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『m.Funatabi』撮影記

今回の撮影もなかなかにハードだった。

予定では南阿蘇のほうで季節的にもススキが綺麗だったので、そのなかで撮ろうと思っていたのだが、なんとススキの背が高すぎで難しいことが当日になって分かる。カメラマンのえとうくんが昼あたりからロケハンに行ってくれていたから助かった。

モデルとなる僕と奥さんが現地に着く予定が17時あたり。撮影時間はたぶん一時間くらい。だのに当日の昼過ぎても場所も決まっていない。これはなかなかヤバいケースだ。

すると奥さんが「昔、野焼きの時期に南阿蘇の奥地でヤバい景色を観たことがある」という奇怪な情報を流してくる。それはどこなんだ、と聞いて調べてみると、たぶん恐ヶ渕というあたりではなかろうか、という。うーむ、なんという恐ろしいネーミングであろうか。でもここまで来たら、そういう面白い方に転んだ方がなんとかうまくいくのを僕は経験上知っている。とにかくそこに向かってみようということになった。

夕方から愛車をぶっとばして、もう待ち合わせ場所からして恐ヶ渕。まったくもって、ありえない待ち合わせ場所である。着いてみると確かに荒涼とした景色がいい。荒涼としながらもどこか生命力のようなものを感じさせる風景が今回の『m.Funatabi』の服にもぴったりな気がする。こりゃ映画の撮影場所に使われたという、どっかで聞いた話も納得できる。それはいいが、思った以上に草が伸びていて、そもそも獣道を分け入ることが難しい。

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でもやるしかねーとガンガン草木を入ってはなぎ倒して道を作る。そしてこんなときに限ってカメラマンのえとうくんは短パンときてる。しかも彼は根っからの虫嫌いときてる。「おくぁぁ! んもうびっくりしたぁ!」恐ヶ渕にやたらと響き渡る、虫への奇声・・・。でもなんだかんだいってる時間はない。もう日が暮れてきている。とまぁそんな感じで、わたわたしながらシュートをしたのが今回の写真群ということになる。

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今回は最初から夫婦でDMに出ようと決めていた。墨染めと花染め、それぞれ着た方がいい気がしたし、しかも僕が花染めを着ることも決めていた。普通は逆なようだが、そっちがいい気が確かにした。

デザイナーの大木さんがお店に来られてお話を伺ったとき、「制作の過程こそが愛おしい」というようなことをお聞きした。フナタビというブランドのネーミングも、制作をひとつの旅として捉えている感じもある。

であったら、そりゃ夫婦だよな、と僕はすんなり思った。たぶん僕は僕で、子育てを含めた夫婦生活というものを、ひとつの旅として捉えているのだろう。この険しくて慌ただしくて、気が付けばあっという間に過ぎてしまう生活は旅以外のなにものでもない。そしてそんな風にあっという間に過ぎてしまう日々だからこそ、たまにはふと我に返って、その日々の愛おしさを感じるべきなのだろうな、と時々想ったりする。

「旅の途中」。ほんとうは今回の展示会はタイトルはつけないつもりだったのだけど、なかなかハードな撮影が終わってみると、そんな言葉がどこからか降りてきた。いつかのいなたいニューミュージックのいなたいタイトルみたいでどうかとは思ったのだけど、これは入れるべきだと思った。フナタビの旅も、僕らの旅も、まだまだ途中なのであって、そのつたない日々こそを愛でては生きなければ、と。

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・・・とここで終われば良いのだが、じつは日が落ちて暗くなってからの帰りが大変だった。舗装された一本道をまだ先に向かえば出るだろうと安易な予測の元に車二台で進んでいたらば、だんだん道が木の枝に覆われて行って、結局、先に往けなくなってしまった。まわりは真っ暗闇。誰がなんといおうと、あれはもう、道なんてもんじゃあない。車に木の枝が当たってキーキーと怖いしうるさい。僕らの車は小さめなので良かったが、えとうくんの車はなかなかに大変だったと思う。もちろんそれから真っ暗闇のなかをおそるおそるバックで二台して帰りましたとさ。おわり。







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