期休暇を満喫したのであった。

 いやはや、元気な若いころの話ではある。また、その後しばらくは高速道路でのスピードの出し過ぎに注意したのは言うまでもない。世界どこでも“安全運転!"


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