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タイの結婚式に招待された思い出 前編

 タイでは様々な儀式やお祝い事があるが、中でも一時的な出家の門出と結婚式が盛大に催されるイベント。駐在していた際には、お葬式も含めて色々と参列させてもらったが、地方で行われた結婚式は忘れられない。

 ある日、現地スタッフの一人が緊張した面持ちで近づいて来て、独特の右手だけで差し出すスタイルで白い封筒を渡された。中を見ても意味が分らないので現地マネージャーに確認。すると、事前に相談を受けていたらしく”田舎の実家で結婚式を挙げるのだが 、遠くて仲間たちは行けないので是非代表して参加してもらえないか” と云う説明。

 え~?しきたりも風習も分らないのに参加して大丈夫か? とても不安だったが、実家や親戚には日本人の上司が式に来るかも知れないと既に伝えてあるそう。ひょっとしてその村を訪れる初めての日本人となるかも・・・

 ドライバーに相談したら、”是非行こう、行先などは自分が調べて準備するし、現地でも面倒見るから大丈夫だ” と大乗り気。新しいことを経験するのはとても興味ある…ので、徐々にその気になる自分が居た。

 早朝にバンコクを出発し午後遅くにその村に到着した。新郎のご両親は大喜びで、ドライバー経由で”沐浴して一休みしろ”と勧めてくれる。家の奥に水を貯めた大きな壺があった。葉っぱなどが混ざっているみたいだが、暗くてよく見えない。まあいいか、とその水を頭からザバザバかけて汗を流してスッキリした。

 何かで見かけたことがあるカラフルな布とズボン様なものを渡されて身に着けると、にわかタイの人。家の中に吹き込むそよ風が心地よく、長旅の疲れからか土間の横のござ台でついウトウトしてしまった。

 突然、顔の横でコッコッと鳴く何者かの気配。薄目を開けて見るとすぐ横に鶏がいて飛び起きた。土間から上がり込んで来たと思われる丸々と太った元気な鶏だ。その夜宿泊する家のおじさんが、”お客を驚かした罰として、つぶして今夜の晩餐に加えてやる”と笑っていた。

 ドライバーが、式の前に大婆が挨拶したいらしいと伝えに来た。何でも、夜は早く寝てしまうので今のうちに会いたいのだそうだ。高床式の家に出向くと、上手に歳を重ねた優しそうな感じのおばあちゃんが迎えてくれた。

 ニコニコしながらいろいろ話すが何を言ってるか殆どわからない。最後に20バーツだか50バーツだかを取り出して、“腹が減ったら何か食べろ“と言ってる(みたい?)  横でドライバーが貰っておけと強く勧めるのでありがたくいただいた。彼女にすれば孫が久しぶりに来たようなモノなんだろう。なんともほのぼのとした気持ちを味わえた瞬間だった。

 さて、いよいよ結婚式が始まる時間が迫って来たが、長くなり過ぎるので次の機会に綴ることとしよう。




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