見出し画像

仕事で燃え尽きず、人生を豊かにするために

バーンアウトは、これまで長く信じられてきた考え方、すなわち仕事は報酬を受け取る手段というだけでなく、その人の尊厳や人格、目的意識を保つ手段である、という考え方に根ざしている

我々の社会では、残念ながら仕事の成果が人格の良し悪しを示すものとされている。それが人を燃え尽きさせる。かつては、そんなことはなかったのに。

バーンアウトとは「仕事に対する自身の理想と現実のギャップを埋めるために無理を重ねた結果」であるとの定義を定める。

仕事が自分の尊厳や人格に関するものだと、その理想はいくらでも高くなってしまう。そうすると、現実とのギャップは開くばかり。結果として、精神的に摩耗し、バーンアウトしてしまう。そうではなく、必要なだけお金を稼げればいいと割り切れれば、楽になれる。

人間の尊厳を高め、思いやりを深め、余暇での活動を強化して、仕事が生活の中心ではない新たな理想的生活

ここでの余暇とは、次の仕事のための休息ではない。かつてアリストテレスが述べたように、余暇は高尚な時間であり、学問や芸術、人のケアなど魂を高める活動にあてる時間を指す。見返りなく没頭できる時間こそが、価値ある過ごし方という考え方だ。

バーンアウトは、他者への高度な要求や、他者に対する評価不足、言葉と行動の不一致などから生まれる。つまるところ、お互いの尊厳に配慮しなかった結果

バーンアウトは、自分自身への態度の問題ではない。自分が属する社会全体が、バーンアウトを仕向けていることに注目する必要がある。あなたもその社会の構成員の一人なのだ。

あなたは、自分よりも仕事が不得意な人を、人格レベルで貶めたことはないだろうか?他人を自分よりも程度が低い人間と思ったりしていないだろうか?仕事と人格は別だと、心の底から分かっているならば、自分だけでなく他人に対してもそう振る舞えているはずなのだ。逆に言えば、他人にそう振る舞うことが、自分をバーンアウトから救うことにつながっている。

クリスティーナ・マスラークと共著者のマイケル・ライターはバーンアウトを「その人本来の姿と、その人がしなければならないことのギャップを示す指標」と呼んでいる。これは、その人の仕事が要求するものとその人の自己理解の乖離を示す

この定義も悪くない。自分を十分に理解できていないと、自分が適する仕事を選べない。仕事で不幸を感じることは誰にでも時々あるだろう。その時は、自身のことをある側面で十分に分かっていない可能性がある。とくに、自分が不得意なことを認められないと、この罠に陥りがちなのではないかと感じる。

仕事から距離をとり、「こんなことはやる必要がない。どうせ失敗するんだから」と考えて、できるだけ働かないようにすることもある。その結果、自分は無力で価値がないと感じる。理想はあっても、それは実現できないと考え、 失望 してしまう。

仕事に対する態度が否定的すぎても、人生を不幸にする。自己肯定感が下がり続け、無気力になってしまうためだ。期待値と現実をうまくすり合わせることが、求められている。

その時代の労働者は仕事を自己実現の手段などと考えてはいなかったからだ・・・
仕事は「尊厳」、「人格」、「目的」の源だ、という「高貴な嘘」は、アメリカ四〇〇年の歴史のなかで育ってきた・・・
聖書の冒頭部分は、人間の労働に目的を持たせる言葉で埋め尽くされている。たとえば神はエデンの園の手入れをさせるために人間を創造されたが、その人間が神に背くと、神は男女で仕事を分担させ、困難な労苦の人生を送るよう言い渡されたとある。

かつては、仕事はただ必要な金額を稼ぐためのものだった。宗教の影響で、仕事は天国への切符として認識させられ、現代ではそれが転じて人格の高さを証明するものになった。本来、仕事は人格の高低と関係させてはならないのに。

完全に安心できる日などけっして訪れない。なぜなら、現代の労働思想では、たとえ何かを達成しても、その成果より、 次の 成果に向けた、たゆまぬ努力のほうが重視されるからだ。

仕事は過程ではなく結果を求めるものであり、悪いことにその目標が他人によって更新され続けていく。その中で、人はひたすら摩耗していく。そうではなく、人生の喜びは、内発的な行為の中にあるのだ。そう認識し、自分の価値観を変化させる必要がある。

生産性よりも自分自身や他者への思いやりのほうが優先されるようになり、私たちは仕事ではなく余暇に最高の目的を見いだすようになる。

これが我々が持つべき理想。経済的な生産性ではなく、愛情の方に高い価値を認めること。これは、お金こそ全てと聞かされて育った現代人には、大いなる試練となるだろう。お金を消費するのが大好きな人間を作り替えていく変革が求められる。



この記事が参加している募集

仕事について話そう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?