オンライン配信はリアルイベントの代替となるのか。PLATTO朗読劇(2020/6/14公演)を鑑賞しました

2020年6月14日にオンライン有料配信されました、『PLATTO朗読劇「青春の一ページを、キスでめくって」「倫理テスト部の一日」』を観劇しました。
チケットを購入する形式のオンライン朗読劇は初めてだったのですが、楽しくもあり、いろいろ考えさせられる時間でもありました。
劇自体の感想や、オンラインでの演劇配信について感じたことなど、書いてみようと思います。

なぜ見ようと思ったのか

私は、有料配信番組視聴やチョクメ購読はしているものの、逐一活動をチェックしたり積極的にイベントに行ったりするほどではない程度のライトな芝崎典子さんのファンです。
この朗読劇についても、芝崎さんが告知していたことをきっかけに知りました。
もともと、好きな声優さんが朗読劇や演劇をしているのを見るのが好きで、興味はあったものの、オンラインの配信に3,000円を出すのは、個人的にはハードルが高いなと思っておりました。

ですが、演目を見てみると、なんと私の推しラノベ作家のみかみてれん先生の名前があるではないですか…
みかみてれん先生は、界隈ではディープな百合小説を書かれることに定評があり(多分)、あらすじを見ても完全に「その筋」の脚本のようで、視聴の意思を固めるのには十分でした。

芝崎典子さんがみかみてれん先生の百合脚本を演じるということで、思っていたより楽しみになっている自分がいるのに気づきました。
このような、イベント前特有の数日前からワクワクする感覚を久しぶりに味わった気がします。

ただ、2部のうちどちらも見るか、どちらかだけ見るかについては、当日まで悩みました。
やはり配信に安くないお金を出すことにまだ抵抗があったことと、演劇は後になるほど演者が慣れたりアドリブが入ったりして楽しくなると思っていることので、2部のみリアルタイムで見ることにしました。
(アーカイブがあるので、気に入ったならば1部も見ることはできます)

朗読劇を見て

まだ公演アーカイブ期間中であり、翌週も同じ演目の配信が予定されているようなので、できるだけネタバレは避けて感想を書きます。

1本目のみかみてれん先生脚本『青春の一ページを、キスでめくって』ですが、完全に自分のストライクゾーンド直球で刺さる百合でした…。
友情と愛情の間で揺れ動く日常を過ごしてきたであろう3人の女子高生が、ある日の出来事をきっかけに関係性が変化していき、そして最後には…というお話です。
キャラクターのネジが適度に飛んでいたり、3人の間にある関係性の矢印がどういうものであるかをかく乱させる描写だったり、最後の後日談的なシチュエーションだったり、先生の持ち味が存分に発揮されていた脚本だったかと思います。
女性同士のキスが扱われている作品なだけに、かなり聞く人を選んでしまうだろうなとは思いましたが、間違いなく刺さる人にはぶっ刺さるものでした。

そんな女性たちの間の感情が満載な脚本を芝崎さんたち女性声優さんに演じていただけるのは、非常に格別な時間でした。
百合というジャンルはかなり市民権を得てきてはいますが、キスまで踏み込んだ作品を声優さんを演じる機会はそう多くはなく、それを顔出しありの朗読劇で聞けるのはとても貴重です。
芝崎さんがストレートな百合を演じられているのを初めて聴けましたし、個人的に思い入れのある百合作品『りりくる』に出演されていた洲崎綾さんと、アニメなどで可愛らしい声色をたくさん聴いていた石見舞菜香さんとの3人で作り出していたあの空気感は、素晴らしいものでした。

もう1作品の、深見真先生脚本の『倫理テスト部の一日』は、作風が180度といってもいいほど変わっているもので、こちらもまた魅力的な作品でした。
難解な台詞も多く、その分演者さんが噛んでしまうこともあったのですが、それもオーディオドラマ製品にはない生のライブ感が得られるものでした。
あまり多くを語るとネタバレになってしまう難しさがあるのですが、こちらの作品も1作目とは異なった視点で人間の感情というものを描写していたな、と感じます。
アフタートークによると、1部終了後にSNSで考察が飛び交っていたようなので、やはりこちらも刺さる層にとっては深く刺さるものだったと思います。

チケット代は3,000円(2部通しで買うと計5,500円)で、公演時間はアフタートーク込みで約1時間20分(途中休憩が計10分ほど)でした。
個人的体験としては、3,000円という値段は十分元が取れるものだったと感じています。

オンライン朗読劇のメリット・デメリット

オンラインでの朗読劇を見ていると、やはりリアルでのイベントとの差異をいろいろ感じさせられました。

まずはオンラインの方が良いなと思った点について書いていきます。

気楽に見られる
今回自分は、ビールとおつまみをお供に、ゆったりとした気持ちと姿勢で朗読劇を見ていました。
リアルでの観劇は舞台上の空間を壊してはならないという緊張感に満ちており、笑うなどのリアクションを取るのも神経を使うものです。
リアルタイムの演劇を見ながら感情を自由に発散させることができるのは、よくよく考えるとこれまであまりなかった体験だったかと思います。

リアルタイムにアウトプットできる
私はTwitterで実況行為をするのが割と好きなので、公演中にツイートできたのが良かったです。(もちろんネタバレには配慮しましたが)
イベント中にスマホを触ることは賛否ある行為ですが、流石に観劇中はマナー違反とする向きが強いかと思うので、これはオンラインでのメリットかと思います。

また、今回の配信ではコメント機能もありましたので(私はあまり得意ではないので切っていましたが)、リアルタイムでファン同士で交流できたり、演者側にリアクションを届けられるのも、オンラインならではであると思います。
ファンから演者に届けるという意味では、極限まで役への没入が求められる演劇よりも、ライブとの相性が良いと感じています。
(これは、芝崎さんも出演されていた『八月のシンデレラナイン』無観客ライブ『ハチサマ4』で強く感じたところです)

移動コストがない
これは、人によっては最も大きなメリットになりうるかと思います。
地方在住者でも交通費・移動時間のコストを払わずに、等しくリアルタイムでの観劇ができるようになるのは、主催者側にとっても大きなメリットになるのかもしれません。
私は東京在住なのでこのコストは小さいですが(むしろこのメリットを享受するために都心にこだわって住もうとしているところがあります)、それでも往復1-2時間の移動時間がなくなるのは大きいです。

また、リアルイベントだと、当日になって急に参加することは移動時間の関係で難しくなることがありますが、オンラインだと開催数分前にイベントを知ったとしても参加できるかもしれません。
「PLATTO朗読劇」の「ぷらっと」という言葉は、そのような気軽さも含まれたネーミングなのだと思います。

そして、ここからはオンラインではリアルに劣るなと感じた点です。

没入感が得られにくい
これはメリット側の「気楽に見られる」と完全に表裏一体だと思います。
演劇の空間は(演劇ほどではないですがトーク系のイベントなども)、自宅では得られにくいような緊張感を演者と共有し、舞台上の世界に集中することができます。
これは皮肉にも、演劇そのものの質が良ければ良いほどデメリットになってしまう性質のものかと思います。
やはり私も、今回非常に刺さった「青春の一ページを、キスでめくって」をリアルで観劇していたらどんな体験ができたのだろう?という思いがよぎってしまいます。
好きな声優さんが同じ空間で目の前にいるという体験や情報量は、画面越しでは絶対に越えることはできません。

そして、私はイベントで推しの演者を中心に見たいという気持ちがあるのですが、映像での視点は配信側の裁量で決まってしまいます。
個人的に、台詞を喋っていないときの立ち居振る舞いや表情も演劇の魅力だと思っているので、視点を自由に動かせるリアルには勝てない要素のひとつに感じます。
(これは個人的に、ライブやイベントを映像ではなく現地で見たい大きな理由のひとつになっています)
(ただし、今回のPLATTO配信では基本的に出番中の演者さんが写っていましたので、あまりデメリットにはなっていないです(が、出番外での演者さんの挙動もそれはそれで味があるので見たいというのが本音です…))

また、配信というものの性質上、映像が止まってしまうリスクがつきものです。
実際に止まってしまった場合はそこで体験が分断されてしまうのはもちろんですが、「もしかするといつか止まってしまうかもしれない…」という不安を抱えながら繊細な朗読劇を見るのは、リアルにはないストレスを感じました。

リアルイベントと同価格帯だと割高感がある(個人差がありそう)
今回の朗読劇は3,000円で、実公演時間は1時間強でした。
イベントチケットだと3,000円はかなり割安の部類に入るかと思いますが、一般的なイベントは1時間半以上行われることが普通かと思うので、時間あたりにするとおおよそリアルイベントと同程度の価格帯になると思います。

現在、声優さんが行っている配信番組は、月額500円程度の会員制をとっているものが多いです。
オンラインで数千円という値段のチケットを売った場合、そこと比べてしまうと割高感を覚える人は多いのではないでしょうか。
ただし、朗読劇というコンテンツがオンラインで配信されることはそう多くないので、そこに個々人がどの程度価値を感じるか次第になると思います。

ちなみに、今回のPLATTO朗読劇については事前に公演時間が明示されていなかったので(どこかで告知されてたのかもですが…)、何分やるかわからない配信に3,000円払うことは、人によってはハードルが高く映ることもありそうです。
3,000円という値段は、多くの人にとって「ぷらっと」見るには高く感じるのではないでしょうか。

ファン同士のリアルでの交流が生まれない
これも個人差が大きそうですが、ファン同士の交流を重視するタイプの人にとっては、かなり大きなデメリットになりそうです。
普段はオンラインで交流している知り合いとイベント前後で語らったり、打ち上げで盛り上がるというのも、イベントの大きな思い出になるものです。

ただ今回の私の場合、特に芝崎さんのファンの知り合いもいないので、もしこの朗読劇がリアルで開催されていたとしても公演終了後は一人で直帰していたはずですが…(孤独)

おわりに

長々と書き連ねてきましたが、前述の通り、今回のPLATTO朗読劇は私にとって満足いく体験となりました。
2部だけ観劇しましたが、1部のアドリブ薄めらしい公演やアフタートークも気になるので、今のところアーカイブチケットを買おうと思っています。
一方、来週も同一演目を違うキャストさんが演じるとのことですが、個人的に強く見たいと感じる演者がいないこともあり、おそらくそちらは見ないと思います。

タイトルの「オンライン配信はリアルイベントの代替となるのか」ということについてですが、リアルでのイベントが難しい情勢の現在の自分にとっては、オンラインでのイベント摂取は一種の代償行為に近い感覚です。
リアルイベントそのものをオンラインに求めても幸せにはなれなさそうなので、しばらくはオンラインならではのメリットを享受しながら、配信ならではの体験に適応していくのが良いと思っています。
これからオンラインでの演劇配信やイベントが発展していけば、平時に戻ったときに、個々人がリアルかオンラインの選択肢を取れる自由が生まれるようになるのではないのでしょうか。
そのような世界になっていくことを期待しています。

最後に、私が一番好きなみかみてれん先生の作品を貼っておきます。
あらすじは、「女同士とかありえないでしょと言い張る女の子を、百日間で徹底的に落とす百合のお話」という感じです(タイトルを書いただけ)。
今回の朗読劇はキスがモチーフになっていましたが、こちらは肉体関係まで踏み込んでいるので、さらに、人を、選びそうなのですが……
同人版と商業版がありますが、内容は基本的に同じなのでお好きな方をどうぞ。
あと、イラストの雪子先生が描かれている漫画『ふたりべや』もどうぞよろしくお願いいたします…(?)(私がみかみてれん先生の作品に触れることになった理由です)(この作品だけで1記事書けそうなぐらい良いですので何卒)

もうひとつ最後に、芝崎典子さんのチョクメへのリンクも貼っておきます。
ほぼ毎日、芝崎さんからメールが届くようになります。返信もできます(私もこれから今日の感想を送ります…)。
ラジオや動画番組などで垣間見える芝崎さんの世界観に惹かれるものを感じている人は、絶対に取って損はしないです。
こちらも何卒よろしくお願い申し上げます。

勝手に謎の宣伝をしてしまい、すみませんでした

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